「私を構成しない音楽の9枚」につづいて
「私を構成する現代音楽の9枚」というものを考えてみた。
現代音楽に対する見方、考え方は人によって違うだろう。
自分の現代音楽観は、戦後、新ウィーン楽派の影響下から
スタートし、さまざまな変貌を遂げるものの、1970年頃を
境に下降線を辿るというものだ。
�．悒鵐張А仝魘繕並�1番（1947年）
ヘンツェの若書きであるが、新ウィーン楽派の影響を受けつつも、
感覚的な響きやしたたかな構成に、独自の個性を示す。
作曲年からいっても、戦後現代音楽のスタートを象徴するような
１曲といえる、かもしれない。
�▲屐璽譟璽此．襦Ε泪襯函次Ε汽鵝Ε瓠璽肇襦�1955年）
言わずと知れた傑作中の傑作。ヴィヴラフォンやフルートの
洗練された響きに耳を奪われるが、最終曲のゴングの一撃を
クライマックスとする巧みな構成が見事である。
ここにあげたヨーロッパの現代音楽は２曲のみである。
ヨーロッパの現代音楽は、12音とかソナタ形式、変奏曲など
厳格な形式や作曲技法が基本になっているものに魅力を感じる。
1960年以降、音楽が自由、というより混沌となってくると
どうしても退廃、衰退を感じてしまう。
�Ｌ霏綵�雄 ピアノ協奏曲（1967年）
12音技法やメシアンの房状和声、そしてピアノの超絶技巧を盛り込んだ
矢代秋雄の傑作。当時の新しい作曲技法には目もくれず、自分の信ずる
音楽を追求してきた努力の成果だと思う。
ひどいことに、この曲のベルリン初演は大失敗で、その後,矢代は
失望のあまり沈黙。そして1977年に亡くなってしまう。
前衛音楽全盛のヨーロッパでの初演は
タイミングが悪かったというしかない。
�せ袷厩検．譽�ィエム（1972年）
第2次世界大戦、とくに日本の敗戦を題材とした音楽は
徹頭徹尾リアリズムでなければならない。
そのことを思い知らされた、まさに圧倒的な作品。
これに比べれば、佐村河内の交響曲「HIROSHIMA」など、
フィナーレの甘ったれたノビレメンテが笑止千万なのは
明らかだ。
三善晃を聴いていれば、佐村河内にだまされることはない。
�ヅ鮴�譲二 シーンズ・フロム・バショウ（1980年）
「日本人は日本的な音楽を作れ」という連中がいる。
リゲティは韓国の若い作曲家に「君は、あなたの国のことを考えなさい。
自分の国についてのリサーチのない音楽は意味がありません」
といったという。
自分にとって、日本人の、日本人的な作品というと、
この曲くらいしか思い浮かばない。
文字通り、芭蕉の俳句を題材としたオーケストラのための小品集で、
センスの良さを感じる。
�μ酖坪�行 ピアノ3重奏曲 (1963年)
野田暉行の学生時代の「ホルン3重奏曲」「ピアノ3重奏曲」は
書式、構成、そして表現の完璧さにおいて際立っている。
前者はブラームス、後者はマーラーのへのオマージュであるが
それにとどまらない曲の魅力、面白さは、まさに天才そのものであろう。
ここでは、より現代音楽らしいピアノ3重奏曲を選んだ。
��野田暉行 エクローグ (1970年)
これは当時流行したマルチパーカッションとフルートによる作品で
この編成による響きの美しさ、ダイナミズムは実に鮮烈であった。
曲の構成も見事で、ラストのクライマックスのあと、すぐに冒頭の
部分に戻るところなど、聴くたびに感心してしまうほどである。
�┘札轡襦Ε謄ぅ蕁次．罐縫奪函Ε好肇薀�チャーズ（1966年）
セシル・テイラーのたくさんあるフリージャズのアルバムのうち
代表作というと
衝撃度の高さと知名度から、やはりブルーノートから出た
「ユニット・ストラクチャーズ」「コンキスタドール！」の2枚だろう。
ここでは、徹底して調性的なハーモニーを排した、より前衛的な
前者を選んだ。
7人編成だが、とくにピアノ、サックス、ドラムスの強烈な応酬
（まさに、バトルというにふさわしい）を聴くと
いかにも、新時代の到来という感じである。
それにしても、ここでのセシル・テイラーのピアノほ
超絶技巧なんてものではない。とんでもないプレイだ。
ジャズやロックが、新しい時代の音楽を追求するようになってから
現代音楽は、徐々に廃れていくのを感じないわけには行かない。
��カプースチン 8つの演奏会用練習曲（1984年）
この曲を現代音楽に入れるのはどうかという人もいるだろう。
ピアノの扱い方のうまさ、新しさ。
これに比べれば、武満徹のピアノ曲は、
ピアノの扱い方があまりに創意工夫に欠けると言わざるを得ない。
こういうピアノの扱いがあるのかという面白さがある。
演奏会用練習曲としての作品の価値も高い。
ショパンやリストに次ぐものとして評価したいくらいだ。
9枚選んで、だいたい、自分の考えを反映したものになったと思う。
�┐筬�が入る事によって、面白い選択になったと自負している。
9枚選んで、武満徹が外れてしまった。
できれば「地平線のドーリア」あたりを入れたかったのだが。
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