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2018年04月07日08:28

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車浮代・吉田豊『春画で学ぶ江戸かな入門』

[あらすじ] 自宅の古い桐の棚から、『春色梅児誉美』のボックスセットが出て来た。

二十代の頃から、江戸の黄表紙だのに興味を持って、
版本を読もうとしていた。
家に有るのは、母の蔵書の「日本古典文学大系」とか「日本古典文学全集」とかいった
お堅い本であり、その中のほんの一巻くらいに下らない話が詰まっている。
どーんと見開きに絵が有って、その周りを埋め尽くしていることばがきを読むのが楽しい。
だが、こういった全集に載っている絵はかなり縮刷されている。
詞書きのかなを判読するには小さ過ぎる。

江戸の版本のかなは独特だ。
パターンが有るので、慣れればかなり読めるようになる。
その後、こういった版本のかなを読むためのテキストを、図書館で見つけた。
最近ではその手の本も増えている。
3年前に永青文庫で春画展が大々的に催されたのもきっかけになっているようだ。
この本もそういうものの一冊だ。

ただ、なんたって吉田豊という大家を味方に付けて作った本なので、内容が良い。
吉田さんの提唱する「はたかにわけすれ(裸には毛擦れ)」、この八文字から憶える仕組みになっている。
更に読めるようになるために、この本では次のステップとして
「をすきはつのほり(お好き初登り)」という八文字を用意している。

版本のかなを少し勉強してみれば、この八文字+八文字がいかに頻繁に登場するか、
これだけで多くが読めることが分かるだろう。

読みやすいものから読めるように、読者の興味を引くように、本はうまく構成されている。
合間には、春画自体や、江戸の出版業界の仕組みや、絵師についての解説が入っていて、
全体を理解できるようになっている。

いつものように、「あとがき」をまず読んでみよう。
吉田豊さんが、春画研究の大家である林美一氏と出会うくだりが、熱い。


私は在職中の50歳当時、書店で見かけた「江戸戯作文庫」に魅せられて、
かな読みの勉強を始めました。

「江戸戯作文庫」は、林美一先生の校訂で全十巻刊行されましたが、その第一巻を開いたところ、
中央上部に草双紙の影印が掲げられ、周囲に解読文を配してありました。
草双紙は現在の劇画本と同じ大衆小説で、すらすら読めれば楽しいだろうなと考え、
独学で読みあげることに挑戦する決心をして購入しました。(略)

私の学習法は、原文と解読分とを一字ずつ確かめながら江戸かなを覚えてゆくやり方です。
これを何回も何回も繰り返した末に読めるようになったのです。
ただ、どうしても読み方に納得できないかなが20個ほど出るので、出版社宛に質問したところ、
林先生から丁寧な回答をいただき、第一巻を読み終えるに至りました。
実のところは、殆どが原稿ミスか校正ミスだったようです。

第二巻も同様にご指導をいただき、第三巻の返信には
「次からはゲラを送るからチェックしてほしい」との仰せに、
驚くやら、認められるまでになった嬉しさやらでますますやる気が出た次第でした。

こうして全十巻が完結した後は先生が監修された「定本・浮世絵春画名品集成」シリーズの
解読を引き受けるようになり、机周りに春画を散らして家内の顰蹙を買いながら、
先生がお亡くなりになるまでお手伝いを続けたのでした。


偉大な話だなあ。



写真と本文は関係ありません。
ね、ジーロくん。
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