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2019年09月11日12:55

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二度目の「高畑勲展」

9月6日(金)、阿佐ヶ谷から竹橋の国立近代美術館、二度目の「高畑勲展」へ。
総武線がそのまま東西線になり乗換え無しの直通。なんと便利。
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前回は展示物を見るのに集中し過ぎて周りがよく見えなかったので、今回はゆっくりと。音声ガイドもまた借りる。入り口の装飾と出口の設えが『かぐや姫の物語』で対になっているのか。
この前は後半が駆け足になってしまったので、今回は年譜をじっくり読み、アーチの個人写真もじっくり見てから最初の方を飛ばして第3章へ行き、『ゴーシュ』から終盤の『かぐや姫の物語』へと進み、再び最初に戻るコースにしてみた。
今回は『火垂るの墓』もちゃんと見た。縦長のポスターの絵柄を使い、節子を囲む一面の蛍の灯が爆撃機から落とされる焼夷弾の火垂るの火へと変化する壁面の電光パネルの仕掛けにおののく。
『かぐや姫の物語』の動画の線への注意書きなどもあるが、この原画を生かして動画を描くのは容易ではないだろう。
高畑さんの遺品のストップウォッチをしみじみ眺めてから、東映動画まで逆戻り。これらの展示されている以外の部分がやはり見たい。岡山の巡回展ではまた少し変わったりするかしら。

以下、『ホルス』で、簡略化を求める会社サイドに対する高畑さんの返答から抜き書き。
「S−87は絵コンテをかなり簡潔になり、ほぼ半分位になると思います」
「S−78は構成上絶対に必要です。これを簡潔にするために、その様式を発見すべく全力をあげて努力いたしますので、削除は考えないでいただきたい」
S−87はラストのグルンワルドとの対決、S−78は迷いの森の場面に当たる。
S−78については他の展示物にも言及があり、重要と考えていたことが伝わる。

また別の展示資料「作業上の民主化と作品参加について」と題する文章から。
「作業上の階級制(ヒエラルキイ)のピラミッドが敷かれます。」
『ホルス』ではこれを否定し全員参加を進めたのだが、宮崎駿の『風立ちぬ』で言われる「ピラミッドのある世界とない世界」の「ピラミッド」とはこれを差しているのだろうか。あれは厳しい問いかけだった。

『ハイジ』のジオラマもじっくり見る。写真もあれこれ撮る。山羊だけでなく牛もいる。
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ふもとの村や町。汽車も走っている。
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アルムの山の斜面の急峻なこと。これを駆け上がるのは確かに実写では難しい。
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ミニシアターも座ってゆっくり。
『赤毛のアン』のオープニングで、どういう訳か、アンのドレスは白だと思い込んでいたのに気づく。映像ではずっと赤いドレスなので、これはパイロット版かしらなどと思う(違います)。どうも第1話の「喜びの白い道」をアンが馬車で行く時の幻想シーンのイメージで上書きされていることに思い当たる。あれは本当に印象的だったから。

今回、一番気に入ったのが『ペリーヌ物語』での高畑さん直筆の絵コンテ。いつもは宮崎さんや誰かが清書しているけれど、これは高畑さん単独の1本だけの参加で、自分で絵も描いている。「絵を描かない演出家」と言われるけれど、高畑さんの絵は独特の味があってとても好きだ。カメラアイもきちんとしている。普通の人が言う「絵が描けない」とはレベルが違う。

全体をゆっくりと歩いてみると、館内が本当に気持ち良く構成されていることを再確認する。とても歩き易いのだ。動線が整理されているのだろう。
この日は金曜日で夜21時までの開館。観客も時間とともに増えて来る。昨日行った昼間のミュシャ展よりもずっと多い。『日曜美術館』や『ぶらぶら美術・博物館』などで取り上げられた後は更に増えるだろう。やはり、この時期に来て正解だった。

再び『かぐや姫』まで戻り、最後の、月に浮かぶ赤子の姫を見つめる。『かぐや姫』に始まり『かぐや姫』に終わった人生。誰か、東映動画時代に書かれた企画書『ぼくらのかぐや姫』と『かぐや姫の物語』の比較をものしてくれないだろうか。(拝見出来るものなら自分でもやるが)。

グッズコーナーへ出て、あれこれ見て歩く。この前は急ぎ足だったので。岩男モーグのフィギュアやら何やらもにこにこ眺める。ついふらふらと1個だけ残っていた『わんぱく王子』スサノオのアクリルキーホルダーを買ってしまう。この前は『安寿』のしおりを買ったし、純粋高畑作品ではないじゃないか(笑)。
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館外のミュージアムショップへも行く。『現代の眼』がちゃんと置いてあって何か面映ゆい。今回も鑑賞に4時間ほどかかった。
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