フジコヘミング&ロシア国立交響楽団パート1
まずは天神の新パルコにてスープストック東京で「ゴッホの玉葱スープ」を飲む。
それから平和楼の特製チャンポンで腹ごしらえしてからアクロス福岡へ。
会場に入ってレストルームの前の長蛇の列に並んでいるとき、タクシーで訪れる多くの観客を目撃。
そのなかでも黒塗りの車が到着し、執事が現れ、「ではいってらっしゃいませ」と見送られている老夫婦が目立った。
会場に入ると、天井のシャンデリアが美しい光を放ち、木目調の壁を美しく浮かび上がらせている。
この日のために用意したオペラグラスを片手に2階席におさまる。
ロシア国立交響楽団の音合わせの弦の響きや管楽器の音が胸に
ストーンと落ちてきて
アア、演奏会に来たのだと実感する。
力強いヴァレリーポリャンスキーの指揮にのっての
交響楽団のなだらかな調べに
うっとりとなる。
フジコヘミングが登場したとたん、
割れるような拍手が巻き起こった。
たっぷりした金色のネコみたいな感じの女性だった。
白いフリルのブラウスに黒いレースで後ろがゾロリと長いワンピース風のものに銀色のパンツを重ね着していた。
肩にはスモーキーなレッドとグリーンの織り交ぜ模様のキラキラしたショールをななめがけに巻いている。
銀色の豊かな髪には大きなリボン。
そして銀色の靴。
仕草もうんと優美。
そして彼女がグランドピアノに触れたとたん、
世界が一変したように感じた。
その柔らかなピアノの音を何と形容したらいいのか。
私の隣りの眼鏡をかけた女性と斜め前の席の女性二人が
ハンカチを取り出して眼がしらをおさえている。
そういう感情のほとばしりが私は好きだ。
とても綺麗な涙と感じるから。
気持ちのトゲトゲした部分がフジコヘミングのピアノの音で
たちまち削られて、
なめらかな丸みを帯びてくる感じ。
いつも聞いている彼女のCDの百万倍美しい音色だった。
想像を超えた優しいピアノの音だった。
情熱こそがひとの心を動かすという実感を強く持った。
彼女の思い入れのあるリストの「ラ・カンパネラ」では
人生の様々なシーンでの鐘の音が聴こえてきた。
フジコヘミングを大好きな人々は
きっと彼女の平坦とはいえない道のりも
人生観も
全てを統括したところの
ピアノの音に惚れこんでいるんだなあと
感じた。
ログインしてコメントを確認・投稿する