Ｗ杯の激戦の裏で

今朝のワシントン・ポスト紙の論説欄で、以前にイランで投獄された経験のある新聞記者がＷ杯の裏で起こっているイラン市民が直面する問題を解説していますので要訳をご紹介します。
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＜二つのW杯の間の4年間で多くのことが変るということを一番感じているのは嘗てイランで投獄された経験があるRezalan記者だろう。そのRezalan記者がロシアＷ杯について語っている＞

4年に一度のワールドカップは、世界の人たちに外国やその国の人たちを知ることが出来る覗き窓を提供してくれる。一部のサッカーファンは、スポーツは政治とは関係ないと主張しており、多くの場合それも正しいかもしれない。しかし、イランについて話すなら、政治化は避けられないようだ。
サッカーチームのメンバーもイランの人たちも、他のみんなのように世界の一部になりたいと思っている。しかし残念ながら、イランと他国との間には常に存在する何かがある。

イラン・ナショナルチーム監督でポルトガル人のカルロス・ケイロスはチームのワールドカップ出場に至る奇跡的な物語の中心人物だ。
「このチームもイランという国そのものも典型的な弱者だ。私はイランがW杯の舞台にできるだけ長く留まることを望んでいると同時に、イランの人々が抱えている問題に世界の人たちが思い至る良い機会となることを願っている」とケイロス監督は語る。
金曜日の最初の試合で、イランは劇的な勝利を収めた。相手モロッコの選手がアディショナル・タイムぎりぎりの95分にオウンゴールをしてしまった。だが、イランの代表チームを取り巻くドラマは、選手たちがこのW杯の初戦でフィールドに出る前に始まっており、驚きの勝利はそれを祝福するものだった。

W杯開始前に、アメリカのスポーツ用品大手ナイキが「アメリカが課した経済制裁のお蔭で、イラン代表へのスポーツ用品の提供が出来なくなった」と発表した。
イラン代表たちが最高の状態で準備に集中しなければならない時に、チームには精神的にも物質的にも大きな衝撃となった。
だが時に、不運でさえもチャンスに変えることができる。ケロイスはこれを前向きに受け取っていた。彼はこの不運をチームを団結させるための手段に使った。
「われわれは劣悪なコンディションでも練習し試合をやってきた。経済制裁のお蔭で、まともなピッチもキャンプ地も友好的な試合相手にすらこと欠く状態できた。チームの仲間にサッカーをさせよう、と呼びかけるのが自分の仕事だと思っている。彼らはサッカー・プレーヤー。それ以上でも以下でもない。世界中のサッカー選手と同じように、かれらもサッカーを楽しめるように準備してやらねばならない。彼らは誰にもそして何に対しても反対などしていない。彼らは自分たちを表現し、サッカーをしたいだけなのだ」と初戦の勝利の後でケイロス監督は語っている。

一方、イランの女性ファンは、40年間にわたり男性スポーツイベントに出席することを禁じている禁止措置に抗議するため、世界のスポーツイヴェントを利用してきた。そして効果を上げ始めたようだ。金曜日のサンクトペテルブルクでの試合では、FIFA はイラン女性に平等を求める看板をスタジアムに持ち込むことを認めた。このことは、今大会の国際報道で大きく取りあげられた。また、イランでも女性たちは制約を押し戻す努力を続けており、男性と一緒にパブリック・ヴューで応援し、禁止にもかかわらず勝利を祝っている。
イランの男性スポーツイベントに出席する権利を女性が獲得できたら、このワールドカップはかれらにとって最大の勝利となるだろう。

イランは初めてＷ杯連続出場を果たした。もしチームが決勝リーグへ進むことができたなら、女性観客の禁止に待ったを掛ける好機となるだろう。
インファントニFIFA会長がこの問題でイランのロウハニ大統領と話し合った後で「間もなくイランでも女性たちがサッカースタジアムで応援できるようになるだろう」と語っている。

多くのイラン人がＷ杯のためにロシアへやってきているが、以前は普通のイラン人はイベントに出席する目的などでは国を離れることができなかった。
万が一彼らがチャンスを得て海外へ出たら、自分に周囲の注意が向かないように気を付け、写真を撮られることも避けるようにした。
金曜日の試合後のイメージではそのような懸念は過去のものであり、国の宗教支配者からの命令のためではなく、市民自身で行動の規範をさぐっているようにも見えた。これを契機にわれわれも積極的に彼らの手助けをする努力をすべきだと思う。

全ての人が、平等と民族自立の権利を信じ、その原則が世界中で普遍なものになるためなら、イランの人たちを応援しよう。
イラン・チームがＷ杯のピッチで長く活躍を続ければ続けるだけ、われわれはイラン市民の平等と自己表現の自由について語るチャンスが増えることになるだろう。