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2018年01月28日00:21

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『ベロニカとの記憶』

 『めぐり逢わせのお弁当』という映画も単純ではないかなり変わった物語であった。誤送された手作り弁当が出逢う筈のない男女を結びつけるが、その二人を素直に会わせたりしない。

 その監督が撮った今作もまたそう素直ではない。ロンドンのある朝、中古カメラ店を営み独り暮らしをする初老の男(ジム・ブロードベント)のところに手紙が来る。学生時代の元カノの母親が亡くなり自分宛の遺書があったという。その内容というのが、何故か学生時代にウマが合った友人(故人、男)の日記を譲るというのだ。えっ?てなもんで、何で自分宛に?それも友人の日記?平凡だが平穏な人生を送ってきた主人公は戸惑う。彼には別れた妻(弁護士)との間に妊娠中の娘(独身)がいるが、元妻とも娘とも至って仲が良い。遺言はそんな彼の人生に波風を立てようとしてはいたが、だからといって物語を根底からひっくり返したりはしないのだ。

 しかし元カノ(といっても彼女も初老)は母の遺言を実行しようとはしない。それは何故か?日記とは?主人公は気になって元カノと再会しようとする。思い出す青春の日々。しかしその思い出も所々自分の思いのままに書き換えていることに主人公は気付く。元カノはなかなか会ってくれない…
 何とか元カノと再会しても彼女はつれない態度で謎は解けなかったが、やがて彼はこれまで気付かずに生きてきた或る重要な事実を知ることになる。それは思いもかけない、しかし思い当たる節がないでもないことであった。自分と元カノと友人、そして元カノの母親…

 これは謎解き(が主体の)物語では決してない。主人公の主観(記憶)は再現されるが、元カノの主観の方は最後まで映像として描かれることはない。元カノがいかに苦難の人生を送ってきたのか、それは主人公と同様に観客も想像しなければならないのだ。

 ということで、元カノ役のシャーロット・ランプリングの出番は実は多くないのだが、何も語らずとも逆に多くのことを物語っている。これぞ映画である。


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