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2017年03月21日00:28

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その国のことばの花々

「いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてもくれます。どこの国でも詩は、その国のことばの花々です」

これは、茨木のり子の『詩のこころを読む』の書き出しのことば。
So true. ほんとうにそのとおりだと思う。

先週は吉野弘の『生命は』が、わたしの心の一部を解き放ってくれた。心の一部というよりは、肩甲骨のあたりかもしれない。ほぐれて、ちょっと羽ばたくのが楽になったみたいだ。
生きとし生けるものへの、いとおしみの感情も . . . 。
どこの国でも、ということも、もう一度心に刻もう。

ありがとう、ありがとう。

記念に、その詩をもう一度写しておこう。


生命(いのち)は
                吉野弘

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする

生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻(あぶ)の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない



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