今朝のニュースで、青森出身の女性がブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したことを伝
えていましたが、14年前に弱冠19歳で優勝したのが本日の指揮者L.ブランギエ氏であります
東響では数年前から客演オファーをしていて、今回初めてそれが実現する運びとなりました
本日のプログラムはブラームスのVl協奏曲とプロコフィエフの第四シンフォニーという変わった
取り合せ
団員がステージに入場してくると、チェロは中央下手側に着席し、どうやら対向配置のようです
それが、本日の演目によるものか、この指揮者がいつもそうするのかはわかりません
お蔭で第一ヴァイオリンの人数が数えやすい
ソリストはロシア生まれドイツ育ちというアリーナ･ポゴストキーナ嬢
金ラメのロングドレスで登場し、歩くときに裾を持ち上げたところを見ると、ヒールのないバレエ
シューズのようなのを履いています
その方が足を踏ん張れるからでしょうね
なにしろブラームスですから
しかし本日の演奏は、そのような、｢構えた｣ものでなく、ひたすら伸びやかにカンタービレした
もので、もしかしたら、ブラームスの本質はそういうところにあるのかも知れません
冒頭のチェロの出だしも然り、第二楽章の管楽をバックにオーボエがこの上もなく美しく歌う
のも（カーテンコールのとき、指揮者が唯一彼女にソロオヴェイションを与えたのも当然です）
ブラームスの協奏曲は独奏を伴う交響曲といわれますが、それは確かにそうなのだけれど、
本日は誠にロマンチックでした
第一楽章だけで全体の半分以上を占めますので、拍手してしまう人がいるのではないかと
心配していたら、すぐにはなかったけれど、少々パウゼを置いたら案の定拍手が起こってしま
いました（ソリストも苦笑）
ソリスト･アンコールは何だろうと期待していたら聴いてすぐわかる、パルティータ第三番の
ガヴォットを愉しげに弾いていました
ワタシはどうもこの曲を聴くと｢トラべルセットがあったっるー｣と歌いたくなってしまいます
資生堂のCMでしたっけね、同世代でそういう方は多いんじゃないかな
休憩後のプロコフィエフは初めて聴く曲です
古典交響曲や第五番は比較的よく演奏されますけれど
上手奥にはピアノも配置され、ピッコロ･クラリネットなども出てくる、賑やかな曲でした
バス･テューバがソロを取るのも珍しいし、ウッドブロックを木魚のように叩くのも愉快です
プロコフィエフとショスタコーヴィチとストラヴィンスキー、ラフマニノフ、同じ20世紀のロシア人
作曲家といっても随分作風が違うものです
プロコフィエフはさしずめネアカのショスタコーヴィチというところでしょうか
それでも同じようにジダーノフ批判を受けたというところが怖いです
さて、ブランギエ氏の指揮でありますが、ブラームスのロマンティシズムとプロコフィエフの
機知との間に指揮上のスタイルの差は特にありません
感情に惑溺することもなく、一方で才気ばしったところもない
しかし出てくる音楽が全く違うというのがこの人の才人たる証なのでしょう
この辺りのことは、会場にはハイドン�兇気鵑眦貍鬚気鵑發�られましたので、お二人のブログを
待つことにしましょう
終演後は池袋に移動、時間が空いてしまいましたので、西口ロマン小路にある「カレーの家」で
日曜の晩餐にチキンカツカレーを
食後は東京芸劇の5階フリースペースで缶コーヒーを飲みながらここまでの部分を日記にまとめ
ます（なんとチープで効率的なやり方）
ちょうど書き上げたところで同じ階にあるシンフォニースペースでのシュトラウス協会の例会は
ドイツ留学から戻られたドクター広瀬による久々の交響詩徹底解説シリーズ
本日は「ツァラトゥストラはこう語った」であります
前三回ではまず曲を聴いてそれから解説、それを踏まえてもう一度聴き直すという手順ですが
ツァラは演奏時間40分を超える大曲ですから、そうもいかない
途中休憩を交えて1時間45分にわたって譜例を参照しながら4つのモティーフを解説しつつ
それらがいかにして絶対音楽として成り立っているか（単なる描写ではない）、シュトラウスの
技法の巧みさをレクチャーしていただきました
この「描写音楽ではない」というのがポイントで、ドン=ファンはソナタ形式、ティルはロンド形式
というのは既に学びました
今回のツァラは4つのモティーフが複雑に絡み合い、フーガや二重フーガなどもある古典を
踏まえたものを作曲者は造り上げたかった、ニーチェの思想はそこに後から（もちろん作曲
しながら、でありますが）補足されたものである、というのがドクター広瀬の解釈でした
とすればシュトラウスは職人芸の権化で、アーティストと呼ぶよりアルティザンであるという
ことでしょうか
ニーチェが否定したキリスト教的なものが、結局はシュトラウスの手にかかると曲中一番
美しく響くというのも皮肉なものです
講義の締めに全曲を聴く際には、ありがたいことにK.シュマルツによるピアノ独奏譜が
配布され、これだと譜面を追いながら観賞できて、職人芸を実感いたしました
今後も年一のペースでドン・キホーテ、英雄の生涯と進む予定だそうです
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