巻頭カラー。
オプシヌプリ湖(洞爺湖をモデルにした架空の地名)を挟んで、聳え立つ巨大ホテルと、ジャンプ台を中心にした冬季オリンピック会場。
巨大ホテルの方はサミット会場で、各国の首脳が集結している。
オリンピックの方は各国の選手と観客が集まっており、どちらも警備、マスコミで賑やかな状態である。
巨大ホテルの大広間で、スウェーデン首脳とノルウェー首脳、ロシア首脳など、ヨーロッパの首脳たちがそれぞれ大きく作った展望用テラスからオリンピックの様子を観戦している。
「ホ・・・モーグルの方はジャパンが一位ですと」
「なんの、我が国はジャンプとノルディック複合で狙うわ」
「今季はロシアは元気がありませんナ」
「おやっ、あれはどこの国の選手かね?」
見開きで、タイトル、ジャンプ台のてっぺんに現れる三人の男。
それぞれパラシュートつきのジェットパックを背負っており、ジャンプ用スキー、真っ白な防寒着、ガスマスク、そしてあらかじめ折りたたまれた銃床のAN-94。
「テロリストだッ!!」
大騒ぎになるサミット会場と、オリンピック会場。
ワーワーキャーキャーパニックになる中、ジャンプ台を華麗なフォームで滑る三人。
そして選手顔負けのジャンプを見せ、そこで点火するジェットパック。
そのまま、ジャンプ台から「降りてこずに」、湖の上を越えて巨大ホテルのところまで飛んでいく。
三人に向かって銃を構える警備たちだが、背後からMP-446 'Viking' pistol を抜いたロシア首脳とその側近たちが射殺してしまう。
呆然とするヨーロッパ各国の首脳たち。
「貴様・・・!!血迷ったか、ラーキン(当然、プーチンがモデル)!!」
展望テラスにパラシュートで無事着陸する三人を丁重に迎え、ラーキンは携帯でテロリスト全員に「心臓部確保、完全占領せよ!!」と告げる。
ホテルの一室でスーツをビシッと着こなしているアメリカ初の黒人大統領ポワチエ(当然、オバマがモデル。名前は初めてアカデミー主演男優賞を受賞した黒人俳優シドニー・ポワチエから)のところに、テロリストの一団が現れ、驚くポワチエの前でガスマスクの一人がマスクを脱ぐ。
さらに驚くポワチエ。
そこに現れたのは、七十年代の大統領キング(第38代大統領ジェラルド・R・フォードがモデル)だったからだ。
もう一室でリラックスしている中国の主席、汪錦刀(胡錦濤がモデル)のところに現れたのは、第二代主席の劉大塊(劉少奇がモデル)。
そして日本国首相の花田総理(福田氏がモデル)のところに現れたのは、六十年代の首相の梶信輔(岸信介がモデル)。
とっくの昔に引退したはずの「老兵」たちは、現役たちと比べて、はるかに生気に満ち、ギラギラとしたオーラを放っている。
解剖室。
草波以下、飛葉を除くワイルドのメンバーの前で、検死官と医学博士が二体の死体について説明している。
「こちらの少女は確かに交通事故で死亡したと記録に残っておりますが、正確には植物人間の状態になったわけで、それを父親が
尊厳死として死なせるよォ収容先の病院に依頼したのですナ」と医学博士。
「その病院がAリアンの配下だったカムサングループだったわけだ」と草波。
「死んでなかったってわけか」とクロス。
「いや、脳死だったはずですから、死人同様だったわけです。しかし」と博士、少女の背中を見せて、背骨に沿って埋め込まれたパッドと金属を指し示す。
「この機械が脳神経の代わりをつとめて、運動神経をコントロールしていたことが判明しました」
「やっぱりゾンビだ」とマック。
「さよォ、若い方はまさしくゾンビ」と博士。「しかしこっちはその上を行くモンスター」と、飛葉が撃ち殺した小林少尉の死体の覆いを取る。
全裸になったそれを見て、全員、驚きの声を漏らす。
ミイラ同然の、百歳に近い老人の身体だったからだ。
「身元は小林源太郎。第二次世界大戦時に、陸軍の特務機関でオートバイ部隊を率いていた少尉だ」と草波。
「何で、こんなのが動けンの!?」と天田。
「コレを装着してたのです」と検死官。
台車に乗せてきたのを見ると、それは軽量型のパワードスーツだった。
「カムサンで見たのより軽そうだ」と車椅子の水戸。
「介護用いうより、軍用にしか見えへンわァ」と同じく車椅子のエンゼル。
「みんな、これで分かったか。今度の敵は想像以上にやっかいだ。カムサンが相手なら話は単純なのだが、元軍人の老人を兵隊に使っているあたり、より複雑さを感じる。それはそうと」と草波、馬力を見る。「飛葉はどうした」
「個人で志乃さんを迎えに行っています」と馬力。
重くなる空気。
その空気を紛らわそうと、マック、「昔戦争で闘ったおじいちゃんたちがカムサンの機械でもって、世界征服を目論んでるとか?」とジョークっぽく聞こえるように言う。
そこへ、検死官、「本気のようだナ。これを見たまえ」と携帯のワンセグ放送を見せる。
その画面では臨時ニュースとして、サミット会場の巨大ホテルを占領したテロリストのライブ中継が流れている。
「このタイミングなら、犯人は絶対
おじいちゃんたちだ。賭けてもいい。賭けるかね?」と検死官。
しかし、誰も賭けには乗ってこない。
一方、飛葉。
横浜はフェリス女学院高校の校門にビラーゴを乗りつけて、志乃の下校を待っている。
その姿にマッと頬を染める女学生たちだが、校門のところに不良がいるとの通報を受けて、ドドドと駆け寄ってくる校長と教師たち。
「そこでナニやっとんじゃ、こらァ!!」と校長の怒鳴り声。
そこで不良の顔を見るなり、「
ワァ、おまえは!!」と驚く。
校長の顔を見ると、おやという顔でニヤッと笑う飛葉。
「署長!!久しぶり!!」
註)この署長については「新ワイルド7」を参照のこと。飛葉の元上司で、後に署長を追いやられ、草波に拾われ、ワイルドの隊長に抜擢されるが(画竜、マック、天田を面接した)、飛葉とともに外国でトラブルにあって以来行方不明になるという「不幸」のかたまりのようなキャラである。
「お、おまえというやつはこんなところまで・・・あの国でわしがどんなに苦労したか・・・」とヨヨヨと泣き崩れる署長。
「一緒に帰るの嫌がったくせに!あっちで首相やるって気張ってたのが、なんで校長やってンの?」と飛葉。
「それはそのォ・・・やっぱり味噌汁が恋しくてナ」と両手の人差し指をつきあわせて笑ってごまかす署長。
そこへ現れる金髪の美女。
「あたしが帰国させたのよ、味噌汁じゃなくて愛人さんが恋しくって騒ぐから・・・お久しぶりネ、ダイロク」
リープヒェン姫である。
註)リープヒェン姫についても「新ワイルド7」を参照のこと。外国でトラブルに遭った際、某国のプリンスに生き写しのため、お家騒動を収めるためにプリンスになりきることを依頼された飛葉が窮地に陥った際、飛葉を助けたのがプリンスの幼なじみであるリープヒェン姫。一件落着後、飛葉と結婚した。
「姫まで!!国はどオしたんだよ!?女王だろ?」と飛葉。
「フルーク伯の家の者に代理をお願いしてきましたの。今のワタシはただの英語教師・・・」と、バイクにまたがったままの飛葉に歩み寄って、熱烈なキスを交わし、「
もう逃がさないわヨ」と凄む。
そこへ、署長、「あちらではおまえは結婚しているからナ。奥さんは怖いゾ」とヒヒヒッと下品に笑う。
参ったなァという顔からキッとした顔になって、「志乃を迎えに来たんだ。どこにいる?」と署長と姫に言う。
「志乃ちゃん?志乃ちゃんなら、さっき帰ったわよ。十分くらい前に裏門から出て行ったわ」と姫。
「不良が正門にいるとか聞いて、わしらが裏門から帰したのだ」と署長。
それを聞くなり、ビラーゴをふかして、急発進させる飛葉。
街を歩く志乃。
家電売り場の前で立ち止まって、テレビのニュースに見入る。
ライブ中継で、巨大ホテル占拠を伝えるアナウンサーがわめきたてている。
「・・・たった今犯行声明が出されました!!組織名は
『ピースメーカー』。サミットに参加した各国の首脳を人質に、何と、
世界平和を訴えております!!」
志乃の背後に忍び寄る人影。
緊張感漂うコマが展開された後、志乃の肩を叩いたのは同じ女学院の生徒である。
「マリちゃん!!」と志乃。
「どうしたの、ぼんやりしちゃって」とマリ。
「ううん、それよりこのニュース見て」
「大騒ぎよね」
そこでハッとしたように、志乃、マリの顔を見つめる。
「そういえば、マリちゃん、身体はもういいの?確か交通事故に遭ってまだ一ヶ月・・・」
「大丈夫。おかげで頭がスッキリしたわ」とマリ、鞄の中からH&KP7を取り出して、志乃の頭に突きつける。
「志乃ちゃんもスッキリさせてあげる」とにっこり微笑む。
恐怖で硬直してしまう志乃。
バンと拳銃が発射されて、アスファルトの上にチンと薬莢が落ちる。
それからドサッと倒れるマリの身体。
撃ったのは飛葉。
ビラーゴで走ってきながら、突っ立っている志乃を抱き寄せ、瞬時に後ろに乗せる。
「飛葉ちゃん!!」と感慨深げな志乃。
「大きくなったナ、志乃ベエ」
「大きくなったなんて言わないでヨ、バカ!!」
背中にギュッと顔をくっつけて涙ぐむ志乃。
ビルの一角。
「襲撃者死亡。一発で仕留められました。標的、飛葉とともに山下公園に向かって走行中」と無線の声。
「了解、徐々に記憶を取り戻しつつあるようだな」と指揮官。
指揮官、携帯を取り、Aリアンに連絡を入れる。
Aリアン本社の一室。
チェスを差している五本とも親指の黒人と、ジュー・ハナブサ。
携帯を取った黒人が「了解」とだけ言って、携帯を切る。
そこでクイーンを動かすジュー。
「イコに続いて、志乃を死なせたら、おまえの記憶はどれだけ戻るのかな?」と、クククと笑う。
ログインしてコメントを確認・投稿する