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2017年05月17日22:21

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山田太一原作小説『異人たちとの夏』と大林宣彦監督映画『異人たちとの夏』

「そんなに映画『異人たちとの夏』が気に入っているなら、なんで原作を読まないの」と言われて、あ、そうかと思った。映画の原作本はよく読んだけど、なぜか『異人たちとの夏』は読まなかった。

※以下は僕の勝手な感想なので、読み飛ばして下さい(というか、読まなくてもいいです(^^ゞ)。

一読して、確かに原作に忠実な脚色だと思った。そういう意味では逆説的だけど、原作は映画を裏切っていない、ただ二つの点以外では。

一つはなぜ今半別館で主人公の両親が異界に戻ったのか。これは映画ではぼやかされているけど、原作では両親の住んでいたアパートから離れたことに起因していると暗示されている。映画をみてこの離別は異界におけるケイのさしがねかと疑ったが、そうではないらしい。

もう一つは、主人公とケイとの離別のありかた。これは全く違った。原作ではケイの根底に遺恨しかないが、映画ではかりそめにも愛があった。ただ原作では主人公が衰弱する意味に筋が通って理解できるが、映画では話の展開が劇的になっているものの主人公が衰弱する理由が不透明だ。

久しぶりに映画原作の小説を読んで、ちょっと後悔した。やはり物知り顔で分析してもちっとも面白くない。

小説でも映画でも、今半別館の別れのシーンはやはりとても感動的だった。40男が12の時に別れた親と再会し再び離別する。その心の奥を同じように追体験することが、この小説この映画の核心なんだと思う。

今半別館の若い仲居さんが、「シニア男性の方だけが『異人たちとの夏』への熱い思いをもってお店を尋ねてくるのが不思議です」と言っていた。いや、それは不思議でもなんでもない。『異人たちとの夏』は中年男性の心の琴線に触れる名作だからなのだ。若い仲居さんのみならず、女性がピンとこないのも当然ななのかもしれない。
no
そういう理解が深まったのはうれしい。そういう意味では、原作を読んでよかったと思う。



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