大阪、梅田の楽譜、音楽書の専門店で
立花隆「武満徹・音楽創造への旅」を探したが
置いてなかった。
定価４千円の分厚い本なので、立ち読みでは
なにもわからないだろうけど。
この本は読んではいないが、
YouTubeで立花による武満の追悼番組
「武満徹が残したものは」
https://www.youtube.com/watch?v=S1HlEwBPn3M
は見た。その中で、
「バッハやモーツアルトの音楽が、最初の一小節でそれと分かるように、
武満徹の音楽も同様である。それが巨匠の証」
みたいなことを言っていて、それはちょっと違うのではないかと思った。
バッハやモーツァルトの音楽は
同時代の音楽家が、同じスタイルで作曲している中で
「最初の一小節でそれと分かる」からすごいということだ。
それに対し、武満はじめ、現代音楽は
ある意味、個性を競うジャンルである。
そこに規則など全然ないし、同じスタイルをキープする必要もない。
そうなると、
「最初の一小節でそれと分かる」だけで
巨匠と呼べるかというと、それはぜんぜん違うだろう。
例を挙げると、晩年のメシアン、指揮で多忙な頃のブーレーズ、
DGに大量の録音を行った頃のシュトックハウゼン・・・・。
「最初の一小節でそれと分かる」だけで
「巨匠」だの「傑作」だのというわけにいかないことがわかる。
以前の日記で、武満に対し、無条件で絶賛しまくった
岩城宏之、吉田秀和、秋山邦晴らを批判したことがある。
立花隆の番組をYouTubeで見ると
まさに、岩城らと同じ臭いを感じるのだ。
1980年頃、現代音楽界において、武満の存在は
本当に大きかった。
新作のLPなどが出ると、絶賛の嵐で
けなすことは許されない雰囲気があった。
しかし、その中で、肝心の武満の作品（1980年頃）が
さっぱりおもしろくなかったのである。
記憶に残っているのは、「ウィンター」（岩城指揮ビクター）
カトレーン（小澤指揮DG）、カトレーン�供淵織奪掘砲覆鼻�
当時、まだ中学生だった自分はこれらを聞きながら
「こんな作品が絶賛されるなんて・・・完全に宗教だな」
と思ったものである。
武満徹の「雨の樹・素描 II ~オリヴィエ・メシアンの追憶に」
を聴く。
https://www.youtube.com/watch?v=_h0jLaPy95w
この曲、何回聴いてもつまらない曲だとしか思えない。
表面的な小綺麗さはあるかもしれないが、
あまりにも脆弱であり、心に響くものが少しもない。
こういう曲を聴くと、立花の賛辞も虚しいと思う。
武満以外の日本の現代音楽も聴いてみた。
野田暉行「フルートと打楽器のためのエクローグ（1970）」
中川昌巳（Fl）吉原すみれ(perc)
打楽器を多数並べて激しく叩きまくる
マルチパーカッションは一時期流行ったが
その中で代表作といえるもの。
激しいクライマックスと、それに至る楽曲構成が見事。
吉田進「演歌�機�
矢崎彦太郎指揮 奈良ゆみ(Sop)、コロンヌ管弦楽団
フルート、オーボエ、アルト・サクソフォン、トランペット、
トロンボーン、打楽器、ギター、ヴァイオリン、チェロ、ソプラノ独唱
の編成だが、大オーケストラのような表現力、スケールの大きさがある。
メシアンが絶賛したので有名になった作品だが、それも頷ける作品。
これらを聴くと、日本の現代音楽の中で武満ばかり
特別視してきたジャーナリズムの責任は大きいと思う。
野田も吉田も然るべき評価を受けてこなかった。
立花隆「武満徹・音楽創造への旅」は
読み物としては面白いかもしれないが、
シビアな批評としては、どうなんだろう？
作曲家への愛情が強すぎるのではないか？
だとしたら、やっぱり岩城や秋山邦晴と同様だ。
その手のものは、もういいというのが正直なところである。
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