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2016年09月11日00:39

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『河神の誘惑』第19話

次回で最終話です。

『河神の誘惑』第19話

 その夜、サガは久しぶりに河神に愛され、安らぎを得ていた。サガの体のほうも河神とも交わりにだいぶ慣れてきており、以前のように精を受けただけで気絶することもなくなっていた。
 いつものように河神の癒しの小宇宙に包まれ、アイオロスとの愛について恐れや悩みから遠ざかり、酒の力を借りることなくサガは眠りにつこうとしていた。
「サガ…」
 サガの体を抱き締めて頭を撫でていた河神がささやく。
「…はい?」
 とろとろとまどろみかけていたサガは夢うつつで答えた。
「おれの妻にならんか?」
「…は?」
 サガの意識が一気に覚醒した。河神が優しい眼差しで彼をのぞき込んでいる。
「おれはまだ独身でな。このおれの、『河の王』の妃になる気はないかと尋ねている」
「…神々は同性同士で結婚できるのですか?」
「出来ない。だからお前がその身を女に変えて、な」
「……」
 ぱちぱちとサガは二、三度目をしばたいた。
「おれの妃になってくれるというなら、おれはゼウスに頼んでお前に神としての地位を用意してもらってもいい」
 どうだ、と重ねて問う河神に、サガはようやく驚きを脱して答えた。
「…女になるのもそうですが…結婚など、出来ません。私は…今生の生をアテナの聖闘士としてまっとうするために授かったのです。アテナを、双子座の聖闘士であることを捨て、あなたの妃になるなど…」
「出来ないか?」
「ええ」
 では、と、河神が続けた。
「ではせめて、女になっておれの子を産んでくれないか?」
「……」
 沈黙ののち、サガは身を起こした。河神の様子は、ただの睦語や冗談として受け流すことは出来ないたぐいのものだった。真剣な顔でサガは彼に尋ねる。
「アケローオス様、どうして急にそのようなことを…。子を産むなど…私には考えられないことです」
「ヴァシリスとエレナがおれにお前とカノンを残してくれたように、お前の子をおれに残して欲しいのだ。お前が、いずれは死すべき人の身の運命になるならばなおさら…」
 サガの手に口づけながら、河神が自分の想いを説明する。
「お前は神としての地位はいらぬという。だが人間として生きるということは、いずれはおれを残してこの世から消えてしまうということだ。だからせめて子を残して欲しい。おれとお前が愛し合ったという確かな証を、子孫という形で、後の世に伝えていって欲しいのだ」
「アケローオス様…」
「考えてみてくれ、サガ。それに、もしおれとお前の間に子が生まれれば…それは『神の子』だ。きっと強い聖闘士になる。神話に残る英雄たちのような、アテナの助けになる子が生まれるだろう」
「……」
「お前が女の身になれば…教皇との間に子を残すことも出来るぞ。教皇は、お前との間に子が欲しいと望まないだろうか?」
「それは…」
 かつてアイオロスはサガに冗談半分の睦語で言ったことがある。「サガが孕めないのが残念だ」と。アイオロスは、代々、強力な聖闘士を輩出してきた聖域の名家の出身だ。その血筋が残ることを、聖域の人々は歓迎するだろう。アイオロスとサガの間に子が生まれれば、それはアケローオスとサガとの間に生まれた子とは別の意味で、聖域にとって有望な戦力となるに違いない。
「サガ、今のお前には現実味のない言葉なのだろうが…どうか真剣に考えてみてくれ」
 河神はそう言って、サガの額にキスを落とした。

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