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2017年11月19日23:36

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『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』


 詩に向いている言語、向いてない言語というのがあるような気がしている。意味ではなく「響き」の問題。当然漢詩は中国語だし、和歌は日本語なのだが、ここでは現代の口語が前提。そうすると、フランス語やイタリア語というイメージなのだが、深淵なる情愛を掻き立てられるということになると、俄然スペイン語だ(という感じがする)。

 20世紀有数の詩人であり、チリの政治家、運動家でもあったパブロ・ネルーダ。彼が欧州に亡命していた時期、イタリアの小さな島に身を寄せていた史実に基づいて作られた映画が『イル・ポスティーノ』である。フィリップ・ノワレがネルーダを演じていた。(この辺、今回の作品を観るまでは思い出せなかったけど…(^_^;))


 チリ共産党員の上院議員であったネルーダがその活動を非合法化されたため、支援者を頼り家を捨てて妻とともに国内に身を潜る。大統領の命によって彼を逮捕すべく彼の跡を追う刑事の男がいた。この映画の真の主人公は、一見有能なエリートのようで屈折しまくった滑稽なこの男である。彼の語りによって物語は進む。表面的にはネルーダのことを侮蔑しているようでいて内心彼への関心で頭はいっぱい。そんな追っ手の心の内を知ってか知らずか、気まぐれで我がままで自由なネルーダは彼の目につくように自分の書いた詩を残していく。刑事はネルーダの詩に惹かれ、ストーカーのように地の果て、国境の雪山までも彼を追う。二人は共鳴していた…

 劇中、ピノチェトという名の刑務所長がチラッと登場する。ずっとのちにこの男はクーデターを起こし独裁的な大統領になるが、その騒乱の中、社会主義政権下で駐仏大使となりノーベル文学賞を受賞していたネルーダは死に追いやられることになる。毒殺されたと云われているが、これはまた別の話。
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