昨日3月27日の日曜日は午後2時から「千葉県少年少女オーケストラ」の定期公演だった。
今年はこのオーケストラの結成20周年という節目の年で、選ばれた曲目はベートーヴェンの『第九』。それに先立ち、斉藤秀雄が管弦楽用に編曲したバッハの『シャコンヌ』が演奏された。
指揮は下野竜也 ソプラノ佐々木典子 メゾ・ソプラノ寺谷千枝子 テノール吉田浩之 バリトン福島明也 合唱 東京オペラシンガーズという強力な布陣がオーケストラを支える。
チケットは早々に完売し会場となった千葉県文化会館は正真正銘の満席。雑音を発する者も拍手のフライングもなく、聴き終えた聴衆からは「ブラヴォー!」が沸き起こった。
これは特別のイベントだからではなく心からの喝采だったと思う。本当に素晴らしいの一言でしか表現しようのない演奏だったのだから。
ベテラン歌手たちは勿論、小澤征爾の世界に通用する合唱団をとの思いが結実した東京オペラシンガーズが正しくプロの歌声を聴かせた。
オーケストラもいつにも増して素晴らしい仕上がりだった。目をつぶって聴けば誰もこれが10代の子供たちの演奏とは気づかないのではないだろうか。
コーダで猛烈なアッチェレランドを掛ける下野竜也の指揮に疲れも見せずピタリとついていく様は鬼気迫るものを感じるほどだった。
そして忘れてならないのが結成から20年間オーケストラを指導してきた佐治薫子の存在だ。実は彼女、音大出のエリートでも何でもなく、千葉大学の教育学部で音楽を専攻した小学校の音楽教師。しかし教師として40年の在任中、赴任した先々で40回子供たちを音楽コンクール優勝に導いたというカリスマ教師なのだ。
20年前、当時の県知事はオーケストラ結成に当たり彼女を音楽監督にすべく口説いた。知事の慧眼が佐治さんに輝ける第二の人生を与えたと言えようか。
佐治さんは言う、「私が楽譜を音にすることは出来ても、最高の演奏まで導くことは難しいのです。良い指揮者からしか良い演奏は生まれないのです」。その言葉通り定期公演などの晴れ舞台には実力ある指揮者たちが立ち、ソリストにはマルタ・アルゲリッチも招かれた。
本公演で最後にマイクをとった佐治さんは、20年を振り返りつつ支援に対する感謝を述べ、この演奏会で退団していく18名の団員を紹介した。彼等はこのオーケストラが結成された年に生まれた子供たちということになる。そして今年新たに30数名の小学生、中学生が入団するのだという。寂しくもあり嬉しくもあると語る佐治さんは今年81歳になる。しかしまだまだゆっくり余生を満喫する暇はなさそうだ。
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