日露戦争（42）

榴「開戦から４カ月ほど経った時点での状況をまとめてみると・・・」
歩「陸ではロシアが満州に敷設した鉄道と、その鉄道沿線にある軍事拠点の制圧に向け、
　　死傷者をかなり出しながらも、まずまず順調に駒を進めている状況デス」
三「いっぽう海は惨憺たるものじゃった。旅順艦隊の撃破にも、旅順港の閉塞にも失敗。
　　ウラジオストック艦隊が仕掛ける通商破壊戦も阻止できず。完全にお手上げ状態で、
　　旅順攻略を陸軍にゆだねるしかない状況じゃった」
榴「その旅順攻略用に編成されたのが第三軍。指揮官は乃木希典大将。仮に陸からの旅順
　　攻略が失敗すると、どうなるかというと・・・」
歩「旅順のロシア艦隊を撃破出来ないまま、ヨーロッパからバルチック艦隊の来襲、とい
　　う事態になる。連合艦隊のうち旅順艦隊を監視する第一艦隊は、旅順近海から動けな
　　い。また第二艦隊もウラジオストック艦隊の通商破壊戦への対応で、手一杯」
三「そうなるとバルチック艦隊を邀撃する、などということは不可能になってしまう。バ
　　ルチック艦隊はウラジオストックに入港し、頃合いを見計らって艦隊決戦を挑んでく
　　るじゃろう。日本は全艦隊で邀撃するしかないが、そうなると旅順の艦隊も出撃して
　　きてこれに加わってくる。そうすればロシア艦隊の戦力は日本の２倍以上になる」
榴「戦闘における撃破レートは、戦力の２乗に比例という法則からすると、日本が勝つ確
　　率は２０％にも満たないことになりマース」
歩「この艦隊決戦に敗れれば、制海権を失うことになりマス。そうすれば満州方面に展開
　　している陸軍部隊に、補給や増援を送ることもままならなくなりマス」
三「結果的に満州方面の日本陸軍部隊は、ジリ貧に陥り朝鮮へ逃げ帰るしかなくなるじゃ
　　ろう。さすれば朝鮮国内も日本を見捨ててロシアにつく勢力が優位に立つ」
榴「結局日本勢力は朝鮮からも追い出され、満州と朝鮮は完全にロシアの制圧下になる」
歩「つまりこの戦争は日本の負け、ということになるわけデスネ〜」
三「そういうことじゃ。そう考えると、第三軍による旅順攻略戦というのは、日本にとっ
　　てはもはや背水の陣、と言っても良いものだった。もう後は無いのじゃよ」