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2016年03月01日18:59

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中東の権益をめぐるプーチンの思惑

BBCが今朝のツイートで「プーチン大統領は欲しかったものをシリアで手に入れたのだろうか?」と題する論説を載せています。現在進行形の注目のシリア内戦一時停戦にも関連しそうなので要訳してみました。
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プーチン氏のクリミア半島併合も東ウクライナでの軍事介入も、冷戦終結後のヨーロッパにとっては異常な事態である。
更にロシア軍のNATOのロシア周辺国へのあからさまな挑発行為が日増しに増加し、NATO加盟国の間で警戒感が高まっている。
スエーデンのような国ですらロシアとの武力衝突も現実味を帯びてきた。
慎重なNATO軍事委員会もようやく重い腰を上げて防衛予算の増額に乗り出し、アメリカもヨーロッパの最前線への兵力増強に踏み切った
もちろんロシアは西側のこの動きに非難の声を上げている。だがプーチン政権は、政敵を放射性物質を使ってロンドンの街中で暗殺するような連中だ。
ところが、ロシアのシリア大統領アサド氏との関わりについては、西側はロシアと話し合う姿勢をみせている。
すくなくとも一週間前にはロシアはシリア内戦を終結させる外交努力において強力な共同スポンサーであったはずだからだ。
現状ではロシア空軍の支援がアサド政権にとって何よりの命綱である。
今こそ西側の目から鱗が落ちて、シリアにおけるロシアの真の目的が何かがはっきり見えてくる時なのだろうか?

もちろんシリア情勢は明らかに大変複雑な状況で、誰が内戦の進行を煽っているのか、簡単には名指しできない。
西側にとっては、シリア問題は武力では解決できないというの常識になっているが、ロシアは違う考えを持っている。
ロシアは軍事的に強力な勢力を支援する。ヒズボラ戦士やイラン
が集めてイラン人の司令官が統率する強力な戦力を味方にする側につくのである。ロシア自身も充分な兵力を投入している。
地上戦の結果が出るのには余り時間はかからないだろう。
ロシアはアサド政権を支えて、シリアの重要な地帯の支配を取り戻させることに目標を定めているのだ。
その目標達成の為に、ロシアはトルコ、湾岸諸国そして西側が支援する武装勢力を空爆で叩いていて、成果を上げているのが現状だ。
一方西側は「穏健派」と呼ばれる武装勢力を支援しているが、では具体的にどの武装勢力が「穏健派」なのか?
多くの武装勢力は多少なりともアルカイダの影響下にある。
西側の矛盾の一番手はアメリカがアルカイダと同じ側に立っていることだろう。もちろん西側はISISの掃討に主眼がある。だが、同盟を組むサウジやトルコも同じことを主目標として掲げているのだろうか?
答えはNOである。彼らの主目的はシリアに戦略的に必要な拠点を確保することだ。出来ればアサド政権を崩壊させて。
ISISは彼らの敵ではあるがいろいろな意味で二番手の敵である。
第二の矛盾である。

もちろんクルドの問題もある。ISISとの戦いにおいて西側が最も頼りにしているのがクルド人部隊である。トルコにとってクルドは脅威そのものであり、その存在自体がどんなことをしても避けたい悪夢なのだ。ここに第三の矛盾がある。

これらの矛盾を抱える西側に対して、プーチンの方は簡単である。
よく言われることだが、プーチンには西側の同盟国たちと違って、国民の世論を気にする必要がないという利点がある。
だが、ここでよく考えてみよう。西側諸国の政策が果たして国民の声を反映しているのだろうか?
世論というものは政治の専門家と称する人たちも同様に、混乱することが多い。
溺れて行く難民、酷い仕打ちを受ける難民、そして明らかに手に負えない紛争があちこちで、いや目の前でも起こっている。

プーチン氏は着々とシリアでの軍事的目的を達成しつつある。
だが、彼の成功はシリアを二つの武装集団に分断する惧れがある。沿岸部に張り付くように残ったアサド政権の支配地とISISの支配下にあえぐ残りの広大な地域である。

それでは西側に残された選択肢があるのか?
アメリカが態度を決めかねている間に、プーチン氏は中東における勢力としての地位を固めつつある。彼はロシアが限定的ではあるが強力な海外派兵能力を持っていることを証明し、ロシアの最新兵器の威力も見せつけてきた。
そうした意味ではプーチン氏は勝利者だとも言える。
但し、いつまで続くか疑問が残る。ロシアの国力の土台そのものの脆弱性が問題だ。原油価格の下落傾向は改善の見込みがない状況で、彼が本当にソ連時代への回帰のような大事業を成し遂げることが出来るとは到底思えない。

しかし間違ってはいはいけない。シリアの和平へのプロセスはまだ始まったわけではない。
アサド政府軍とISISとの間に挟まれて浮き上がりかけている「穏健派」武装組織との戦闘は続くであろう。クルド問題がいつ頭を持ち上げてくるかも不明だ。欧州への難民の流入も衰える兆しは見えない。
プーチン氏は自分が何を求めているかうよく判っており、今までのところ、それを手に入れる可能性が高いように見える。


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