mixiユーザー(id:1506494)

2016年10月08日19:44

1347 view

岩渕秀俊リサイタル@三鷹市芸術文化センター 風のホール

ワタシの高校の一年先輩にして、この日記をご覧の方なら誰でもご存知の
岩渕雅俊氏のご令兄である秀俊氏のリサイタルが今年もまたありました

去年は二期会の「ダナエの愛」とバッティングして失礼してしまいましたが、
後でCDを送っていただいて拝聴しました
今年はそのようなことのないように、秀俊氏から早期のうちにブッキング依頼
メールをいただき、スケジュールを空けておきました

そして本日、横須賀線〜東横線〜山手線〜中央線と乗り継いで(JRで繋がな
かったのは、ひとえに運賃節約のため)三鷹まで行って参りました
添付画像に示す通り、今年もまた意欲的なプログラム
バッハとベートーヴェンは外さずに、スカルラッティとリストという、この上もなく
ピアニスティックな曲目を並べました

下手側後方という席から拝見しますと、運指がよく見え、日頃の鍛錬のほどが
よくわかります(日頃鍛錬を怠っているワタシにだって、それくらい)

ここのホールは内装が木造で、スタインウェイがとても良く響きます
岩渕氏もそこが気に入っておられて、今年で3年目を迎えます

スカルラッティのソナタはホロヴィツのアルバムにある17曲から5曲を選んだの
だと公演パンフに書かれていました
昨年の演奏は「パッショネートにしてアグレッシヴ」という感想を抱きましたが
今年は(手元を見ながらということもあってか)よりデリケートでイタリアらしい
歌心のようなものが感じられました

続くパルティータはトッカータに始まるのですが、幻想曲のように思えます
1731年という時代に、このような自由な楽想の飛翔が見られるとは
複雑な運指の続くうちに、終曲のGigueで事故発生
この曲は2声のフーガ形式で書かれているのですが、左手でテーマが示された
後、何度もそのテーマが繰り返され、右手の声部に引き渡されません

ついにピアニストは立ち上がり、きまり悪そうに「忘れてしまいました」
一旦袖に引っこんで、譜面を持ってきてピアノの上に広げて、再度Gigueから
弾き始めました

こういう事って起こるんですよね
何度も練習を重ねて、運指は完璧を目指すのに、それが身体に染み込んで
いるようで、ステージには「魔物」が潜んでいるのです(ワタシにも覚えあり)
メカニックに弾きこなす能力と、暗譜する能力は別物ということでしょうか

前にも書いたと思うけど、リヒテルなんかは暗譜じゃなかったですね
そういうことに労力を費やすというのには意味を感じなかったのかな

休憩を挟んだ後半は、これに懲りたのか、安全を見て譜面を見ながらの
演奏となりました

今度は逆に、リストのハンガリー狂詩曲で弾きこぼれが目立ちました
あまりにも良く知られた曲だけに、ミスがわかってしまいます
超絶技巧がすべて、みたいな曲ですから、ちょっと辛かったです

しかし、最終ステージのベートーヴェンの「テンペスト」では再びファンタジーの
世界で、これは岩渕氏のピアニズムに合っていたようです
ことに終楽章の、あの流れるような曲想は深く心に沁みました

アンコールはフォーレが若いころの作品「ロマンス」を
これは「テンペスト」がベートーヴェンの愛した人を思って作曲されたことを
踏まえての選曲のようです

ちょっとアクシデントと傷はありましたが、それにしてもアマチュアでこの内容の
演奏は、そうそうできることではないです
学生の頃から、とても敵わない先輩なのでありました
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年10月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031