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2018年10月11日16:16

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十月大歌舞伎@歌舞伎座

早いもので十八世勘三郎丈の七回忌だそうです
今月の歌舞伎座はその追善公演で、勘九郎・七之助兄弟が故人所縁の演目(という
ことでしょう)を演じました

一本目は「三人吉三巴白浪(吉三郎の通称なので、濁らずに《きちさ》と読みます)」、
3年前に串田和美演出によるシアターコクーンのライヴヴューイングを拝観しております
が、本日はお嬢吉三は七之助さんで変わらず、お坊吉三を父の盟友故三津五郎丈の
子息巳之助さんで、和尚吉三を再従兄の獅童さんが演じます

全幕ではなく、三人の吉三郎が初めて出会う「大川端庚申塚の場」のみ
最初の方にちょっとだけ出て来る夜鷹おとせの役を、中村屋の部屋子であり、故勘三郎
丈からことのほか可愛がられたという鶴松さんが(追善ですからね)演じています

このおとせから百両を巻き上げ、その上大川(隅田川)に突き落とした後お嬢が語る
名セリフ「月も朧に白魚の」に始まり「こいつぁ春から縁起がいいわえ」で結ぶひとくさり、
胸がすく思いがします
お嬢吉三は単なる女形ではない、女装した盗賊という設定ですから、ここのセリフは
伝法な男として読み上げる、言ってみれば平原徹男さんに戻ったカルーセル麻紀さん
みたいなものですね
「問われて名乗るもおこがましいが」、というのもお嬢吉三のセリフです

ワタシは勘三郎丈ご存命中は、あまり歌舞伎を頻繁には観ておらず、この三役とも
演じられたのかは詳らかにはしません(惜しいことをした)
百両を「しゃくりょう」と発音したり、遊んだを「あすんだ」と江戸弁で言うあたりは勘三郎さん
が拘ったところですよね

続いては舞踊劇で「大江山酒呑童子」、十七世勘三郎丈のための書下ろしだそうです
タイトルロールを勘九郎さんが演じ、最初はやや滑稽な役どころで、酒を飲んでからは
隈取りも荒々しい鬼神となって(この場合は《きじん》と濁るようです)大立ち回りとなる

童子を取り押さえる四天王の一人、坂田公時を今風イケメンの隼人さんが赫ら顔の
拵えにして演じるのも意外なら、田舎娘のわらびを種之助君が演じるのもこれまた意外
種之助君の素顔はツリ目勝ちですが、タレ目の拵えにすると従弟の米吉君に似てる
これは歌舞伎を見る楽しさです

日舞を中心に約1時間の舞台というのは、大丈夫かな(自分が)と思いましたが、歳の
せいでしょうか、こういうものも面白いと感じる年代になりました(周りでは爆睡状態の
若い女性が多かったです)

最後は「佐倉義民伝」、佐倉惣五郎伝説を歌舞伎とした作品で、これも全幕ではなく
印旛沼渡し小屋の場から子別れの場、寛永寺の将軍家綱に対する直訴の場で終わり
処刑された惣五郎(歌舞伎では宗吾)が祟る場面は(慣例によるらしいけれど)演じられ
ませんでした

主人公宗吾は白鷗さんが祖父初代吉右衛門さんからの直伝で演じました
最初の渡し小屋で渡し守と宗吾が出会うシーンからもう感動的で、ジーンとしてしまう
名主宗吾がどれほど慕われているかがわかります
白鷗丈はお得意のパセティックなセリフ回しで農民の窮状を伝え、渡し守役の播磨屋
歌六さんもいい味わいの演技でした

続く宗吾の家では七之助さんが夫の留守を預かる、良妻にして賢母おさんを演じます
ここは思わず玉三郎さんかと目を(耳を)疑ってしまいました
平生から指導よろしきを得ているのでしょうか(勘三郎さんの女形は多くないですから)
子役たちも可愛らしく、ここに父宗吾が戻ってきての場は、つかの間の団欒で、しかし
この後悲劇となるのがわかっているだけに、涙無くしては観られません
恥ずかしげもなく、おおっぴらに眼鏡をはずしました

(今回の)最終場面の直訴の場では勘九郎さんが将軍家綱を演じますが、殆どセリフは
なく、ただ立ち居振る舞いでそれらしさを出します
ここでは演出によっては松平伊豆の守が訴状を読み上げた後、聞き入れられぬといい
つつも訴状を懐に収め、果敢ない希望を感じさせるやり方もあるようですが(ワタシも
事前のネット検索によりそう思っていた)、本日はあっけなく訴状は打ち捨てられ、宗吾に
縄が掛けられるところで幕となり、肩透かしでした(さっきの涙を返してくれ)

終演予定時間より10分も早く幕となりましたが、まさかカットがあったのではないでしょうね
国家権力に直訴するとは何事かと、現在の為政者からクレームがついたとか

11時開演で、幕間休憩に食事はしないことにしておりますので、遅い昼食は久しぶりに
船見坂にお邪魔しました(時間が時間ですから待たされることなく、2分で着丼)
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