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2018年06月26日13:18

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心も筆も自由な「枕草子」

私は残念ながら英語が全くできない。
だからせめて日本語は読めるようになりたいので「枕草子」を大学で受講した。

先週の土日は小石川まで出向いて、二日間朝10時から夕方5時半までぶっ続けで講義を受けた。
講師の島内裕子先生の面接授業は人気科目なので抽選になる。競争を勝ち抜いた中高年の学生たち80人で講義室はびっしりだ。
もちろん島内氏は朝から夕方まで壇上に立ちっぱなし。その解説はたいへん分かりやすかった。

「枕草子」は「源氏物語」よりも前に書かれている。中学生の時に〈春は曙〉の一段だけ習った。(高校はなにしろ美術が週に17時間もあったので古典も音楽も家庭科もナシだった)
ただ、学校で習う「枕草子」は「三巻本」と呼ばれるタイプのもので、今回講義を受けるのは明治まで読まれていた「春曙抄」という古いタイプのものだ。漱石も一葉も与謝野晶子もこちらを読んだ。
これには〈冬は早朝(つとめて)〉が無い。構成も違ったりする。

さて「春曙抄」で読む「枕草子」は、現代人のブログのように、清少納言は自立しているOLみたく日々の出来事を自由につづっている。
有名な段だけでなく、全部通し読みをすると彼女の魅力的な人物像が見えてくる。
麗しの中宮定子のことを褒めたたえるのだけではなく、彼女の子供っぽい部分やちょっと意地悪したとこなど、天皇や上流貴族たちの日常の会話やしぐさなども生き生きと描かれ、また粗忽者なキャラや使えない従者のことも辛辣に可笑しく記されている。
その観察眼は鋭く、物尽くしでは、行事や衣装、花や鳥はもちろんのこと、蚤のことまで書き記してあるので、宮中の生活がリアルに目の前に現れてくるようだ。
こんな気まぐれなブログが遺っていて千年後も読まれているなんて、本当に奇跡だ。

講義は大変分かりやすかったが、島内氏はあくまでも文系解読タイプで、ビジュアルタイプではなかった。
「枕草子」にはファッションが詳しく描かれているが、草木染についての説明もなく、
〈暗闇に苺〉などと面白い表現が出て来ても、当時の苺の形や種類には言及されない。〈雨と霧〉についても濃霧を体験したことが無いようで、また牛車を乗せる船にしても質問したが、ビジュアル的な説明は無かった。
こちらは「苺ってどんな苺? 牛車がそのまま乗る船ってどんなの?」と謎が謎のままだ。

とりあえず自分で調べた。
オランダ苺は江戸時代に渡来してきたものなので、平安時代のイチゴはクサイチゴや木苺だったようだ。いまどきのイチゴと同じくらいデカい。(画像はクサイチゴ)
また、牛車についても機会があれば絵巻物など調べたい。
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