昔、飲食業に従事していた時の話である。
ランチタイムとディナータイムの間の一時閉店中、男子トイレの個室が修理で使えなかったので、女子トイレの個室を使うことにした。
その日は、一時閉店中に女性従業員が居ないシフトだったからである。
用を足していると、遠くに女性の声が聞こえた後、隣の個室に誰か入った。
思い切り用を足す音が聞こえた後、ペーパーをカラカラと凄い勢いで巻き取る音が何度か聞こえ、出て行った。
男でもこんな豪快なのは居るまい。
それ程の音だった。
自分は息を潜めて硬直していた。
女子トイレから出て仕事に戻ると、女子トイレの個室で隣に居たであろう人が居た。
ディナーからの出勤の筈が、用事で早めに職場に来たらしい。
それは当時、自分が想いを寄せていた人だった。
目が眩むような衝撃を受けた、そんな昔話である。
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