今作のオリジナル脚本(2010年の城戸賞最終ノミネート作)を書いた山崎佐保子は1984年生まれ。日本映画学校(当時)の卒業生で、つまり荒井晴彦や天願大介の教え子ということになる。下世話な言い方をすると、荒井さんの秘蔵っ子のひとり(^_^;)。元々は監督志望だそうですが、CFディレクター畑の森ガキ侑大(長編初監督)によって映画化となった。
またこれも北関東あたりが舞台かと思ったら、ロケ地は(監督と縁のある場所らしい)九州は人吉(但し方言は一切使われていない)。道理で陽が長いはずだ。
実は観る予定はなかったのですが、ここには書けない理由(^_^;)で、観賞。地方の田園部と都市部との境目あたりに暮らす、お世辞にも成功しているとはいえない、一族同士でも仲がよろしくないバラバラな老若男女たちが、(ヒロインの)祖父の葬儀のために否応なく集まってのドタバタ悲喜劇が展開される。とても幸せには見えない、でも不幸かというと多分そうではない。だいたい、残された痴呆症の老母(祖母)を介護することなく、即施設に入れられるんだからなあ。冷たいようだけど、運がいいのだ、この人々は。
映画というジャンルに於いても「メメント・モリ」というのは重要なテーマであり、今作でもヒロイン(演・岸井ゆきの)は祖父の急逝を受けて改めて死を考える。それがすぐインドに結びつくあたり、いささか浅く安直である。「祖父の訃報を聞いたとき自分がセックスしていたことに罪悪感を感じる」なんて、今更書くなよ。
他の方から云われてああそうだと思いましたが、フランスあたりの農村を舞台にした家族映画にこんな感じのがあったような気がする。今作では1シーン、花火の下を親族たちが仲良く行進するというヒロインの夢想が挿入されているが、あのくだりをもっと長く出来ればなあ。
水野美紀が出てきた途端に、映画の雰囲気がガラッと変わるのはさすが。この監督、若手も含め役者の使い方はよく知っている。
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