mixiユーザー(id:3661937)

2017年09月23日09:21

51 view

マスターができるまで 久々 1402

応接間のソファーに腰をおろしたナツコとナツコの母親は憔悴しきった顔をしていた。
二人と向き合う形にすわっている父も
『ふーん』
と言ったきり腕組みを解こうとはしなかった。
中腰になり入り口の脇から覗き見をしていた俺に、茶菓をもって来た母が
『また覗きやこしとる
あっちへ行っとりなせ』
と言った。
しかし事はシゲイチの問題だったので、そう簡単に引き下がるわけには行かなかった。
俺が
『じゃってシゲの事じゃがな』
と言うと、母は
『それはそうじゃけど、、
カサハラさんはアンタにじゃのうてお父ちゃんに相談に見えられたんじゃ
アンタやこがどうこうしてもどうにもならんでしょう』
と言った。
ナツコが顔色をかえてやって来たのはシゲイチの体の事であった。
いつになっても発熱のおさまらないシゲイチであった。
俺が見舞ってからでも数日が経過していた。
そんなシゲイチが、今日の往診のさい、掛かり付けの医師から、胸部から雑音が聞こえていると言われたのであった。
昨年、シゲイチから見たら父親である人を、やはり、30過ぎの若さで、胸の病でなくしたばかりのカサハラ家にしてみたら,胸部からの雑音という言葉は、恐怖以外の何者でもなかったのである。
母親が
『先生、どこか大きな病院で見てもらうわけにはいきませんでしょうか
今の先生を疑ういう訳ではないですが、何ぶん、ご老体で、、、
しかもどこかを紹介して欲しいいうたら
「わしの見立てに疑問でもあるんか」
言うて不機嫌になるんです、、』
と言った。
今なら「セカンドオピニオン」で当然のはなしであったが、当時は、田舎であればあるほどこのような事は人間関係を複雑にする元として、嫌われていたものであった。
とかく不便なものであった。
父は
『〇〇先生ですか、、、、』
と言って腕を組みなおし
『ワシも思いつくとこがねえですなぁ、、』
と言った。
母が
『どうぞ』
といって茶菓をさしだすと母親は
『おくさん』
と言って目がしらをおさえた。
ナツコが
『おくさん
気を使わんでください』
と言った。
母は
『カサハラさん。
まだ難しい病気と決まったわけじゃないんじゃから
そがに取り乱さんと、、、』
と言った。
俺が隙間から
『取り乱すわ
乱すな言うほうが無理な話じゃ』
とひとり言を言った。
その時、誰かが俺の背中をつついた。
驚いて振り向くとリエがたっていた。
リエは可愛らしい寝間着を着ていた。
俺が
『何しとん。
もう寝る時間で
ヒトミちゃんやミドリちゃんはもう寝たんじゃろ』
というとリエはしゃあしゃあした顔で
『ツラ婆さんがうちわであおいでくれとる。
じゃけど、おねえちゃまよりツラ婆さんのほうが先に寝てしまったわ。
しかたないからおねえちゃまがお婆さんに掛け布団かけてあげた。
お婆さん、イビキかいて寝てる。』
と言った。
俺が
『ツラ婆さんだきゃ
やくにたたん』
と言いかけた時
『おうそうじゃ』
と言った。
そして勢いよく応接間の扉をあけると
『お父ちゃん』
と父を呼んだ。
シゲイチの母親が
『ありゃ
古谷くん
おこしてしまったかいな』
と、そして母が
『あんた!』
と、二人同時に言った。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する