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2017年11月05日23:50

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『月と雷』 (10月鑑賞)


 禍福は糾える縄の如しというが、何が不幸で何が幸福なのか分からないのが人間、人生というもの、らしい。男女の関係、家族…

 例えば、私はよく思うのだが、松田優作が共演者の熊谷美由紀と浮気をし、糟糠の妻であった松田美智子と離婚した。前妻・美智子からすると、夫を寝取られたわけである。その際は大変なショックだったし優作の当時のマネージャーにもつらく当たった(と、その元マネージャーだった宮前さんから直接伺った)。しかし、優作が不倫に走らなければ、松田龍平も翔太もこの世に誕生することはなかった。不幸だったことの延長線上に別の幸福がある。この逆のこともあるだろう。

 彼女の小説自体をあまり読んでいるわけではないが、角田光代はそういうことを書いている作家ではなかろうか。幸福と不幸は背中合わせですらなくて、光の当たり加減で見え方が変わってくる。自分では滅多にそのことに気付けるものではないが。


 かつてヒロインの家に息子を連れて現われヒロインの家庭を破壊した女。日本中を転々とし各地の男に世話になって生きているという彼女に対して憤りはあるが、一方ほんの数ヶ月その母子と暮した日々が懐かしい。大人になったそんなヒロインがその息子と再会し結ばれ、結局その女のような生き方を選択するのではないかという予感を感じさせる、そんな物語(原作ではその辺がもっと色濃く出ているようだ)。

 『海を感じる時』(原作・中沢けい、脚本・荒井晴彦)、『花芯』(原作・瀬戸内寂聴、脚本(荒井の弟子の)黒沢久子)と文芸ものづいている安藤尋だが、今回は別の制作会社で脚本・本調有香(『人のセックスを笑うな』)での演出となったが、ところどころユーモラスな感じを自然な長回しで撮っていて成功している部類ではなかろうか。

 初音映莉子の代表作になった、かな?(『ミツコ感覚』観てないけど)。仕掛ける側ではなくて受け役だから難しかったに違いない。草刈民代の役(その転々とする女)は20年前だったら倍賞美津子が間違いなく演じてた。

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