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2018年03月16日16:18

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「東京アニメアワードフェスティバル2018」(その4)

続き。
「東京アニメアワードフェスティバル2018」の短編コンペティション部門〈スロット3〉から印象に残った作品を紹介。


○『あなたのブラウンナンバーはいくつ?』(2016)――インド。4分。2D。
たしかに色白のインド人も多いが、まさかインド人はこんなに肌の色でストレス溜めているとは!?
【赤ちゃんが生まれたときから肌の黒さでブラウンナンバーが決められ、人生の道筋が決まるという――、人種差別ならぬ色黒差別を描く。】
この子は83番だから絶望的、私は13番だから白人扱いよ〜、てな感じ。
本当にインドではこんなのあるの?と思わせる内容。差別がどうの人権が何のではなく、好感度高い作品。


○『メモ』(2017)――フランス。4分。2D。
これも認知症もの。
【一人暮らしの老人は自分のことは自分で出来ると思っているが、街に出たとたんに靄がかかって何も分からなくなり座り込む。娘に助けられ、彼は行動を常にメモに書いて行動するしかない・・・】
−−−いやいやいや!メモして行動するなど認知症でもなく当たり前のことでしょうが!?わたしゃ50代からメモは手放せませんよ!
認知症の苦しみが分かりやすく映像で描かれている。21世紀はこの作品や『頭が消えていく』のように“老い”がテーマの作品が増えていくだろう。


○『長い道のり』(2016)――エジプト。4分。2D。
珍しいエジプトアニメ。
【青年が結婚し、妻と子供を背負って歩み続け、子供が旅立っていくまでの道のりを描く。】
人生の道のりを描いているのだが、相変わらず「人間の人生=男性の人生」だ。
しかも一昔前の人生観だ。もはやこんな理想的な核家族的人生パターンは望めない。ニートの息子を一生背負いながら老いて死ぬんじゃないかと、見ていて心配になってしまった。
もしかしていまのエジプトでは、核家族が新しいのかもしれない。
ただ表現には新し味が無く、同じ人生を語るにしても女性の一生を描く『ちゅんちゅん』はアニメの表現として観るべきところが多かった。


○『籠(かご)』(2017)――インド。13分。人形アニメ。
受賞歴多し。これがグランプリだと思った。
制作スタッフの方々は休憩時間中ずっとロビーで取り囲まれて質問に答えていた。
私も訊きたかった。これは今現在のインドの話なのか? それとも『泥の川』(1981)のように、過去の貧しかった時代を振り返って語ったのか?と。
物語は――、
【道ばたのバラックで暮らす夫婦と幼い娘の家族。昔は裕福だったのか、それとも名誉ある家系だったのか、父親は大切にしまってある金時計を取り出しては一人で眺めて過去を懐かしんでいる。
両親が働きに出かけた後、少女は金時計を見ようと取り出すが、壊してしまう。父親には言えず、少女は籠を編んで街路に売りに出て、金時計の修理代を稼ごうとするのだが・・・】
インド映画界は上り坂だ。――というのは、60年代の日本のようにいまインドでは若年層の人口ボーナスが始まっている。これから消費社会に突入し国は豊かになっていく。そして貧富の差も激しくなる。
この作品はおそらく現在の一般市民を描いたものなのだろう。
高度成長期の日本も毎日喰うのに必死だった。畳が腐って傾いているような長屋の一家でも、みな力を合わせて勤勉に働いていた。それでも頑張れたのは明るい未来が待っていると信じられたからだ。
この作品ではどうだろうか?
父親は少女が勉強するのを誉めているが、身分差別と性差別の激しいインドではいくら勉強しても少女が高給取りになるのは難しい。それでも勉強を奨めるのは、父親が教養ある層の出身なのだろう。
ラストは過去を振り返らずに、父親が少女の肩を抱くシーンで終わる。それは諦めか?それとも未来への決意か?
社会的メッセージが強い作品。


まだまだアニメフェスは続く。
(続く)
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