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2018年10月25日21:03

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寺山修司展@神奈川近代文学館

昭和58年(と和暦で言った方がしっくりくる)入社以来住み続けた独身寮暮らしに嫌気がさして
阿佐ヶ谷でアパート生活を始めました(独身者には住宅手当を支給しない規則なので自腹です)

新築の物件だったので電話線の引き込みができていないため、荷物を運びこむ前に工事業者
の作業に立ち会う必要があり、何もないがらんとした1DKにトランジスタ・ラジオだけを持ち込ん
で、ぼんやりと業者の来るのを待っていました
そんなときラジオから流れてきたニュースは、同じ阿佐ヶ谷でその日亡くなった作家、俳人であり
歌人であり、詩人であり劇作家である人物の訃報でした

今年は寺山修司氏の没後35年になります

横浜山手の港の見える丘公園南に隣接する神奈川近代文学館で回顧展があるというので、
本日(お日柄も良く)行って参りました

学生の頃、渋谷並木橋のところを東横線が通ると、電車の窓からピエロの顔が見えたのが
天井桟敷の小屋でしたが、ワタシは遂にそこを訪れることなく、麻布十番に移転してから一度
行ったことがあります(実験的映画を上映していたんじゃなかったかな)

青春の頃、寺山氏の歌集はワタシにとってバイブルでした
伝統を重んじる歌壇からは、先人の模倣に過ぎないと一蹴されたらしいですが、その瑞やかな
感性は舌を巻くほど上手すぎて、その上手さがまた酷評の理由でもありました

確かに、その歌は虚構に満ちて、日本的私小説の世界とは相いれないものがあります
しかし、フィクションであるがゆえに自由に言葉を選んで、そのイメージの豊かさには感服せざる
を得ません

ワタシの書棚には寺山作品が増えて行きました

今日の回顧展は、だからワタシにとって特に目新しいものはなかったのですが、久しぶりに
キッチュでしかしナイーヴな寺山ワールドに浸りました

ひとつ気になったのは、連作歌集「チェホフ祭」の肉筆原稿が展示されておりまして、その中で
ワタシの持っている角川文庫では「鮮人の子は馬鈴薯が好き」という歌が、オリジナル原稿では
「鮮人の子」となっておりました
オリジナルの方が在日(と思われる)少年に対するシンパシーが感じられるのですが、文庫版
はミスプリなのでしょうか、あるいは敢えて作者とは距離を置こうとして改訂したのでしょうか
いずれにしても、この少年は多分寺山氏の想像になる存在で、「父を還せ」という言葉を自らに
代わって叫ばせたのだと思います(「チェホフ祭」は元々「父還せ」がタイトルでした)

みなとみらい線の元町・中華街駅から近代文学館までの道筋に港の見える丘公園があり
今日はそこの散策も抱き合わせ企画です
ギルムの詩では地上から花のなくなる季節と歌われた萬霊節が近いこの時期、その最後の
花たちが目を楽しませてくれました
秋に咲く薔薇、サルビアレウカンサ、造りものとばかり思ったら花屋の店先に飾られていて
驚いたフォックスフェイスなどなど

四阿ではヴァイオリンを弾く中年男、あまり上手くはなくて市民オーケストラの第2ヴァイオリン
奏者かと思われるけれど、バッハの無伴奏は心に沁みました(雰囲気は充分)

遅い昼食は予め食べログで調ておいた下前商店のワンタンメン
そこまで歩けば帰りは石川町駅に出た方が運賃が安い(セコイ)、ワタシにはとんと縁のない
洒落たブティックの並ぶ元町商店街を足早に歩きました(天気も良かったしね)
ここも外人墓地界隈と共に学生時代歩いたものでした

ちょっとした青春プレイバックであります
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