マーベル・シネマティック・ユニバースへ接続し、
同時にジュヴナイルを全面へ押し出す本作。*1
NYの高校へ通うピーター(トム・ホランド)はスパイダーマン。
少年はもっと大きななにかを成し遂げたい。
親友のネッドに正体がバレる。
校内で想いを寄せるリズが気にかかる、と、
少年らしくもヒーロー活動へといそしむピーター。
だが人生は空飛ぶヴィラン、バルチャーの出現で一変する。
本作のピーターは最初からスパイダーマン。
特別製スーツはスタークのお手製だ。*2
そうしてアイアンマンとアベンジャーズチームに接点を得る。
「セルフィを撮影する」「動画で活動記録を残す」「承認欲求」
とミーハーなピーターは、いまいるティーンの少年そのままで新鮮だ。
このルーキーヒーローが、どう最も古き隣人のヒーローへと変化するのか?
「ベタ」な物語は、軽薄な少年が最後に決意を得る場面で引き締まる。
家族を最優先に思い裏稼業を行う、
バルチャー/エイドリアン・トゥームス(マイケル・キートン)の存在もユニーク。
「父親」の彼が、ある時点でピーターを二律背反な状況へ落し込む。*3
「父親」といえば、本作はトニー・スタークとスタークの部下ハッピーを、
ピーターの2人の「父親」のようにあつかう部分も注目だ。*4
真っ二つにさける船をスパイダーウェブでつなきとめる。
上空でのバルチャーとのスレスレの戦いとアクロバットな活劇は十分。
リブート第1作目としては上々の滑り出しだ。
※1 スパイダーマンはマーベル・コミック最古参のヒーローだ。サム・ライミがシリーズ第1作目を監督した2002年当時、まだマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は開始されておらず(MCUの開始は2008年の『アイアンマン』から)独立した映画であった。シリーズリブート第2作目「アメイジング・〜」は打ち切りとなったため、またまたスパイダーマンのMCU登場は未定に。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の登場を経て、こシリーズリーブト第3作目で、ようやく正式にMCUへと組み込まれた。
※2 シリーズリーブト第3作目でもピーターは特殊なクモにかまれてスパイダーマンになったとされる。だが、そのオリジン(起源)部分は今回省略している。
※3 トゥームスは家族を持つ。当然だれかの“父親”であって、このしかけと真相を開示する場面と構成はなかなか上手い。
※4 スタークはヒーローになりたいとはやり、無茶無謀なピーターを叱責する。そのとき彼を叱る自分に「父さんみたいだ」と台詞をもらす。この台詞は自身が当時、父親のハワード・スタークに叱責されたことと、自分の父性への思わぬとまどいかもしれない。この疑似家族――父と子の関係は、今後のMCUで重要な要素になるかもしれない。
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