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2018年06月24日07:31

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石原莞爾将軍との出会いと忘れ得ぬ人々(上)

石原莞爾将軍との出会いと忘れ得ぬ人々(上)
★特集 故武田邦太郎・本会最高顧問・元参議院議員に伺う
石原莞爾将軍との出会いと忘れ得ぬ人々(上)



◎池本喜三夫氏

 日本人初のフランス語学位論文で、最高栄誉を文部大臣から受賞

――先生と石原将軍との出会いについては後ほどお尋ねするとして、まず、近親の池本喜三夫博士から……。
武田 実は、池本博士は私の従兄弟なのですが、年は13歳も年長で、叔父のような存在です。東京農業大学で農業政策を講義していましたが、フランスに10年ばかり留学して、ソルボンヌ大学やナンシー大学で、経済学、農業経済学、社会学、歴史学など広範な研究をした人です。「明治維新とその農村諸階級に及ぼした影響」と題する学位論文により、日本人がフランス語で書いた最初の論文ということで、「トレ・ゾノラーブル」と称する最高栄誉をフランスの文部大臣からもらいました。
――大変な碩学なんですね。
武田 私は大学(東京帝国大学)に入ると、父から「親類でもずば抜けた天才だから、すぐ会うように」と言われて訪問しました。まだ独身で下宿生活をしていましたが、私が訪ねた時、ちょうど3人の海軍青年将校が来ていて、「日本改革」に関する池本の口述をノートしているところでした。伏見宮殿下のご命令ということでしたが、池本博士の意気盛んなことに驚いてしまいました。

 中野正剛氏の紹介により、参謀本部で石原将軍と初対面

――純粋な経済学者との印象を持っていますが、実際は違うんですか?
武田 池本博士はフランス留学期に、中野正剛さんの弟の秀人さんと交際が長く、秀人さんは詩人兼画家でしたが、「君は天下国家の議論が好きだから、兄貴を紹介しよう」ということで、正剛さんにお会いしたところ、正剛さんが池本に大層ほれ込んだのです。正剛さんは後年、東條軍閥と闘争し、苦境に立たされて割腹自殺をした憂国の政治家でしたが、「池本君、君の国家再建の方策はことごとく賛成だが、議論だけではダメだ。実行するには陸軍を動かさねばならぬ。陸軍を動かすには、石原莞爾を動かさねばならぬ。会ってみるか」と言われ、正剛さんの紹介で石原将軍にお会いすることになったのです。
――そうですか。意外な出会いだったんですね。
武田 ええ。池本博士が石原将軍と初めて会ったのは、ちょうど昭和11年(1936年)の2・26事件の直後で、参謀本部の作戦課長だった石原将軍は大変に忙しく、池本博士が部屋に入っても、なかなか相手にされませんでした。天才肌の池本博士は面白からず思ったのでしょう。石原将軍の執務している机のほうへ歩いていって、こう言ったそうです。
「あなたは満洲事変を起こした中心人物とお聞きするが、現在の情勢では日支戦争に展開する惧れが多分にある。不幸にしてそうなれば、世界では支那を支持する国が多く、日本に味方する国は一つもない。私は日本に勝つ公算は少なく、支那の勝つ可能性が大きいと思うが、果たしてそうなったら、あなたはその責任をどのように考えられるか」と。
――なかなか勇気のある発言ですね。
武田 陸軍の恐さを知らなかったんですね(笑)。池本博士のこの言葉に、石原将軍はニコッと笑い、「さあ、池本先生、どうぞ」と椅子を勧め、「実は、日本はあなたが考えているよりもっと弱い。支那は世界の評判よりずっと大きな強みを持っている。今、戦争になれば、日本が必ず負ける」と言われたというのです。
――石原将軍らしい、態度と考え方ですね。

 日中戦争回避策として、石原将軍にパイロット農村づくりを提案

武田 当時、そんなことを言う人はいないですよね。この時、石原将軍は、次のようにも語ったそうです。「私は何とかして日支戦争を避けたいんだが、今の内外の情勢では、どうも避けられそうにない。中野君はあなたを大変な秀才だと称しているが、何かいい考えがおありか?」と。池本博士は、自信満々で答えたと言います。
――どういう回答だったのでしょうか?
武田 当時、中国の国民の97〜98%は農民でした。中国は広いから、作物によって農業区に分けると二十幾つかになる。そこで農業区ごとに、中国のこれからの農業、農村はどうしたらいいかというモデルを一箇所ずつ作る。今で言えば、パイロット農村ですね。それを日本の資本と技術でやれば、必ず農民と農民との提携ができて、両国は心から仲良くなれるはずだ。中国は日本にとって、文字とか儒教とか、千年余の文明の恩人だから、その恩返しとして誠心誠意やる。西洋のギブ・アンド・テイクでじゃいけない、と言ったそうです。
――石原将軍は、どう反応されたんでしょうか?
武田 そうしたら、石原将軍は大変喜ばれて、「そういう話は初めて聞いたが、どこかに根拠があるのか」「いや、私の意見です」「そういうことを言われるぐらいなら、あなたはそれをやれるのか」「金があればやれる」「それでは、陸軍が金を出すからやってくれるか」とまで言われたけれども、池本博士は「軍の金を使ったら、いいことも悪くなるからごめんだ」と言って帰ってきたというのです。
 石原将軍はいかにも残念に思われたのでしょう。すぐに中野さんに電話をされ、「池本さんは民間有志の金が出ればやると言っているのだが、何かいい方法はないか」と大変なご執心のようでした。
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