トランプはビルマ問題でオバマのレガシーを潰せるか？

Washington Post紙がニュースレターでトランプのオバマ潰し材料の有力候補として、ミャンマーのアウンサン・ス−チー政権擁護の見直しを推奨しています。
概要ご紹介します。長いですがご参考まで。
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オバマ元大統領の業績をトランプ大統領が全て潰したいと願っているのは周知の事実だが、オバマ・ケアーもDACAもパリ条約もイランとの妥協も潰すことが出来ないでいる。
だが、余り非難を受けずにオバマの外交成果を覆すことができそうなホット・スポットが現れた。ビルマだ。（訳註：アメリカではMyanmarでなく昔からのBurmaに固執しています）

昨年以来ビルマでは軍事政権から民主主義国家へ変身する姿をアメリカの政治家たちは一様に肯定的な評価をしてきた。オバマ政権はかって孤立状態であったビルマへの制裁を解除し、ビルマからの輸入を一部無税にする特別措置まで行った。
昨年オバマは「かっては悪い方向へ傾いていたビルマから、いまや良いニュース・ストーリーが届いている」と称賛した。

この民生転換への主役は、もちろん常に拍手喝采の的でノーベル平和賞に輝くアウンサン・スーチー氏である。昨年4月には国家主席顧問の地位に就き、同国の歴史で最も強い権限をもつ新しい地位を手にした。

ところが、時のたつのは早いもので、今やビルマから出て来るニュースは良い話しではない。
かってなかった大量の難民が発生しているのだ。37万人のイスラム教徒少数民族ロヒンギャの難民が、Rakhine州でビルマ政府軍の攻撃に遭い隣国バングラデッシュへ殺到しているのだ。12日には政府軍による非合法の殺人や虐殺事件のニュースが大量に流れ、国連人権委員長は「典型的な民族浄化だ」と非難の声を上げている。

スーチー氏を始めとする政権側は「イスラム・テロ集団の掃討作戦だ」と主張する。ロヒンンギャ族は1982年に全ての市民権を剥奪され、現政権からも邪魔なBengaliと差別されている。スーチー氏は、ロヒンギャの窮状を放置し、Rakhine州の事件では国軍の行動を抑えてもいない、と国際社会から一斉に非難を浴びている。

一方バングラデッシュは難民の流入に立ち往生している。今やビルマ国境を越えて同国側に流れ込んだロヒンギャは70万人に登る。
11日にはバングラデッシュの外相が「大虐殺がビルマ側で起きており、ここ二週間に何が起こったか、国際裁判所の調査を要請する」との声明をだしている。
また、「大量のロヒンギャ難民を抱えることは耐えがたい負担であり、国際社会がビルマ政府に強い圧力をかけてあの暴力行為を即刻辞めさせてほしい。われわれに解決できる問題ではない。ビルマ政府が起こした問題なのだからビルマが解決してあの難民
たちを連れ戻すべきだ。」と語っている。

一方スーチー支持者たちの言い分は、彼女はいま非常に難しい立場に追い込まれている。国民の多くがロヒンギャの弾圧を支持している中で、あの厳しい政府軍との関係も維持せねばならぬ立場だというのだ。

オーストラリアの元首相Rudd氏も「危ないことだが、マスメディアの解説者の多くは大事なことを忘れている。あの国の憲法はいまでも軍の幹部に政府をコントロールする権限を与えているということだ。
秩序を正さねばならぬと軍部が判断すれば、いつでも合法的にクーデターを起こすことができる。Rakhine州の現状に関して軍部が多くの非難を浴びている中で、スーチー氏は、ロヒンギャの人たちに手を差し伸べねばならぬ一方、芽生えたばかりのビルマの脆弱な民主主義を破壊する口実を軍部にあたえてはならないとう、非常に厳しい綱渡り状態に追い込まれているのだ」

では、ビルマの軍部にどんな圧力をかけることができるのか？オバマは制裁解除という価値あるご褒美を与えた。だが、既に山のように抱えた問題や危機的状況で頭がいっぱいな今のトランプ大統領に、ロヒンギャ問題で何か積極的な行動を期待するのは無理だろう。2012年から16年にかけて駐ビルマ大使を務めたDerek Mitchell氏も「以前からもそうだったが、今のホワイト・ハウスもビルマに対して強い関心を持っているとは思えない」と語っている。

長い沈黙の末に、ホワイト・ハウスが11日に出した声明は「ビルマの治安当局は法律を守り、暴力をやめ、全ての国民を排除する行為をやめるよう希望する」であった。
何万という人たちが避難を余儀なくされている現状なのに、もっと厳しい言葉と行動が求められているだろうに。