あまりいいタイトルだとは思えない。別にヒロインは嘘や嘘つきを愛しているわけではないから。ここは『灯台めぐり 私の知らないあなた』とでもしたほうがよかった。
あの震災の日、見ず知らずの自分を助けてくれた男に惹かれ、彼と同居するようになったヒロイン。世の注目を浴びるキャリアウーマンだが、勝ち気で自分勝手。そんな彼女が男が突然倒れて意識不明になったことにより彼の身元が偽造されていることを知り、興信所所長の協力を得ながら男の正体を探しに瀬戸内を旅する。男が密かに書いていた自伝めいた小説を手掛かりにして…。
長澤まさみ、高橋一生、ヒロインのいわばバディとなる所長役の吉田鋼太郎、それに思わぬ好演を見せるDAIGOと川栄李奈。描かれなかった部分にこそ描くべき要素があったように思える(※)し、にも関わらずいささか説明過多(今の邦画の大半がそうではあるが)だったりするのだが、出演者の演技で観るに足る作品である。
(※)これと好対照なのが『ベロニカとの記憶』である。そちらでは謎というべき部分は何ら具体的に描いていないのだが、描いていないことによって観客に想像を促し実に余韻と品のある作品になっている。つまり、何も描かないといけないと言っているのではないのだ。いかに観る者に描かざる部分を感じさせられるか。
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