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2016年12月06日21:57

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かたすみ

この世界の片隅に(映画)
(片渕須直監督)

原作既読で映画は2回鑑賞。
1回目はしばらく前に観ましたが感想を書くのが遅れていました。忙しかったのと、なかなか書くことがまとまらなかったんですね。2回目を観ることも決まっていたのでそれから書こうと思った次第で(^^;

よい映画でした。戦争の悲惨さを描きながら、そんな中でも普通に生きていく普通の人を描いていて、辛さの中にも笑いがあり、日常の中にもシビアさがある、おだやかさと残酷さが入り混じった本当にいい作品でした。
初見の人にとっては予想以上に「笑い」もある作品かと思いますが、日常が魅力的に描かれているからこそ戦争の残酷さが強く浮き上がって、どちらの側面も強く印象に残る形になっていたかと思います。

原作は上中下巻3冊で(新装版は前後編2冊らしいですが)、密度も濃くてそれなりのボリュームがあるものですが、1本の映画として上手くまとめていたと思いました。
最初の幼少時のすずさんと周作さんの出会いはかなり幻想的で、本当のことかどうだったかがよく分からないエピソードですが、ここを「妹に語り聞かせる話」として描いたのは上手い処理だったかと。
そこに限らず、幻想と現実が交じり合う描写は秀逸でした。
時折入る絵画的な手法で「波のうさぎ」とか、絵の具で描かれた空襲の爆発とか、青葉がうさぎと一緒に飛んでいくシーンとか、どれも印象的で美しくて泣けてしまいそうになりますよ。

キャラクターは一見ほのぼのなタッチで描かれていますが、かなり複雑で(割とドロドロな)心理劇が描かれているところも印象的です。
すずさんと周作さんと水原さん(と密かにリンさん)を絡めた恋愛模様が、それぞれに切なさがあって引き込まれます。(リンさんのそれは映画だとかなり秘められてますが)
水原さんを納屋に泊めるエピソードは艶っぽさと切なさと戦時の残酷さが入り組んだ話ですが、現代だと周作さんの行動はちょっと利害し難いのですが、次に生きて会えるか分からない戦時故なわけですね。あとは周作さんの後ろめたさか。
その後、すずさんが周作さんに怒って初めての夫婦喧嘩になるところは活き活きとイチャイチャしていていいですね。他人から見てまさに「犬も食わない」状態なのがニヤニヤです。

晴美さんと右手を失う場面は辛いです。
身近で大切な幼子を失い、義理のお姉さんに責められ、その上、心のよりどころとして様々な絵を描いたり、その他にも様々なことをしてきた右手を失うというのは本当にキツそうですよ。
本当に「何もかもを無くしてしまった」感覚かと思いますが、だからこそ、家を出ようとした時にお姉さんに「すずさんがイヤんならん限りすずさんの居場所はここじゃ」は観ているこちらも救われました。
まあ、その直後が「あの」出来事なのですけど。一瞬画面が白くなる描き方が静かで恐ろしかったですよ。

色んな人が色々なものを失った後の戦争が終わった後の広島で、孤児の少女を拾って帰るラストは、これですずさんやお姉さんが新たに前向きに生きていってくれればと思えて救われて泣けました。
原作では無かった「その後」の様子が少し描かれていたのも嬉しかったですよ。

ところで蛇足な話ですが、自分の持っている原作の下巻だと、表紙のすずさんに「ほくろ」が無いので、「描かれているのは実はすずさんではなくて、ラストで出た娘の成長した姿なのだろうか」とか(少女とすずさんは特に似てないのですけど)思ったりしていたものでしたが、
今回気になって調べてみると、単に「原作初版本だと印刷所の人が汚れだと思ってほくろを消してしまった」と言うことだったそうで、増刷版以降は直ってるらしいのですね。変に深読みしていたので、なんてこったと思いましたよ(苦笑)
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