「月の光」だけが飛び抜けて有名なドビュッシーの
ベルガマスク組曲だが
全曲通して聴くと、お洒落だが、なんとなく
小さくまとまってしまっているようで
あまり面白いと思ったことはなかった。
しかし、この曲は
�〆邏覆�10年以上かかった苦心の作品である。
4つの小品からなるピアノ組曲であることを考えると
異例ではないだろうか。、
�⇒夕闇鵬�の作品であること。
第1曲「プレリュード」第2曲「メヌエット」
第4曲「パスピエ」が古典組曲（バロック時代）であるのに対し
第3曲「月の光」は印象派（19世紀終わり）の音楽である。
矛盾もはなはだしい、というわけだ。
そこで、今回、作曲者がどういうところに苦心したのか、とか
様式破壊の危うさ、なぜこんな構成を考えたのか、
ということを考えながら、CDを聴き比べた。
今回はパスカル・ロジェとか、チッコリーニとか
万人受けしそうな演奏はパス。
○ギーゼキング
弱音主体の内省的な表現。録音も古く冴えないが
古典曲は早めのテンポで鮮やか。
月の光は遅いテンポ、中間部はさらに遅く、
古典の曲と印象派の曲を違うアプローチで弾き分けている
ところは、さすがによく考えて弾いているなと思う。
○ サンソン・フランソワ
古典曲を遅いテンポで弾き、月の光は早いテンポと
ギーゼキングと正反対の演奏。
パスピエのロマンティックな表現が巧い。
○ブーニン
（you tube）
ブーニンのスタイルは自分によほどあっているのか
音楽が生きている感じがして、聞いていて楽しい。
思い切りの良さ、鮮やかなテクニック。
やりすぎかもしれないが、この曲集は、「様式破壊」だから
いいのではないか。
パスピエなど、これほど熱い演奏は聞いたことがないくらいだ。
○アラウ
アラウ最晩年の演奏。
びっくりするような遅く、スケールの大きい演奏からは
この曲集の古典組曲的性格、小さくまとまったというイメージなど
吹っ飛んでしまう。
メヌエットのリズムと対位法、月の光の遅いテンポ。
「前奏曲集」「12のエチュード」のような、深い表現を
垣間見るようだ。
というわけで、聴き比べた中では
アラウとブーニンが良かった。
この曲のCDは、こじんまりした、お洒落な擬古典組曲です
みたいな演奏が多いが、
それが作曲者の意図かといえば、疑問だろう。
この曲の価値を考え直す必要があるのではないか。
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