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過去作「それがどんなに普通でも。」の続編です。
「それがどんなに普通でも。」前編
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=24167653&id=1962351396
「それがどんなに普通でも。」後編
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=24167653&id=1962351405
配役
たより:女性
パソレット:男性
ファクシン:男性
シュリンター:女性
砂潺(させん):男性
浅葱(あさぎ):男性。22歳。砂潺の同輩。
クコン:不問。??歳。お弁当屋さんの店長。
計男性:女性:不問→4:2:1
※1 文字数の関係で前作登場キャラの説明は前作を参照してください。前作から約一年後となっていますので、年齢も全て+1歳となっています。
※2 一部人物に「−−−−−−−。」という台詞が途中登場しますが、そこは言葉になっていない言葉ですので、例えば「hげjjはあgでゃあえ」等といったように言葉として成立しないように発声してください。
※3 台詞の量は たより4:パソレット3:他の人物の合計3 というくらいに偏っていますので、あらかじめご了承をお願いします。砂潺またはシュリンターとクコン、浅葱とファクシン等、適宜兼ね役を設けて出番の量を調整する事も推奨いたします。
想定時間
35分前後
「なんでも良いよ。」
浅葱「おーい、砂潺(させん)!やっぱここに居たか。ちょっと卒論は休憩にして飯でも食おうぜ。」
砂潺「ああ…浅葱(あさぎ)。少し待ってくれ。とりあえずきりの良いとこまでまとめてから……。……まあ、こんなもんか。」
浅葱「ほら、下の店でハンバーガー買ってきたから好きなの選べ。俺三個でお前二個な。」
砂潺「もう部活も引退したってのにそんなに食べてたら太るぞ、お前?」
浅葱「知ってら。でももうラグビーやらなくなったからっつって、都合良く簡単に食欲が落ちたりはしねえんだよ。お前もだろ?」
砂潺「お前と一緒にすんな。俺は二個も要らねえくらいだ。照り焼きチキンだけ貰うから残り食べるか?」
浅葱「三個も食べたら太るとか言ってた癖して四個目を食わせようとすんな。もう一個食べろ。」
砂潺「それもそうだな。じゃあトマトエッグも貰うか。」
浅葱「……ん。」(食べながら「おいしい」と言いたげに、満足そうにうなる。)
砂潺「……ふぅ。ありがとよ。」
浅葱「……なあお前さ。マジで大丈夫なん?」
砂潺「ん?何がだよ。」
浅葱「去年の今頃、急に大学三か月くらいサボってた時あったろ。で、出てきたと思ったらすぐに引っ越しとかし出して。」
砂潺「言ったろ?あの頃色々あって親と大喧嘩したんだよ。元々親の金で通ってた大学だったからな。引っ越して一人暮らし始めたりバイト増やしたり、あと国から教育支援金を借りる手続きをしたり、まあ色々大変でな。でも今は就職先も決まったし卒論もお陰でもうすぐ完成だし、それに何より親からのしつこかった連絡もようやく途絶えたし、どうにか大丈夫そうだ。」
浅葱「妹居たろ。そっちはどうなんだよ。」
砂潺「……そうか、お前には妹が居た事言ってたか…。」
浅葱「飲み会の時にぶつぶつ言ってたんだよ。俺は妹一人助けてやらないダメな奴だ、みたいな。」
砂潺「まじかよ……。でも多分大丈夫だ。妹は俺より先に家を出て行ったけど、あいつには俺なんかと違ってちゃんとした人達が付いてる。良い人達に囲まれて、きっと幸せに生きてくれてる。あいつは元々強い奴だしな。」
たより「うわ、凄い風!……えっ、やだ、嘘!行かないで!」
砂潺「どいて!間に合う!」
たより「わっ!」
砂潺「……ってて…。ほら、大事なもんだろ。ちゃんと持ってろよ。」
たより「ありがとう…え、足怪我したの!?大丈夫!?」
砂潺「平気に決まってんだろ、こんなくらい。…あ、ちょっと見せてみろ。……うん、良かった。帽子に血は付いてないな。うち帰ったらその帽子、ゴムでも付けるか?そしたら飛ばされないだろ。」
たより「うん、そうする…。」
砂潺「ん?ああ、上手くできなかったら俺も手伝ってやるよ。」
たより「ありがとう、お兄ちゃん大好き!」
たより「……いけない、少しうたた寝しちゃってた…。でもなんで今更こんな事を…。そんな事より早く支度してお仕事行かないと。……そっか、私、昔は砂潺さんをお兄ちゃんって…両親に虐待される前。あの頃は楽しかったな…。」
クコン「たよりさん、その鍋の味付けが終わったら配達お願い。親子丼弁当の大盛。これがヒーラさん、それとこの野菜炒め弁当の並盛をちょっと遠いけどカッパーさんの家まで!」
たより「はい!」
クコン「今、外、風凄いから気を付けてね。特にカッパーさんの家まではがたがたの道が多いから、遠回りでもちゃんと整備されてる道を通って行ってね?」
たより「ありがとうございます、行ってきます!」
クコン「あ、たよりさん、お帰りなさい!今奥の方でジオットさんが忙しいから手伝ってきてあげて!」
たより「はい!すぐ行きます!」
たより「……やっと今日のお仕事が終わった…。早く帰らないと。」
クコン「たよりさん、今日も一日お疲れ様。」
たより「あ、店長…ありがとうございます。」
クコン「良かったら余ったお弁当、今日は持って帰る?他の子は結構みんなそうしてるし、気にしないで良いからね?」
たより「…いえ、大丈夫です…すみません、お先に失礼しますね。」
クコン「……そう?必要になったら遠慮なく言ってね?」
たより「早くしないとパソレットが帰ってきちゃう。……あ、違う。手順間違えた…これじゃ余計時間がかかる。ちゃんとしないと…。……味付けこれじゃ薄いかな…。」
たより「えっと、これで全部…あ、お吸い物作ってない。えと、玉子とじで良いよね。うう、なんでこんな要領悪いかなぁ…。」
パソレット「ただいま。」
たより「あ、お帰りなさい、パソレット。今日もお疲れ様、ごはんできてるよ。」
パソレット「ああ、たよりもお疲れ様。今日のお仕事はどうだった?」
たより「段々と任せてもらえる事が増えてきてね、配達とか梱包とかだけじゃなくて、調理もやらせてもらえるようになってきたんだ!」
パソレット「そっか、良かったけど大変だな。」
たより「そんな事ないよ、ほら、そんな事より早くごはん食べよ。今日はね、天ぷらっていうの作ってみたんだ。こっちの世界には無い料理でしょ。おいしいんだよ!」
パソレット「へえ、初めて聞くな。楽しみだ。」
たより「昨日はなんとか間に合って良かった…。でも、あんなばたばたしてたらだめだ。昨日は朝もちゃんと掃除できなかったし、今日は私だけお休みだからこの間に沢山ぴかぴかにして、あといっぱい勉強もしないと。」
たより「お風呂場の掃除は一旦ここまでで、次は台所…。この前お魚焼いたからやっぱりこの辺り油がついちゃってる…。……。……。そう言えば店長さん…クコンさんは、台所とかテーブル、床とかに汚れが付きづらくする魔法が使えるって言ってたっけ…。先輩達もそうしてるって言ってた…。」
たより「……。私が使える魔法は言語の翻訳だけ、それも元居た世界の言葉とこっちの世界の言葉の二言語間の翻訳……あとは強いて言えば練習の途中で作った私語(わたしご)だけ。でもそんなの別に使いどころもないし、二言語の翻訳なんて言っても、こっちの世界でまともに会話するために絶対必要だから覚えただけで……元々この世界に居た人には不要な物だから、結局私は魔法が何も使えないのと変わらない。」
たより「その翻訳の魔法も、パソレットが一年近くもずっと手取り足取り教えてくれてやっと使えるようになっただけ。それでやっとまともに一人で他の人と会話ができるようになったからってお仕事探した時も、結局パソレットが知り合いのお弁当屋さんを紹介してくれて……。その間に、えっと、出自不明者登録って言ってたっけ。私が異世界から来たってバレないようにしながら、ちゃんと住所とか名前とか登録するための手続きもほとんどパソレットがしてくれて…私は最後に面談に行っただけで。」
たより「してもらってばっかりで、何一つ一人でできてない。こんなのじゃまるで……。」
たより「……まるで…。」
シュリンター「はいはい、なんだい?君から電話してくるなんて珍しいじゃないか。」
たより「シュリンターさん、すみません…。お忙しいのに。えっと、お聞きしたい事がありまして。大丈夫でしょうか…?」
シュリンター「良いよ良いよ。どうせ研究も行き詰まっていたところなんだ。私が答えられる事なら答えてみせよう。」
たより「えっと、シュリンターさんはパソレットの、学生時代の先生なんですよね…?パソレットの事で、知りたい事があるんです。」
シュリンター「まあ知らない事もあるけど、何を知りたいの?」
たより「その…パソレットって、何歳なんですか?」
シュリンター「……そんな事本人に訊いた方が早いんじゃ。」
たより「ごめんなさい、ちょっと怖くて……。」
シュリンター「怖い?彼が年齢訊いたくらいで怒るとは思わないけど、えっとね…確か、あれから6年経ってるから……。」
たより「…。」
シュリンター「ああ、3度目の13歳だね、恐らく。」
たより「え、13…?いやそれよりも3度目って」
シュリンター「うん、まあそうなるよね。この世界だと大体みんな10歳で肉体的には成長し切って大人って事になるんだ。それで10歳の時に……ううん、君達の世界で言う成人式?みたいな感じのものに呼び出されて、それ以降5年、歳を経るごとに肉体だけ5歳若返るという魔法をかけられるんだよ。それで彼は今、3度目の13歳。生まれてからは23年だと思う。」
たより「……3度目、あ、もしかして多くの人の顔に縦線の模様が入ってるのって」
シュリンター「若返った回数分だけ、左目の下に短い縦線の模様が刻まれる。だからみんな君を見て羨ましがってるよ。まだ線が一本も入ってないんだから。ああ、でも君にも出自不明者登録の時にその魔法がかけられてる筈だよ。君の場合確か…今19だっけ?だから24歳になる度に19歳まで肉体的には若返る事になるね。」
たより「……あの、私って、シュリンターさんから何歳くらいに見えました…?この世界だと10歳で大人なんですよね…?」
シュリンター「……怒らない?」
たより「…お願いします。」
シュリンター「…うーん、まあ、一年前初めて会った時は……ぎりぎり10歳………?か、それよりちょっと下かくらいに見えたかなぁ…。ほら、でもこの世界とそっちの世界では色んな事情が違うから」
たより「10歳……ごめんなさい。いえ、私が悪いんです。ろくに社会にも出ないでいた私が…。」
たより「……。」
たより「いけない、お掃除の続きしないと……もっと家中ぴかぴかに……。」
たより「別にそんなの、パソレットに頼まれた訳じゃないけど……。」
――回想――
たより「なんで助けてくれないの!お兄ちゃんのバカ!」
たより「助けてよ、ねえお兄ちゃん!」
たより「お願い、行かないで…。」
たより「なに……。……砂潺(させん)さん。」
たより「おに……砂潺さんは良いよね、お母さんにもお父さんにも気に入られてて。」
――回想終了――
たより「……馬鹿みたい。守って守ってって。……違う、そんなのじゃない。別にパソレットは代わりじゃない。私は…………あ、今日はお庭のお手入れもする予定だったんだ!なんでこんな、全然何もちゃんとできない…。」
たより「んっ…。ふぅ、この世界にも軍手があって良かったけど、こっちの世界の軍手、ちょっと薄いようなきがする……。」
たより「……あ、ここ……。」
たより「この世界に来て、ここで雨宿りさせてもらってて、いつの間にか寝ちゃってて……初めてパソレットに会った場所。ここだけは絶対、ちゃんと綺麗にしないと。」
――回想――
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(相手を落ち着かせようと、努めて冷静な様子で)
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(落ち着かない相手をどうにか落ち着かせようと、強い口調でありながら敵意の無さを強調する様子で)
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(大事に育てた植物を愛でるような、これ以上なく柔らかな様子で)
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(緊張が解けて、力が抜けた様子で)
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(心底嬉しそうに)
――回想終了――
たより「あの時、何て言ってたんだろうなぁ…。」
たより「でも…。」
パソレット「……。」(溜息)
ファクシン「まぁた思いつめた顔して、何かあったんです?」
パソレット「……ファクシン、お前は何かあるとすぐに気づいてくれるよな。」
ファクシン「先輩が分かりやすいんですって。」
パソレット「いや……今日もこの弁当、たよりが作ってくれたわけだ。」
ファクシン「まったく、羨ましいですよ。」
パソレット「たよりはこの前からクコンさんのお弁当屋で働いていてな。クコンさんにも聞いたが、とてもまじめに頑張っていて、仕事を覚えるのも早いし調理も基礎がちゃんとできていて、非常に助かっているそうだ。この様子ならもっと全面的におかず作りを任せても良いかも知れないと言っていた。」
ファクシン「良い事ばかりじゃないですか。」
パソレット「……何となく分かってはいたが、たよりは放っておくとどこまでも無茶をする。そこまでしなくても良いだろうという程に何もかも頑張ろうとする。大体、そもそも翻訳の魔法を一年足らずで覚えて、俺無しで一人でもこの世界の人間とまともに会話ができるようになったのがどれ程の事かをたより自身が分かっていない。」
ファクシン「あー…。この前見てほんと驚きましたよ。僕が覚え始めて一年の頃なんて『僕、魚、食べる。好き。』みたいなやり取りしかできなかったのに。」
パソレット「俺達もやった『自分語』を作るって練習、あれも俺達はせいぜい音をずらして暗号を作る程度のもんだったのに、たよりは真剣に一から『たより語』を作っていて。普通あそこまで頑張れないだろうに。」
ファクシン「たよりさん、何につけても頑張り屋さんなんですよね。」
パソレット「……ああ、本当にな。それはとても尊ぶべき事…だからこそ、上手く伝えられれば良いんだがな。もうこれ以上無理しなくて良いって。」
ファクシン「ちゃんと言えばちゃんと伝わりますって!」
パソレット「ったく…簡単に言うなお前は。…でもそうだな、ありがとうな。言わない事には伝わるわけがない。……たよりは出会った時からずっと、放っておくと勝手に『こうしないと怒られる、ああしないと怒られる』って勘違いして、勝手に義務を増やしていってしまうんだ。…なんでそんな性分になってしまったのかを考えると、どうしようもなく苛ついてくる。」
ファクシン「昔は両親からひどい目に遭っていたって話ですよね…。」
パソレット「……ああ。そのせいか、たよりの心には常に『怖い』『怒られないようにしなければならない』といったものが付いて回っているように見える。それこそ初めて会った時も…。」
――回想――
たより「−−−−−−−−−−−。」
(驚き、必死で何かを言いながら逃げようとする。)
たより「−−−−−−−−−−−。」
(たじろぎ、おずおずと何かを言い、何かを確かめようとする。)
たより「−−−−−−−−−−−。」
(怯えた様子は無くなったが、何か必死で二〜三種の単語を何度も何度も繰り返し言う。)
たより「−−−−−−−−−−−。」
(一度力が抜けたようになり、少しした後何かを叫び泣き喚く。)
たより「−−−−−−−−−−−。」
(少し恥ずかしそうに、かつ、心底安心したように。)
――回想終了――
パソレット「……いや、そうか…。常にってわけじゃない。何かに怯えたような姿を沢山見てきたが……たまにそうじゃないところを見せてもくれるんだ。そうだ、俺は本当に何もお互い分からなかったあの時から、初めて見た時から、ずっとあの……。」
パソレット「ただいま。」
…。
パソレット「あれ、たより…?」
たより「…。」(寝息)
パソレット「…っふ、椅子じゃなくってな。」
…。
パソレット「……起きるまでに間に合うかな。」
たより「…んぇ、なんでベッド…え、今…。……あ!ごめんなさい、パソレット!」
(扉を勢いよく開けながら)
パソレット「ああ、起きたか。おはよう、たより。」
たより「ごめんなさい、私、嘘…寝ちゃってた…!?」
パソレット「みたいだな。無茶してんじゃないかって思ってたら、やっぱりそうじゃないか。ごめんな、もっと早くに気づけなくて。」
たより「そんなわけない!パソレッ……何してるの?」
パソレット「起きる前に間に合って良かった。一応、野菜スープ…のつもり。」
たより「ごめんなさい!私が寝ちゃってたから」
パソレット「違うんだよ。ほら、良かったら飲んでみて。」
たより「…え、うん……。おいしい。」
(おずおずと一口飲み、少し目を閉じ思いを馳せながら)
パソレット「ほんとにかぁ?……ん、まあ、まあ…あの時よりはマシかもな。でも、たよりの作ったのと比べたら全然だろ。」
(自分でも一口飲みながら)
たより「あの、時……。」
パソレット「ほら、初めて会った日。」
たより「覚えてる。あの時も野菜スープ、作ってくれた…。」
パソレット「ごめんな。一人で暮らしてた時は別に食べられれば良いって思ってて、出来合いの物ばっか買って食べてたし、パンだって適当に一番安いの選んでて、たまに何か自分で作るにしても酷い出来で……とても人に食べさせられたもんじゃなかった。」
たより「そんな事ないよ!とっても美味しかった…。あんなに美味しいの食べた事なかった!」
パソレット「……それは、まあ、そっか。それなら良かった。でもな、いつもありがとう。俺はいつもそうなんだよ。たよりに会うまで食べた事なかったくらい美味しい物、毎日毎日沢山食べさせてもらってるんだ。」
(『それはたよりがそう思ってくれたって話だろ』と言おうとし、途中で止める。)
たより「それは、そんな……だって、私……。」
パソレット「でも、たまには楽したい時だってあるだろう?部屋だって一人で暮らしてた時はここまで綺麗に掃除するの、せいぜい週に一回か…いや、月に一回くらいのものだった。そこまでしてくれなくても良いんだよ。俺は…当然、そんな事で怒ったりしないから。」
たより「……怒るなんて、思ってない…。」
パソレット「え」
たより「違う…。パソレットが怒るなんて思ってない。でもせめてそのくらいしないと、何から何まで助けてもらってばっかりで、私、子供みたいだから……。」
パソレット「…子供、みたい?」
たより「パソレットからしたら私なんて実年齢以上に幼く見えて、子供みたいかもしれないけど……。」
パソレット「……なるほど、やっぱり言わない事には伝わらないものなんだな。……たより。」
たより「…うん。」
パソレット「子供なわけ無いだろ、まったく。悩んでいた事、教えてくれてありがとうな。……まあ、若く見えるっていうのは本当だけど、だからって幼いなんて思ってない。たよりは立派な大人の女性だ。」
たより「本当…?」
パソレット「嘘吐(つ)くわけないだろ?」
たより「……うん、知ってる。」
パソレット「はは、やっぱり気持ちってのは、当然だけど、お互い伝え合わないと伝わらないもんだな。俺はてっきり怒られるのが怖くてずっとしてるのかと思って……どうしたらそんな事で怒るわけないって伝えられるかなんて考えていたよ。」
たより「それで怒るわけないの、何度も教えてくれたから…。ありがとう。」
パソレット「ああ、伝わってくれていて良かった。ありがとうな、たより。」
たより「でも…お掃除はともかく、ごはんはいつも作りたい。」
パソレット「たまにはお店で余ったお弁当でも持って帰ってきてくれれば」
たより「……やだ。」
パソレット「なんでだよ。」
たより「あれは、その……私だけが作ってるわけじゃなくって、先輩さん達が作ったおかずも入ってるから……なんか、その。」
パソレット「……っはは、そっかぁ。そっかそっか、そういう事か。」
(少し照れながら、気の抜けたような雰囲気で嬉しそうに)
たより「だって…。」
パソレット「ならお言葉に甘えるよ。でも、そういう事なら俺だって自分の作った物食べてもらいたい時もあるんだ。」
たより「…うん。」
パソレット「明後日、二人ともお休みだろ?そういう日はせめて一緒に作らないか?色々教えてほしい。あと、水回りとかの気合入れた掃除もそういう日に一緒にしよう。」
たより「…一緒に。」
パソレット「そうだ。二人で一緒に。」
たより「…えへへ。」
パソレット「お、それそれ。それが見たかった。」
たより「ねーね、パソレット。」
パソレット「んー?」
たより「私、子供じゃないんだよね。じゃあさ、パソレットにとっての私って、何だろう?」
パソレット「それは一体、どういう…。」
たより「教えて…?」
パソレット「……少し待ってくれ。えっと、そういう事を訊いてるって事で良いんだよな……。」
たより「うん。」
パソレット「あー……。っとだな、−−−−−−−。」
(もにょもにょと恥ずかしそうに)
たより「え、何?わからない…。」
パソレット「覚えてないか?たより語。」
たより「あ、翻訳魔法の練習中に作った自分だけの暗号みたいな…。」
パソレット「……もう一回言うから、今度はちゃんと聞き取ってくれよ。……ふぅ。−−−−−−−−−−−。」
(少し早口になりながら、恥ずかしそうに)
たより「……そっかぁ。あのね、パソレット。私もね、−−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
パソレット「ああ、−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
たより「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(笑いながら、とても楽しそうに。)
たより「そんな事言ったら、−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−?」
(少し意地悪そうに、にんまりとしながら)
パソレット「−−−−−−−−−−−−−−−っ!」
(この野郎、といった具合に、愛らしそうに)
たより「−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(とても嬉しそうにしながら、同じ言葉を何度も繰り返す。)
パソレット「ああ、俺もだよ。−−−−−−−−−−−−−−−−−−。」
(心底穏やかで、愛おしそうな声色で。)
完
※ 最後の部分のパソレットとたよりの「ーーーー。」という発言について、
私なりに日本語訳したものがありますので、もし良かったらご欄ください。
ただし、元々皆に想像していただきたいと思って書いたものですので、あえて見ないで楽しみたいという方は見ない方が良いかもしれません。
それにあくまで「私の考える」ものであり、皆様にその解釈を強要するものではありません。どうか各々に想像して楽しんでいただけたらと思っています。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1985302875&owner_id=24167653
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