このレベルの演奏を、ずっと揃えてるんだもんなあ、このオケ。脱帽。
大阪 ザ・シンフォニーホール
センチュリー第221回定期演奏会
デイヴィッド・アサートン指揮日本センチュリー交響楽団
(コンサートマスター 荒井英治)
ヴァイオリン独奏 郷古廉
ハープ�睫� 麗音
メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」 作品26
ブルッフ:スコットランド幻想曲 作品46
ディーリアス:劇付随音楽「ハッサン」より間奏曲、セレナーデ
エルガー:創作主題による変奏曲「エニグマ」 作品36
ソリストアンコール
17日（金）J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番よりラルゴ
18日（土）イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第5番より第1楽章
ぐすたふ君は、この郷古さんというヴァイオリニストの音楽のありようが大好きで、震災の後で聴いた厳しい厳しいストラヴィンスキーに惹かれてからというもの、機会さえあれば、と思って足を運んでいるんです。だから、今回もブルッフだけは2日とも聞かせてもらいました。
彼の音楽の特徴は、アンコールの選曲とその演奏ににも端的に現れているように、一言で言ってしまえば「求道的」な佇まい。そこにあるのは、どこまでも澄み切った精神性をたたえるバッハと、野獣が如く攻撃的にいどみかかるイザイ。
それは、ブルッフでも一緒で、意図的に抑えたヴィブラートで始まる冒頭から、名技性が炸裂する終楽章まで、その局面局面で最上の音が鳴らされて行く。彼が見せるその姿勢は、眼光鋭いその風貌とあいまって、まるで舞台上のサムライのような印象をあたえる。
正直なことを言ってしまえば、初日の最初から2楽章までは楽器の鳴りが今ひとつのように感じられて、郷古廉がこんなもんであるわけないだろう、と思っていたのだが、3楽章で立ち現れるのは、内側から突き上げるが如くの熱いパッションを乗せた音。それを聴いてからは、ああやはり郷古さんだ、と深い感慨にとらわれましたね。あとは、ただただ彼の音楽の見事さに身をまかせるのみ。
その一方で、指揮をするアサートンさんの音楽はまた、極めて懐の深いもの。なんとも「渋い」「味わい深い」音楽は、長いこの人のキャリアの中で熟成されてきたものなんでしょう。「本当の本物」、という以外の言葉が見つからないくらい。これぞ、英国紳士、「グレート・オールド・マン」。
例えばそれは、「フィンガル」でみせた、ええっと思うくらい遅い出だしから始まって、だるいなあと思っている不遜なぐすたふ君の思いなどにお構いなくす進む音楽の流れが、いつの間にか熱狂が如くの高揚のなかに終止する、という憎いばかりの構成であるとか、「エニグマ」でみせた、大きなダイナミクスの変化と振幅の大きなアゴーギグが、結果として大きな大きな音楽のうねりをつくり、そこに作曲家の精神の存在を感じせしめるに至るところだとか・・・「音楽を突き抜けたもの」を感じる演奏に接するとき、ぐすたふ君は深い感銘にとらわれます。
そしてそれはなによりも、過不足なく音を鳴らすオーケストラがあってのこと。それを可能ならしめる、センチュリーの高度な演奏能力に、ただただ拍手。
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