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2019年07月28日02:57

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初期作品が特に好み・久々の観劇SET

写真は順に
*道尾秀介「鬼の跫音」 (角川文庫)表紙
*劇団スーパー・エキセントリック・シアター『スタミナや 』vol.6 「セ・ボン」 チラシ

鬼の跫音を読み逃していたとは…。
作家デビューして間もない2006〜2008年にかけて「野性時代」に掲載された短編の作品集だ。
直木賞を受賞した「月と蟹」につながる道尾秀介の原点とも言える作品集か。
6つの作品は、どれもこれも私好み。
読後の魂が救われない感、どれもこれも。
解放してはいけない欲望を発動する彼ら。
「鬼」は人の心に潜んでいる。

セ・ボンは中野のテアトルBONBONで観劇。
神楽坂の老舗料亭が舞台。
子供の頃、家や学校にある地下がどこか別世界へつながっていたら凄いだろうなぁと、よく夢想した。
この物語もある場所につながってるのだが、そこで見直されるのは家族の系譜と仕事への情熱だった。
客演の棚橋幸代ちゃんの一言セリフに「今日イチ!」ってくらい笑わせてもらった。
1993年、バブル時代終焉の頃。
新聞記事で皇太子と小和田雅子さん結婚の儀のニュース。
老舗旅館の室(地下貯蔵室)は酉年の新月の夜に過去への扉が開いてタイムスリップすると言う。
洗い場の千代、新米の仲居・真琴、板前で料亭の跡取り・新次郎が室から出た時、そこは昭和20年4月、終戦直前の世界だった。

この回の劇場内は10代後半〜20代前半の若いお客さんが多かったが、どうやら出演者の教え子たちらしい。
戦争は勿論、1993年という時代設定がどれだけ彼らにハマったかどうかわからないが、中高年にはドンピシャの時代設定で、いちいち笑えるセリフの妙だった。
一つ思うのは、タイムスリップ先が戦争中という、手垢のついた設定だという事。
神楽坂にまつわる東京大空襲時の史実を入れたかったそうだが、実は私はこのあたりから睡魔に襲われた。
男女の出会い、憲兵の出現、敵性外国人の摘発、絵に描いたような深刻なムード…想像通りの展開に意外性がなく急につまらなくなった。
お笑い度が高ければ見過ごせる説得力の弱い設定も、深刻なシーンでは非常に齟齬が目立ち説得力が著しく落ちる、すなわちイラっとすることになる…私の場合は。
もっとも面白かったのはタイムスリップするまでの30分間か。
最後まで深刻な場面の手を借りずに愉快な舞台で盛り上げるのはハードルが高いけれど、スキルの高い役者揃いの『スタミナや』さんだからこそさらに期待してみたいと思った。
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