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2018年06月30日16:00

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オリジナル小説 「燔祭」

気がつくと腹の下に娘がいた。長女のパウラだ。右側でグッタリしているのが次女のナタリア。左側でうつ伏せになって失神しているのが三番目の子にして長男のニコラス。三人の子供を相手にキリルは性欲を満たしているところだった。パウラと視線が合い、その視線が投げかける感情を目のなかで受け止め、突き刺すような憎悪を愉悦に変え、キリルの唇を残忍な笑みに歪めていた。「死んじまえ」とパウラ。「死んじまえ!」しかし次に同じ言葉を叫んだ時は、キリルのペニスの深い侵入にとろけた語尾になっていた。それからパウラの尻を両手でわしづかみにし、自分の股間に引き寄せて、ペニスをさらに奥深く突き入れると、尻に爪が食い込むほどきつく抱きしめて激しく抜き差しを繰り返した。パウラの長い絶叫が響き渡り、キリルはその響きに幸せそうに目を閉じ、自分の娘の子宮に向かって長い射精を放った。

キリルが子供たちを犯すのは、自分の子供たちが相手だと勃起の仕方が違うからである。かつて妻だった女たち、映画で共演する女たち、路上の春を売る女たち、いずれもキリルの性欲を完全には満たすことが出来なかった。自分が俳優になるずっと前、まだ女を知らない身体だった少年のキリルの心に宿っていたのは、抑えきれないくらいの加虐への渇望だった。誰でもいい、何でもいい、とにかくめちゃくちゃにしたい。ただそれのみの欲求であった。それで虫や蛙をバラバラに八つ裂きにすることをよくやっていた。当時はポーランドそのものがバラバラに八つ裂きにされた格好で、共産主義として再生しつつも、キリルを含めた国民全体が飢えていた。だから食べられる生き物は公然とバラバラにすることが出来た。しかし、空腹が満たされても、加虐への渇望がやまないことを知ったキリルは、本能が誘うままに、森林で香草を摘み取っていた少女を襲って強姦した。少女は草のなかで大の字になったまま呆然としていた。目からは涙、鼻からは鼻水、口からは涎、そして膣口からは赤い血が混じった精液を流していた。犯している間はほんのちょっと忘れていられたが、射精して我に返るとあっという間に心のなかがどす黒く染まって、少女をバラバラにしたい衝動に襲われた。キリルが殺人を犯すところまでいかなかったのは、単に破滅願望がなかったからである。生命の続くあいだ、出来る限り心の渇きをいやし続けようと考えたためである。キリルのペニスが処女たちの鮮血で染まり、赤黒く変色する頃、キリルはポーランド出身の映画俳優になっていた。

キリルは決して美男子ではなかった。残忍なヘビのような、強烈な印象を漂わせるこわもてであったが、女優を含めた女たちはキリルの凶暴なペニスのもとにひれ伏した。最初の妻はセットの裏で大道具の放つペンキの臭いのなかで貫かれて以来、貪欲にキリルを求めてパウラを出産した。初めてのわが子、長女の顔を病院で見た瞬間、キリルは鮮烈な、それでいて異様な痙攣にとらわれた。今まで全く知らなかった欲望がキリルのなかで鎌首をもたげてシュッシュッと舌を突き出して這い出てきたのだ。この子が育ったら犯そう。興奮する。自分の子供だからこそ興奮する。おれに目つきがそっくりなわが娘の子宮におれのペニスを突き立てることを考えるだけで、おれはこんなにも破裂するかのように勃起する。

パウラが初めてキリルのペニスを突っ込まれたのは五歳の時だった。当然身体は完成しておらず、それがゆえに膣口は巨大なペニスで裂かれた。キリルは医者に金をつかませて秘密裏に傷口を縫わせ、口外しないように秘密を誓わせた。妻はパウラが犯されたことを知り、娘にキリルを奪われた嫉妬、キリルがすでに自分を見ていない絶望にとらわれ、意味不明の絶叫を残して行方をくらましてしまった。

残されたパウラにはキリルしかいなかった。傷口が完全にふさがるまで、口でキリルのペニスを受け入れた。顎を大きく開いてもくわえきれないので、いつも嘔吐感に襲われ、精液を喉に受ける前から胃の中身を戻していた。でも何が何でも父親を満足させなければ許してもらえないのだ。そう、何があっても絶対に許してもらえないのだった。

ある日、キリルはパウラがこっそり日記をつけているのを知り、パウラが学校に行っているあいだ、本棚の後ろに隠してあった日記を読んだ。そこには予想していた性行為のあれやこれやではなく、古代の神への捧げものに動物や人間の子供を焼いて供えたという話が引用され、巨大な人型のかまどのなかで羊やニワトリ、人間の子供たちが生きながら焼かれている絵が描かれていた。パウラが念入りに描写したその人型の顔はキリルだった。

パウラに妹が出来た。名前はナタリア。二番目の妻とのあいだに出来た次女だったが、産んだ瞬間、妻は病院で離婚を告げられた。おまえは用済み、そうはっきり言われて彼女もまた絶叫して行方をくらました。乳児のナタリアの面倒を見たのはパウラだった。粉乳を与えて、おむつを取り替える。八つ年下の妹を横目に、夜泣きしないかとハラハラしながら、パウラは股を出来るだけ大きく開いてキリルのペニスを受け入れていた。ギシギシと腰を打ちつけてくる父親にパウラはそっと囁いた。「ナタリアも抱くの?」キリルはピタッと腰を止めてじっとパウラの顔を見つめ、パウラが何かに耐え切れず視線をそらすのを見届けるとニヤリと笑って、「ああ」と答え、腰をさっきより激しく打ちつけた。パウラは急激に膨キリルは決して美男子ではなかった。残忍なヘビのような、強烈な印象を漂わせるこわもてであったが、女優を含めた女たちはキリルの凶暴なペニスのもとにひれ伏した。最初の妻はセットの裏で大道具の放つペンキの臭いのなかで貫かれて以来、貪欲にキリルを求めてパウラを出産した。初めてのわが子、長女の顔を病院で見た瞬間、キリルは鮮烈な、それでいて異様な痙攣にとらわれた。今まで全く知らなかった欲望がキリルのなかで鎌首をもたげてシュッシュッと舌を突き出して這い出てきたのだ。この子が育ったら犯そう。興奮する。自分の子供だからこそ興奮する。おれに目つきがそっくりなわが娘の子宮におれのペニスを突き立てることを考えるだけで、おれはこんなにも破裂するかのように勃起する。

パウラが初めてキリルのペニスを突っ込まれたのは五歳の時だった。当然身体は完成しておらず、それがゆえに膣口は巨大なペニスで裂かれた。キリルは医者に金をつかませて秘密裏に傷口を縫わせ、口外しないように秘密を誓わせた。妻はパウラが犯されたことを知り、娘にキリルを奪われた嫉妬、キリルがすでに自分を見ていない絶望にとらわれ、意味不明の絶叫を残して行方をくらましてしまった。

残されたパウラにはキリルしかいなかった。傷口が完全にふさがるまで、口でキリルのペニスを受け入れた。顎を大きく開いてもくわえきれないので、いつも嘔吐感に襲われ、精液を喉に受ける前から胃の中身を戻していた。でも何が何でも父親を満足させなければ許してもらえないのだ。そう、何があっても絶対に許してもらえないのだった。

ある日、キリルはパウラがこっそり日記をつけているのを知り、パウラが学校に行っているあいだ、本棚の後ろに隠してあった日記を読んだ。そこには予想していた性行為のあれやこれやではなく、古代の神への捧げものに動物や人間の子供を焼いて供えたという話が引用され、巨大な人型のかまどのなかで羊やニワトリ、人間の子供たちが生きながら焼かれている絵が描かれていた。パウラが念入りに描写したその人型の顔はキリルだった。

パウラに妹が出来た。名前はナタリア。二番目の妻とのあいだに出来た次女だったが、産んだ瞬間、妻は病院で離婚を告げられた。おまえは用済み、そうはっきり言われて彼女もまた絶叫して行方をくらました。乳児のナタリアの面倒を見たのはパウラだった。粉乳を与えて、おむつを取り替える。八つ年下の妹を横目に、夜泣きしないかとハラハラしながら、パウラは股を出来るだけ大きく開いてキリルのペニスを受け入れていた。ギシギシと腰を打ちつけてくる父親にパウラはそっと囁いた。「ナタリアも抱くの?」キリルはピタッと腰を止めてじっとパウラの顔を見つめ、パウラが何かに耐え切れず視線をそらすのを見届けるとニヤリと笑って、「ああ」と答え、腰をさっきより激しく打ちつけた。パウラは急激に膨キリルは決して美男子ではなかった。残忍なヘビのような、強烈な印象を漂わせるこわもてであったが、女優を含めた女たちはキリルの凶暴なペニスのもとにひれ伏した。最初の妻はセットの裏で大道具の放つペンキの臭いのなかで貫かれて以来、貪欲にキリルを求めてパウラを出産した。初めてのわが子、長女の顔を病院で見た瞬間、キリルは鮮烈な、それでいて異様な痙攣にとらわれた。今まで全く知らなかった欲望がキリルのなかで鎌首をもたげてシュッシュッと舌を突き出して這い出てきたのだ。この子が育ったら犯そう。興奮する。自分の子供だからこそ興奮する。おれに目つきがそっくりなわが娘の子宮におれのペニスを突き立てることを考えるだけで、おれはこんなにも破裂するかのように勃起する。

パウラが初めてキリルのペニスを突っ込まれたのは五歳の時だった。当然身体は完成しておらず、それがゆえに膣口は巨大なペニスで裂かれた。キリルは医者に金をつかませて秘密裏に傷口を縫わせ、口外しないように秘密を誓わせた。妻はパウラが犯されたことを知り、娘にキリルを奪われた嫉妬、キリルがすでに自分を見ていない絶望にとらわれ、意味不明の絶叫を残して行方をくらましてしまった。

残されたパウラにはキリルしかいなかった。傷口が完全にふさがるまで、口でキリルのペニスを受け入れた。顎を大きく開いてもくわえきれないので、いつも嘔吐感に襲われ、精液を喉に受ける前から胃の中身を戻していた。でも何が何でも父親を満足させなければ許してもらえないのだ。そう、何があっても絶対に許してもらえないのだった。

ある日、キリルはパウラがこっそり日記をつけているのを知り、パウラが学校に行っているあいだ、本棚の後ろに隠してあった日記を読んだ。そこには予想していた性行為のあれやこれやではなく、古代の神への捧げものに動物や人間の子供を焼いて供えたという話が引用され、巨大な人型のかまどのなかで羊やニワトリ、人間の子供たちが生きながら焼かれている絵が描かれていた。パウラが念入りに描写したその人型の顔はキリルだった。

パウラに妹が出来た。名前はナタリア。二番目の妻とのあいだに出来た次女だったが、産んだ瞬間、妻は病院で離婚を告げられた。おまえは用済み、そうはっきり言われて彼女もまた絶叫して行方をくらました。乳児のナタリアの面倒を見たのはパウラだった。粉乳を与えて、おむつを取り替える。八つ年下の妹を横目に、夜泣きしないかとハラハラしながら、パウラは股を出来るだけ大きく開いてキリルのペニスを受け入れていた。ギシギシと腰を打ちつけてくる父親にパウラはそっと囁いた。「ナタリアも抱くの?」キリルはピタッと腰を止めてじっとパウラの顔を見つめ、パウラが何かに耐え切れず視線をそらすのを見届けるとニヤリと笑って、「ああ」と答え、腰をさっきより激しく打ちつけた。パウラは急激に膨れ上がったペニスが自分ののなかを擦り上げる感触に思わず悲鳴をあげた。その声に眠るナタリアが呼応するかのように泣き声をあげた。

三番目の子供、初めての男の子のニコラスを得た時、キリルは国際的な名声を浴びていた。狂気じみた熱演が観客たちに支持されたのだ。ほんとうに気が狂っているとしか思えないその演技。一体どうしたらあそこまでスクリーンを圧倒することが出来るのか。南米の大河を筏で渡り、娘役の女優を矢で射抜かれ、多くの猿たちを相手に狂気の形相で怒号をあげるスペイン侵略軍の隊長を演じたキリルは、興奮のあまり猿の一匹を絞め殺してしまってNGをくらい、怒りのあまり監督に殴りかかったことを思い出していた。娘たちと息子は二階で寝ている。映画の撮影はもう次の作品が始まっていたから、さすがに疲れたキリルは久しぶりにペニスを下着のなかにしまってガウンを羽織ってくつろいでいた。あの時の監督、ヘルマンの顔ときたら全く傑作だった。そう思った瞬間、拳銃を撃つ音が響き、窓ガラスに蜘蛛の巣のようにヒビが広がるのを見てキリルはとっさに身を伏せた。それから壁に背中をくっつけるように立って、ちらっと窓の外を見た。見覚えのある背中が向こうを走っていくのが見えた。ヘルマンであった。そこでキリルはニヤリと笑い、翌日ヘルマンに正式に謝罪を申し入れた。

ナタリアとニコラスの純潔はパウラが頑張ったおかげで、それぞれが六歳になるまで保たれた。ナタリアが六歳の時、パウラは十四歳だった。少女としての時期は全て父のキリルによって形成され、女としての身体の完成度もキリルによるものだった。乳房は同年代の少女より大きく張り、くびれはより細く、お尻は形よく突き出していた。初潮がくるずっと以前からペニスを受け入れてはいたが、キリルが定期的に飲ませる薬のおかげで避妊は出来ていた。パウラは父の異常な性欲を心でも身体でもよく知っていた。父は必ずナタリアも抱くだろう、そして同じ男であっても柔らかい肌をしているうちはニコラスも抱くだろう。私に出来ることは私が少しでも父の性欲を満足させて、二人の純潔の時間を伸ばすことだ。自分の時より一年伸びただけであったが、それでもパウラは満足していた。

キリルの撮影現場に同行していたパウラは、初対面の監督からいきなり絶賛されていた。「子供とは思えない美しさ」とイタリア人の監督は両手を大きくあげて感動していた。「子供とは思えない」。その言い方にパウラは小さく叫ぶと泣き顔を両手で覆い、楽屋へ逃げ込んだ。キリルはそれを見て、監督の方へ向き直ると、指輪をはめた右手でかたく拳を握り、思いっきり鼻柱を殴りつけた。「おれの娘に失礼は許さん。次は殺す。いいな」

異常なセックス。ナタリアもニコラスも年を重ねて物心がついてきて、それまで当たり前のことだと思っていた父とのセックスが人には言えないようなことだということに気が付き始めていた。姉のパウラの態度、そしてそれぞれの母親が三人ともいないという事実、そしてそれら以上に父のけだもののようなふるまい。もしかして自分たちは赤子のうちにどこかからさらわれてきて、セックスの奴隷にされているのではないだろうか?しかしそんな思いは、パウラの視線、そして自分たちの視線がキリルのそれに非常に酷似している現実で打ち砕かれた。パウラ、ナタリア、ニコラスは紛れもなくキリルの子供たちなのだ。父よ、なぜ我らをこんな目に?視線が問いかける無言の訴えに、キリルはいつも決まって巨きく硬くそそり立ったペニスを突っ込んでくるだけだった。

十七歳になったパウラはキリルを拳銃で襲撃したヘルマンのツテで端役をもらい、女優デビューを果たした。どこから見ても美しい……しかし目を見れば誰もがキリルの娘だと分かるその妖しさ。美と妖が入り混じった独特の美貌で、パウラは着々とキャリアを重ねていった。そのあいだ、キリルはパウラを抱かなかった。パウラはしっかり覚えていた……最後に父とセックスしたのはちょうど映画出演が初めて決まった日だと。「カメラの前に立ったらおまえはおれのものではなくなるんだ。でもおれにはナタリアがいる。ニコラスもいる。おまえはおまえの人生を生きるがいい」パウラはその日のキリルのペニスの感触もしっかり覚えていた。そしてキリルの言葉がカミソリのように心を切り刻み、そこから夥しく流れ落ちる血の味もしっかり覚えていた。

夢のなかでも父のキリルを見る。しかし、そこに立っている父は人間ではなかった。人型の巨大なかまどで、あちこちに開いた口からニワトリ、羊、そして大勢の子供たちが顔を出していた。誰かが積み上げた薪に火をつけ、炎が彼らを呑みこみ、泣き声、悲鳴が炎の渦とともに巻きあがると、キリルの顔の目、鼻、耳、口から勢いよく火柱が噴きあがった。そう、父は人間ではないのだ。生贄を捧げなければならない神なのだ。神は自分以外の血は供物として認めない。自分の血が流れるものだけを認める。なぜなら自分の分身こそ最も愛と慈しみを注げるものだからだ。

パウラは結婚して家を出た。キリルによって異常なセックスを仕込まれても、外面をしっかり演じさえすれば人並みに恋愛を重ねて結婚出来る。そう、しっかり演じさえすれば。それは即ち、ナタリアもニコラスも演技の道へ進まねば人並みの生活を送れないということではないか。何と呪われたことだろうか。パウラは必要なこと以外は極力鏡を見ることを避けた。そのおかげで夫からも友人からも親しみを込めて吸血鬼と呼ばれたのだが、パウラにとっては文字通り、鏡の向こうには頭をスキンヘッドにしてノスフェラトゥ(不死者。即ち吸血鬼)を演じたキリルが映っていた。肌を白く塗ったその顔は自分の顔そのものだった。この身体には呪われたあの男の血が濃く流れている。そしてこの心にも呪われた血が冷たく煮えたぎって……

パウラは夫の子供を身ごもり、出産するまでひどいノイローゼに陥った。医者はただのマタニティ・ブルーと判断したが、パウラは生まれてくるのがキリルの子供なのではないかという恐怖に支配されていた。夫や周囲にかつての自分は父親とセックスしていたと打ち明けられない精神的負担がより彼女の症状を重くしていた。おなかが大きくなるにつれて、子宮の奥からキリルの顔そのままを持った胎児が這い出てくる……そして四方をあの独特の首回しでじっくり眺め……こちらを向いてシュッと唇をすぼめるのだ。毎晩自分を抱く前にしていた仕草そのままに。しかし産まれてきたのは健康なかわいらしい男の子の赤ちゃんだった。微塵もキリルには似ていない。喜ぶべきことなのだが、パウラは自分の笑顔が演技そのものだということに気が付いていた。心の底から笑ったはずなのだが、その実は失望感が強かったのだ。一体なぜ?

ナタリアは子役を経て、世界の少女愛好者が熱狂するような美少女に育っていた。年齢の割に大胆なセクシー演技を見せたことも大きな話題になっていた。キリルはそんな娘を自慢するように、常に隣に立ち、ナタリアが親しげに腕を絡ませて頭を寄せるツーショットを記者たちにもっと撮れとアピールしていた。ニコラスも子役を経て、ナタリアの美貌を上回るような美少年に成長していた。早くからファッション誌と専属契約を結びモデルとして活躍していた。世の人々はパウラといい、一体どこをどうしたらあんな毒蛇のような男から三人も天使が生まれるのだろうかとため息をつきながら羨ましがった。

キリルは子供たちが成長するにつれ、自分から離れていくのではないかという焦燥感にとらわれ、老いが進んだのもあり、次第にふさぎ込むようになった。ペニスも以前のように勃起しない。商売女に念入りにしゃぶらせてもピクリともしない。そこで狂人のように吠え立て、暴れまくり、テーブルや家具の上のものをすべて叩き落とし、怯える商売女をめちゃくちゃに殴りつけて追い出し、金髪を振り乱したなかから人一倍巨きな目を剥いてブルブル震えだした。「パウラ……!」「ナタリア……!」「ニコラス……!」「おれの子供たち……!」「なぜおれから遠ざかる? おれはおまえたちの父だ!おまえたちはおれのものなんだ! おれの血から生まれたものはおれのなかに還るべきなんだ!」あまりの喚き方に近所の通報で救急車と警察が到着したが、ドア越しに応対したキリルは目をギラつかせながらも、やんわりと謝罪の言葉を述べ、事を丸く収めた。

キリルがバイオリンのパガニーニを題材に映画を撮ると決めた時、周囲には誰もいなかった。金を出してくれる者はいたが、スタッフを引き受けてくれる者がほとんどいなかった。長くコンビを組んでいたヘルマンでさえ、監督の依頼を断った。しかたなく監督、脚本、主演の三役を務めることにし、子供たちに出演の声をかけた。しかし応じたのは息子のニコラスだけであった。パウラは女優を引退して専業主婦になったから、ナタリアはスケジュールが合わないからと断ってきた。キリルは映画が完成したら死ぬことが分かっていた。なぜなのかは分からないが、頭のなかではそう感じていた。日本人女性のスタッフに「おれはグラン・ギニョールそのものなんだ」と囁いた。

キリルが自宅にてたった一人で死んだその日、パウラは息子のペニスを見てはらわたがよじれるような感情を覚え、ナタリアは自分を崇拝する三人の恋人とグループセックスに耽り、ニコラスはパーティ会場で見かけた少女を強引に自室へ招き入れて強姦していた。三人とも絶頂に達したその時、彼らの脳裏ではキリルの顔をした人型のかまどが大きく割れて崩れ落ち、真っ赤な炎の舌をあちこちから出してすべてを業火で包んでいた。

キリルは死んだ。父は死んだ。三人の身体と心に深い痕跡を残した異常なセックスのけだものは永久にこの世から去ってしまった。葬式に出席したのはナタリアとニコラスの二人だけで、パウラは連絡すらしなかった。

パウラの心に去来するもの。愛する息子のペニスを浴室で見た瞬間、なぜあんなにも心が乱れて、子宮の奥から濡れたのか。赤子のうちから見慣れてきたはずのかわいらしいペニスをたった数年おいて久しぶりに見ただけで、一体なぜあんなに欲情するのか。そこで恐る恐る鏡を真っ向から見てみた。震える手でドレッサーの鏡と向き合い、向こうの顔と視線を合わせた瞬間、さっと顔をそむけた。そこにはキリルがいた。毎晩自分にのしかかっていた父がいた。パウラは顔を両手で覆い、それから天を仰いで悲鳴をあげた。長く、最後の声が震えるような悲鳴を。

世界の映画史のなかでキリルは伝説と化していた。ヘルマンは彼に複雑怪奇な友情を示した伝記映画を撮り、ラストで笑みを浮かべながら蝶々とたわむれるキリルに初めて敬愛ととれる感情を捧げていた。まさにグラン・ギニョールそのものだった男、キリル。観客たちは永遠に彼のことを忘れないだろう。

中年の齢を超え、老いをひしひしと感じてきたパウラはある日意を決して、自分が五歳の頃からキリルとセックスをしていたことを告白する本を書いた。ナタリアもニコラスもキリルの餌食になりました。キリルはあなた方の思っているような伝説の俳優ではないのです。けだものなのです。異常性欲者なのです。彼は演技などしていなかった。すべて素だったのです。キリルはクソ野郎なのです。忌むべき人でなし、唾棄すべき変態、終身刑に処すべき犯罪者……

想いのたけを書き切った告白本は知られざるスキャンダルとして飛ぶように売れ、キリルの名声にほんのちょっぴり傷をつけたが、早いうちに忘れられるだろう。それはパウラもよく分かっていた。キリルのしてきたことを告白したのは、憎しみからではない。父とのつながりを再認識したかったからなのだ。老いてすべてを忘れてしまう前に。

キリル、あなた。お父さん、あなた。この世で一番愛するあなた。あなたに私は今でも死んじまえと叫ぶわ。だからもう一度、幽霊でもいいからせめてもう一度。あの巨きな硬いペニスで私をめちゃくちゃにして。子宮がつぶれるくらい貫いて。爪でお尻を引き裂いて。私はあなたの生贄。私はあなたから流れ落ちた血液。お父さん、おお神よ、私をその血走った目で見つめてちょうだい。

キリル、死んじまえ。パウラ、私も死んじまえ。それくらい愛してる。



……



ナタリアとニコラスも父への愛は自覚していたが、パウラのように言葉で言い表すことは出来なかった。その代わり、虚空のどこかで新しい人型のかまどが出来上がり、それが生贄を必要としているのを見た。



……



神への供物、父子の関係、それは血の滴るような愛。

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