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2017年08月30日05:26

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声劇台本を作成しました!「それがどんなに普通でも。」後編。

(画像提供:元・心羽音(趣味活動アカ・佐々木ちくわ(twitter @IDOLiSH_777))





「それがどんなに普通でも。」(後編。)





※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




前編→ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1962351396&owner_id=24167653


※ 続編ができました。「なんでも良いよ。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979893755&owner_id=24167653
もし良かったら併せて読んでくださると嬉しいです。





想定時間:21分。


想定人数:5人(男:女=3:2)。


パソレット…??歳。男性。歴史学者になりたく、高度な専門教育を受けて来たが、挫折。一般企業に就職した。

たより…18歳。女性。劣悪な環境で過ごしていた少女(青女。)。劣悪な環境から逃げるため異世界にやってきた。

砂潺(させん。)…21歳。男性。たよりの事を探す為に異世界にやってきた青年。たよりの兄。

(アイロフォン…??歳。男性。パソレット、ファクシンと同じ会社に働く若き精鋭。台詞なし。)

ファクシン…??歳。男性。パソレットの学生時代からの後輩。パソレットと同じく歴史学者になりたく、高度な専門教育を受けて来たが、挫折。パソレットと同じ企業に就職した。

シュリンター…??歳。女性。パソレットとファクシンが学生時代に師事していた歴史学者。




舞台:

 異世界。基本的に、たよりや砂潺基準で「あまりにも優しく親切。」と思うような事がこの世界では「普通。」とされているように、社会レベルが非常に高い。

 共通語は統一され、戦争もこの数百年起きていない。この世界での「国」はただの行政区画であり、「国」の違いによって対立や差別等は特にない。

 また、魔法が普通に存在する世界であり、その存在を前提に社会が成立している。その代わり科学水準はそれほど高くない。




本編:

シュリンター「はぁ…。砂潺くん。このファイル、確認済みの方に入れておいて。」

砂潺「はい…。」

シュリンター「…ちょっと流石に堪えるね…。」

砂潺「すみません、俺の問題なのに大した手伝いができなくて…。」

シュリンター「全くだよ。…運が悪いのか方法が悪いのか、全然成果が出ない。」

砂潺「そろそろ、妹が来てから5週間。そして俺が来てから2週間…。」

シュリンター「…騒ぎを大きくしたくはないけど、こうなったらポスターでも貼るかい?」

砂潺「どうしましょう…。今の方法で見つからなくて疲れてるのはシュリンターさんなので…俺がやり方にどうこう言うのは…。」

シュリンター「…お馬鹿さんめ。誰かの為なら、もっと我侭言って良いんだよ。もうちょっと今の方法で頑張ってみるさ。…ああ、そうだ…。ちょっと気分転換がてら、私の元教え子を食事にでも誘ってみるかな。」

砂潺「元教え子?」

シュリンター「いや、そう遠くない場所で2人の元教え子が働いているんだ。2人とも途中で学者の道をあきらめたわけだが一応、私と同じ道に足を突っ込みかけた子達だから。…ひょっとしたら何か情報を持っているかも知れない。」

砂潺「俺も行きます。」

シュリンター「いや、よほどきちんと勉強した者以外は君の言葉を聞いても『今時珍しい、元少数民族か何かで共通語が喋れないのかな。』くらいにしか思わないだろうけど、反対にきちんと勉強した者からすると『明らかに異質な言語』と分かってしまう。」

砂潺「騒ぎになるおそれがある、という事ですか…。」

シュリンター「そう。それに、気分転換が主(しゅ)なんだ。元教え子と談笑するのに君が居たら気分転換にならないよ。」

砂潺「すみません…。」

シュリンター「よし、ちょっと意思を飛ばし…あ、そうか。…彼らは意思疎通魔法は使えないから電話しないといけないのか…。うん、面倒臭い。私は少し休む。電話も捜査の続きも、あと次の発表会の為の研究も後回しだ。」







パソレット「たより。昨日に続いて今日もになってすまないが、昔世話になった恩師のシュリンターさんに呼び出された。ファクシンも呼んで…世間話が主だが、大事な話もあるらしい。」

たより「そっか…。」

パソレット「すまない。翻訳魔法については、とりあえず自主練習に必要な事を思いつく限りまとめておいたから、良かったらこれを見て自主練習していてくれ。…できるだけ遅くならないようにするから、帰ってきたらちゃんと二人で練習しよう。」

たより「うん。ありがとう…。でも大事なお話なんだから、遅くなっても大丈夫だよ。遅くなる場合に電話してさえくれれば…。」





シュリンター「どうやら今夜が一番都合が良いそうだ。急いで準備をしなければ。」

砂潺「わかりました。…俺はその間に部屋の清掃でも」

シュリンター「やめなさい。私にはこれが一番落ち着くんだと言っているでしょう。…そうだね。砂潺くんは妹さんと会った時のために自分の気持ちを書き出すなり何なりして、何を言うかとか整理してなさい。」

砂潺「…はい。」







パソレット「ただいま。」

たより「おかえりなさい。そんなに遅くならなかったね。」

パソレット「…ああ。」

たより「どうしたの?」

パソレット「…いや。そうだな…。ああ、そうだ。冷静に、普通に、ごくごく普通に考えれば答えなんて簡単な事なんだ。」

たより「え、何がどうし」

パソレット「俺は………怖い。」

たより「…え?」

パソレット「…ちゃんと順を追って説明する。まず、恩師がたよりの写真を持っていた。曰く、たよりの兄を名乗る男が異世界から探しに来たそうだ。…例によって言葉も通じないで苦労していたところを、恩師に助けられて今に至っているらしい。」

たより「…砂潺(させん)さんが。」

パソレット「それで俺やファクシンを含めた翻訳魔法を使える人間に聞きまわって手がかりを探っていたらしい。…が、たより本人の意思次第の話だろうと考え、あの場はとぼけておいた。ファクシンも俺に合わせてくれた。」

たより「そうなんだ…。どうしよう…。」

パソレット「その兄…砂潺(させん)さんはどんな人なんだ?」

たより「…私と違って親から気に入られていて、好きにさせてもらってる人だった。…何かと親が私にひどいことを言ったりしたりする時、引き合いに出されてて…。それで、外ではとっても立派に色んな事を成し遂げて、みんなから慕われていたりしていたみたいだけど、私には何も助けてくれるような事はなかった。」

パソレット「そうか…。」

たより「でも。」

パソレット「…。」

たより「親がどんなに彼にそれをうながしても、色んな方法でごまかして絶対に自分で私にひどいことはしなかったし、言わなかった。」

パソレット「…。」

たより「砂潺さんは私を連れ戻そうとしてるの…?」

パソレット「いや、安否の確認が第一で、できれば少し話くらいはしたいといった具合だそうだ。」

たより「どうしよう…。」

パソレット「たより。」

たより「うん?」

パソレット「どうしたものか。たよりが考えるべき点は整理すると3つ。1つ目は、そもそも俺の恩師という存在を信じて良いのか。2つ目は、兄である砂潺さんを信じて良いのか。3つ目は、そもそも帰るか残るか選択を保留にするか。」

たより「そうだね…。でも、3つ目は…残りたいよ。ちゃんともっと自分でできること増やして、今みたいな迷惑ばかりかけてないで…それで、残りたい…。仕事もちゃんとするから…。」

パソレット「…住む家はどうする。」

たより「うん…。いつかはどうにかして自分で借りたり…それこそそういう魔法を覚えて造ったりできないかな…。」

パソレット「…そうか。」

たより「うん…。あとね、1つ目は、パソレットが信じて良いと思った人なら私も大丈夫だよ。ファクシンさんもそうでしょ?」

パソレット「…そうだな。まあ…ファクシンと恩師を比べたら、ファクシンの方が明らかに、俺が知っている部分も多いし信頼の度合いも上だがな…。だからこそこうして悩んでいるわけだ。」

たより「そっか…。それで、問題は2つ目…。」

パソレット「俺には砂潺さんの事は全く分からないからな…。たよりの判断に完全に任せるしかないだろう。」

たより「…どこに居るとかは全部かくしてもらって、私が一応元気にしていることと、この世界で生きて行こうとしていることだけ伝えてもらうのは…。」

パソレット「それも選択肢のうち一つだ。」

たより「…。」

パソレット「…。」

たより「彼はこの世界に住むつもりなの?」

パソレット「いや、目的を達したら帰るつもりらしい。」

たより「…なら、二度と会えないかも知れないんだ…。」

パソレット「そうだな。」

たより「…。」

パソレット「今すぐ答えを出す必要はないよ。」

たより「うん…。ごめんね。ちょっと疲れたから今日はもう寝てくるね。お風呂はもう沸いてるから…。」

パソレット「ああ。」
















たより「おはよう…。」

パソレット「…ん…おはよう。」

たより「朝ごはんもうできてるよ。」

パソレット「ああ…ありがとう。早速食べに行くよ。」

たより「…。」

パソレット「…。」

たより「…。」

パソレット「…おいしいよ。」

たより「そっかぁ…。良かった。」

パソレット「…。」

たより「あのね。」

パソレット「どうした。」

たより「砂潺さんに直接会って、お別れのあいさつをしようと思う。」

パソレット「…そうか。」

たより「だから、恩師さん…シュリンターさんに、そう伝えて欲しい。…もちろん、みんなの都合が良い時に。」

パソレット「わかった。」

たより「せっかく心配してくれてるのに、ごめんなさい…。」

パソレット「いや。…たより。」

たより「どうしたの?」

パソレット「あのな。俺は本音を言えば、たよりにはあまり他の人と関わって欲しくなかった。」

たより「うん…。心配してくれてるの、分かってたよ。」

パソレット「…それは本当だ。…それも本当だ。でも違う。それだけじゃない。…たよりは、俺が…して当然な程度の事をしただけで、とても喜んでくれて。…でもな。以前から言っているだろう。俺がたよりにしている事なんて、ごく普通の事だ。たよりの世界ではどうか知らないが、この世界での常識に当てはめれば全部、して当然の親切なんだよ。」

たより「う、うん…。」

パソレット「だから…たよりが他の人と接すれば、当然、他の人…異世界から来た人間だから等と言って妙な勘繰りをする者も居るだろうが…そういった輩以外は…特に、俺が信頼した人なら…きっと、たよりに対して親切にするんだ。ファクシンは勿論、恩師も…。…俺だけが特別じゃなくなる。俺が一番じゃなくなる。それが怖い。…そんな風に思っていた。」

たより「…そうなんだ…。」

パソレット「悪い。なんで俺はこんな事を口に出しているんだろうな…。大方、たよりなら、こんな事でも…正直に言えば許してくれるなどと思って甘えているんだろう…。」

たより「そんなにまで…好きでいてくれてうれしいよ。それに…この前、一緒にスーパーに行こうって言ってくれたでしょ。」

パソレット「…そうだったな。」

たより「自分だけの物にしたいって気持ちもあったのに。」

パソレット「…。」

たより「仮にね。パソレットが今までしてくれたことが、この世界ではそれがどんなに普通でも…私にとっては特別なことなんだよ。…ありがとう。」

パソレット「……ふぅ。我ながらに馬鹿な奴だ。俺があんな事を口に出したのは本当は…たよりに、そう言って欲しかったというだけなんだろう。…こちらこそ、ありがとう。」









砂潺「…こんにちは。」

ファクシン「どうも。」

シュリンター「やあ。」

パソレット「こんな寂れた公園に呼び出してすまないが、一応居所が特定されるような事は避けたかったので…。勘弁してくれ。」

砂潺「いえ。当然だと思います。」

ファクシン「…。」

パソレット「ファクシン。居心地が悪いとは思うがすまない。お前が居てくれた方が俺もたよりも少しは安心感が増すんだ。」

ファクシン「…いえ、とんでもないです。光栄ですよ。」

たより「砂潺さん…。」

砂潺「たより。」

シュリンター「妹さんに名前で呼ばれてるの、君。」

砂潺「…お前が居なくなってから…ずっと色々考えていた。何かを言いたいとは思ったものの、お前を追い詰めたうちの一人である俺が今更何を言えるのかとずっと考えていた。」

たより「…うん…。」

砂潺「…助けなくてごめん。…今ここで、元気でいるみたいで良かった。これからも元気でいて欲しい。」

たより「…ありがとう。」

砂潺「ありがとう。…俺からは…これだけだ。」

たより「…あのね。」

砂潺「うん。」

たより「あの道具…勝手に使ってごめんね。」

砂潺「…そっか。」

たより「あなたを許したりもできないし、今でも恨んでる。…お母さんやお父さんが怖くて、そういう気持ちを向けることすらできないから余計に…八つ当たりだけど、多分…あなたに対して3人分恨んでるんだと思う。」

砂潺「…そっか。」

たより「だけど、一応…親が怖くて…自分を守る為には…親の機嫌を損ねないように、私を見捨てて…言いなりになるしかなかったのも、理解はできるし…それでも、私に攻撃するようにって言われた時だけは、何とかごまかして親の言う事聞かないでいたのも…知ってはいる。」

砂潺「…うん。」

たより「ありがとう。…さようなら。」

砂潺「………ありがとう。」









シュリンター「砂潺くん。」

砂潺「シュリンターさん。…何から何までありがとうございました。…何もお返しできず、申し訳ありません。」

シュリンター「…別に良いよ。何度も言っているけど、このくらい、して普通の事なんだから。元の世界でも達者でね。…だけど、もうあんな物騒な物を開発しないでくれよ。」

砂潺「はい。…そうですね。ここまでずっと言いなりになって来たせいでこんな事になったんだ。…今回くらいは親に盾突いて、研究成果を全部破棄するくらいの事はしてやりますよ。」

…。

砂潺「パソレットさん、ファクシンさん。」

パソレット「…。」

ファクシン「…。」

砂潺「本当にありがとうございました。妹をよろしくお願いします。」

パソレット「…どうも。達者で。」

ファクシン「僕はお礼を言われるような事はしてないけど…まあ、してないから、これからするとするよ。」

シュリンター「私も気が向いたら何か手伝ってあげようか。」

砂潺「…ええ。お願いします。それでは。」


…。


パソレット「…たより。」

たより「…うん。」

パソレット「行ったみたいだ。」

たより「…うん。」

ファクシン「…これからどうします?」

シュリンター「そうだね。とりあえず…。この世界で生きていくのに、どんな魔法を覚えたら便利かについてでも、4人で話し合ってみるかい?」

たより「…お願いします。」

ファクシン「そうですね…やっぱり翻訳は最優先で、それ以外では体力回復の類が…。」

シュリンター「あのね。君は習得難度の事もちゃんと頭に入れなさいな。」

ファクシン「あ、確かにそれは…。」

パソレット「」(溜息。)

ファクシン「どうしました?先輩。」

パソレット「…いや。ただ、うれしくなっただけだ。」



完。










(追記)

年下の先輩である元・心羽音(趣味活動アカ・佐々木ちくわ(twitter @IDOLiSH_777)が描いてくれた、二人のイメージ絵を載せました。

とは言えこの子達はあくまで心羽音の抱いたイメージなので、実際の二人がどんな感じの見た目をしているかは皆さんの心に委ねます。

なお、当然のことですが無断使用や無断転載等は禁止します。

心羽音に直接許可を申請するか、もし何か事情があってそれが難しいのなら私を経由して許可を申請してください。

ただ、申請されたとして必ず通るわけではなく心羽音当人の気持ち次第となりますので悪しからず。


そのようなことをする気が毛頭ない方には、この注意書きは大変不愉快な思いをさせてしまうものであることは存じ上げていますものの、この絵がぞんざいに扱われたくないものであるということでどうかご了承ください。
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