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2016年10月26日00:41

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『ベストセラー 編集者パーキンスに捧ぐ』


 いわゆる趣味の会に参加していると、共通の趣味以外のこと、それぞれのプライベート、どんな仕事をしていてどんな人生を送ってきたかなんて、お互い分からないままだったりする。訊くのは野暮な感じがするし、そもそも人見知りな私はよほど打ち解けないと訊けない。結構プロのひともいたりするのに、そのことに気付かないまま向こうが来なくなって、そのままになって、そして訃報が流れてきたりする。その時になって後悔するのだ。もっといろいろ伺っておけばよかった、と。

 そういう中のひとりに、最後の大物編集者と呼ばれたTさんがいた。いや、ろくに話もしなかったのでその方の"正体"になかなか気づかず、たまたま手元に会の名簿があって(亡き親友とともに会員への連絡係をやっていたため)、フルネームを見て、どこかで目にしたことのある名前だなあと。しかし、同姓同名なのかもしれないし、そのひととこのひとが繋がらない。他の人に聞いて、同一人物だと判明。Tさんは現役時代、古くは井伏鱒二(!)や瀬戸内寂聴を担当し、島田雅彦や吉本ばなな、そして中上健次といった作家たちの才能を見い出し育て上げた名編集者。しかし、そういうことはおくびにも出さず、静かに会に参加されていた。引退後のライフワークの研究の為、会に参加されていたらしい。実際にその方面の著作もある。

 私のご友人には熱心な読書家の方がたくさんいるから、「あんた、何やってたの?!」と非難されるかもしれない。質問するにも最低限の知識がいるし、才能が必要なのだ。私にはない(でも、時たま挑戦するけどね)。

 私ではなく例えばN水さんなら、Tさんと中上健次との血の出るような創作のためのやり取りを聞き出せていたかもしれない。


 てなことを、この映画を観ながら思っていた。
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