ゆうきまさみの 『白暮のクロニクル』 の連載 (『ビッグコミックスピリッツ』誌上) が終わった。
あっさりと、しごくひっそりと、でも、たしかな余韻を残して。
説明しにくいお話なんだよね、これって。
舞台は、”吸血鬼”というのがじつは人類の特殊な長命種で、その人たちの存在が社会的に認知され、厚生労働省の保護管理下に入っているというパラレルワールドの現代日本。
バンパイアをモンスターではなく実在の人間としてリアルに描くというのは、モビルスーツの設定を徹底的にリアルにしてパトレイバーを生み出したのと同じ、ゆうきさん一流のやり方。
ストーリーのメインの筋は、その長命人 (作中では「オキナガ」と呼ばれる) がらみの長期にわたる連続殺人の、犯人を追うミステリー。
それに、冤罪問題や、長命人を排斥する法案を作ろうとする保守派の策動がからんで、「差別」と排他主義が通奏低音の社会派ミステリーの趣もある。
私がゆうきさんやあさりよしとおさんといったマンガ家が好きなのは、SFへの嗜好が共通するからだけじゃなくて、短編ではない、一定の長さのある物語をちゃんと終わらせられる人たちだからなんだよね。
『ジャンプ』 系はいうまでもないけど、はっきりいえば”神さま”の手塚さんだって、長編をちゃんと終らせられる作者だとは、必ずしもいえなかった。
でもね、物語ってある意味、ちゃんと終ってナンボ。
『白暮〜』 も、見事に終わった。
意外な「真実」に、ちょっと驚いた (ミステリには多少スれてると自負する私にも、あのオチは読めなかった)。
前のほうの伏線のうちには、回収されてないものも少しはある気がするけど、そして、これから短編のサイドストーリーを書く余地はたっぷり残されているけど、でも、連載マンガとしては、文句ない終わり方だと思う。
最終の数カットは、長命人ってどんな存在なのかを間接的に、でも雄弁に語っていて、ちょっとジンときた。
さあて、これからどうしよう。
私、これ一作だけのために、『スピリッツ』 を毎週買ってたんだよね。
単行本でまとめ読み、という読み方から初心に戻って、少しずつ進行していくお話を、「次はどうなるんだろう」とドキドキハラハラ読む、って経験を、このへんでもう一度しておいた方がいいなと思って。
他の作品にも、2つ3つくらいは目を通してたけど、どれもこの先を読まなくてもぜんぜん平気。
だからもう買わないだろうけど、月曜にこの雑誌を買うって習慣ができていたから、タバコをやめたときと同じで、当分その日には、なんだか手持無沙汰になるだろうなあ。
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