主人公シャロンの成長と変化を、少年期、青年期、成人期の三部構成で描いた作品。
取り扱っているテーマは、イジメ、麻薬、育児放棄、同性愛など、描きかたによっては重いものばかり。
しかし、この作品は繊細な映像と、主人公への優しい視点で描いていて、硬さや難解さを感じさせません。
説教のようにテーマの問題点を説いているのではなく、シャロンの成長を見ていくうちに、観客は様々なことを考えさせられます。
印象的だったのは、少年期のシャロンに優しく接する麻薬ディーラーのフアン。
彼はまるで父親のように、麻薬中毒の母親から育児放棄されたシャロンを見守っていました。
しかし、母親に麻薬を売っていたのはフアン自身。
見ていて、彼の矛盾した行動が気になりました。
シャロンもそのことに気がつきますが、それ以降も母親やフアンとの関係は続いてゆきます…。
この作品はR15指定(15歳未満鑑賞不可)ですが、少年期のシャロンを描いているところは、同世代の子供が見たらとても共感したり、考えさせられると思います。
大人は、もっと考えさせられますが。
個人的に今年のオスカー賞は「ラ・ラ・ランド」一択だと思っていたら、受賞したのはこの作品。
作品としては小粒で、ド派手な宣伝をして、バンバンお客さんを呼び込むようなタイプではありません。
例えとしては間違っていますが、主人公がたくさんの人々と出会って成長してゆく…、という意味で往年の「ロードムービー」を思い出しました。
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