早稲田大学の学園祭、早稲田祭に行ってきました。例年同様、
人人人。その中でマスコミ研究会が主催の中村うさぎさんの講演会に
参加しました。その概要をまとめました。
中村さんの体験を通して得た実感は
とても勉強になりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
○エッセイストになるまで
中村さん「大学4年行きましたが、4年間で分かった事は英語が嫌いと
いう事だけ。4年間も大学行けば、自分がしたい事が
分かるだろうと思ってたけど、結局分からなかった」
「大学を卒業してOLをやったけど、OLに向いてない事が
わかった。そして広告代理店に勤めている友達のツテで
コピーライターになった。当時はバブル絶頂期で
コピーライターが不足していて猫も杓子も
コピーライターになれた。もともと文章を書くのが
得意だったわけではない。ただ、作文を書く時、
先生が私に何を書いてほしいか察する能力はうまかった」
「その後、今でいうライトノベルの作家になりました。
想像以上に売れて印税が入り、そのお金で買い物をするように
なり、買い物依存症になりました。買い物依存症の
経験をエッセイにして書くという」
○進路に迷う若い人たちに向けて
「好きな事と得意な事が一致する人は問題ないが、問題なのが
好きな事と得意な事がマッチしていない人。もともと
私は文章を書くのは好きではなかった」
「私の20代は何が向いているのかを探す時期だった。そして
30代に入り、段々と進むべき道を決めていった」
「コピーライターというのはクライアントの言う通りにしか書けない
のでストレスがたまっていった。
そのころ、ゲームが大好きではまっていた。そこで
ゲームライターに転身した」
「バブルが弾けた頃、ものが売れなくなった時期なのに、売れるものが
あった。それは中高生向けの今で言うライトノベル。当時は
ファンタジー小説と言っていた。当時ゲームライターをやっていた
私は、このファンタジー小説を書いてみた。ゲームとファンタジー
小説は共通点があり、両方とも世界観が必要だという事。
書いた小説があたり印税ががっぽり入ってきた」
○エッセイスト「中村うさぎ」
「入った印税で、買ったこともないシャネルを買いに行った。
もともと買う気がなかったが、店員に貧乏人だと
思われるのが嫌だった。店頭に並べられている商品を見て
『私、身体小さいんで、このサイズだと着れないので
残念だけど買えないなあ』と言っていると、店員が
『実はワンサイズ小さいのがございます』と言って
奥から小さいのを持ってきた。試着したら丁度
サイズが合ったので、言った手前、買わざるを得なくなった。
60万するジャケットだった」
「服だけ買っても仕方が無いので、バックなどを揃えるうちに
買い物依存症がどんどんエスカレートしていった」
「買い物はカード。どんどん買い物がエスカレートしていくんで
貯金が無くなり、家では水道を止められてしまった」
「この体験を、編集者仲間たちとの雑談の中で話していく中で
彼らが『面白いよ、その話。エッセイにして書きなよ』と
言ったので、エッセイを書き始めた」
「人生、思った通りにはならない。でも、どんな状態になっても
それに向きあい対処していくのが私の生き方」
○ホストにはまった件について
「始めはホストなんて!と思っていた。友達に誘われて初めていったが
案外面白かった。2回目行くとホストを指名しなきゃいけない。
誰を指名しようかと考えた時、1回目行った時についてくれた
中で一番のイケメンを指名した」
「そのイケメンの彼が『ホストの中で一番の売上をあげたい』と
チワワのような顔をして言うので、ついついシャンパンを
注文するようになった。私はシャンパンが大嫌いなのに」
「次第にお金が続かなくなり、角川書店から、借金をするようになった。
印税の前借り。本を書かざるを得なくなった。私からすると
何だかタダ働きのような感じだった」
「借金返済のために、エッセイを書く事で、それが自己分析に
繋がった」
「何ごとも体験してみないと分からない」
○テレビのコメンテイターについて
「私はもともとテレビのワイドショーのコメンテイターの仕事を
断っていた。発言に自己責任がとれないから。
文章の場合、推敲する時があるが、テレビだと訂正ができない」
「ネットはジャーナリズムだという意見があるが、発言に自己責任が
あるという事をネットで書き込みしている人は分かっていない。
だからネットはジャーナリズムになりえない」
「マスコミやジャーナリストは発言には自己責任がある事を
伝えなければいけないのに、その風潮が弱まっている」
「テレビのコメンテイターの仕事を断っていたが、MXテレビだけは
諦めずに、3回にもわたって依頼してきた」
「ある日、マツコデラックスから午後2時頃『MXテレビの5時に夢中、
私急に出てなくなったので代わりに出て』と言われ、仕方なしに
超特急で準備して代わりに出たのが、コメンテイターをするきっかけに
なった。それでも、やがてもめてコメンテイターはやらなくなった」
○整形について
「買い物依存症になった時も、テレビの女性コメンテイターを勝手に
仮想敵に見立てて、彼女には負けたくない、彼女よりも良い服を
着たいと思いながら、買い物をしていた事もある」
「整形は、高梨クリニックの院長との対談がきっかけで出た企画。
女性セブンでその企画をやりたいと言ってきた」
「院長は『どんな顔になりたいですか?』と聞いてきたので
私は『中山美穂』と言った。そうすると院長は『整形は万能ではない。
なれる顔となれない顔がある。中山美穂は無理。なれるジャンルで
中村さんから一番遠いのが奥菜恵だ』と言われた。奥菜恵と言われても
ピンと来なかったが、手術する事にした」
「整形をしたのが40代。整形した顔を見て『私、モテるんじゃね』って
思ったけどモテない。後になって気付いたのだが、どんなに整形しても
人格って顔に出る。鏡の前で決め顔する私は綺麗だが、普段動いて
いて感情を出すとババアになる。モテないのは人格のせいだと気付いた」
「それに気付く前、『モテないのは、周りのみんなが以前の私を知ってる
からだ。私を全然知らない人達の間に入っていけば、モテるかも』と
思い、熟女デリヘルにチャレンジした。本番はない。
始める前は、簡単な仕事かなあと思っていたが、とんでもない。
全身使い、凄く体力がいる。3日間しか続かなかった。
3日目、仕事が終わり、洗面所で顔を洗っていると、顔見知りに
出くわし『中村さん、こんなところで何してるんですか?』と
言われ、恥かしくなって止めた」
○「男にもてる」という事
「女性は、男にもてて嬉しいんだけれど、心のどこかで嫌っている部分がある。
それはもてると、痴漢に遭ったり、ストーカーに遭ったりする危険を
はらんでいるから。男にはそこが分かっていない」
「女性は『たった一人でも愛してくれる人がいないと自分には価値がない』という
意識を持っている人が多い。男は出世が自己確認の方法になるが、女にとって
出世が必ずしも出世が自己確認の方法にならない。女性には
昔は、社会的な自己確認の方法はなかった」
「恋愛市場では、男は社会的に出世すると価値は上がるが
女性は必ずしも出世しても価値が上がるとは限らない」
「田島陽子氏がかつて、朝まで生テレビで、男性論客を論破した。
収録が終わった時、その論客が田島氏に向かって負け惜しみから
『金をもらったって、お前を抱きたくない』と言った。
結局、女の価値は美醜の問題になってしまう。
肉体に点数をつけられるという切迫感が女性は強い」
「女性同士では『自分は自分を美人と思っている事を、他の女性に
悟られてはいけない』という脅迫観念がある。悟られると
はぶかれる。私は女子高だったが、私は
美人だと思っている事を悟られないために、腹の肉をつまんで
『私、こんだけ太ってるんだ』と言っていた」
「女性は自意識過剰と自虐の間で揺れている」
「男女共学の大学に入り、男の前で、自虐のつもりで
腹の肉をつまんだら、ドン引きされた」
「女性アスリートで金メダルとっても、容姿が醜くては
『○○ちゃん(女性アスリート)になりたい?』と聞かれても
女は『?』と思わざるを得ない。○○ちゃんになりたいって
言う女性は少ない」
「整形というのは、アンチエイジング、男にとってのバイアグラ
みたいなものだ。欲望という面では生きるモチベーションに
なるが、反面、死ぬまで踊っている感じがするし、
いつステージから降りられるのか?と思う」
○会場からの質問「将来が不安」という学生について
「こんな人物になりたいと思っていても、十中八九、思い通りに
ならないのが人生。落とし穴に落ちる事もある。
その落とし穴が別の人生に繋がっている事もある。
そんな時、どう選択するかで人生が作られていく」
○会場からの質問「NOといえない私はどうすればいいのか?」
「若い時は、私も大人や世間がこわくてNOとあまり言えなかった。
けど、段々と自分にとって譲れない一線がある事が分かってきた。
自分にとって譲れない一線を決めて守るようにするべき」
(終わり)
ログインしてコメントを確認・投稿する