監督 是枝裕和
主演 阿部寛 樹木希林
主人公は、50歳を過ぎても小説家として生計をたてることを夢見て、興信所に勤めている男(阿部寛)。
別れた妻と子供には未練たらたらで、復縁を内心では望んでいるが、元妻には冷たくあしらわれている。
ギャンブルに目が無く、金が入ると競輪やパチンコに注ぎ込んでしまって、家賃や養育費の支払いもままならない始末。
そんな彼の日常を描いた作品です。
「笑える」という前評判が気になっていました。
確かに笑えました。
主人公の考え方や行動を見ていると、苦笑というか乾いた笑いがこみ上げてきて、一言で表現すると「イタい」。
この作品を見ていた時、シアター内は年配の観客がほとんどでしたが、ところどころでクスクスと静かな笑い声が起きてました。
金に困った主人公が、年金暮らしの母親(樹木希林)のヘソクリを探すために、必死で家探ししていたシーンが一番ウケてましたw
絵の撮り方や題字などの演出が、主人公が子供だった頃の’70年代を意識していたところが印象的です。
彼は精神的には子供のままで、最後まで大人になれなかったことを暗喩しているような気がしました。
部屋にあった本棚に並んでいた小説も、古典作品と、彼が若い頃に流行った吉本ばなななどの流行作家ばかりで、最近の作品が見当たりません。
狭い風呂桶に膝を抱えて浸かっていたシーンも、身体ばかり大きくなったという皮肉の意味が込められている気がします。
さりげなく出てくる「賞味期限を気にするなんて」などのセリフや、ラジオから流れてくるテレサ・テンの曲も、ストーリー展開の中で意味深長な役割があって興味深い。
映像には出てきませんでしたが、主人公と家族のやりとりの中から想像させられる父親の存在の描き方が上手い。
「家族」というテーマを是枝監督の味付けで描いている、という意味では満足感のある作品でした。
個人的には、ギャンブルが嫌いなので繰り返して見たいとは思いません。
主人公が作中で目を輝かせながら言ってました。
「宝くじには夢がある」。
アホか…。
映画作品でも有名な「チャーリーとチョコレート工場」の原作小説を書いた小説家ロアルト・ダール。
彼の短編小説「南から来た男」はギャンブル依存の怖さを描いています。
「南から…」は、クエンティン・タランティーノの「フォー ルームス」のラストでも引用されているので、その怖さとバカバカしさを見たい方は探してみてください。
樹木希林の、演技なのか素の表情なのかわからない、とぼけた味が好きですw
面白かったw
ログインしてコメントを確認・投稿する