mixiユーザー(id:280973)

2015年10月28日22:22

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『アクトレス 〜女たちの舞台〜』


原題:CLOUDS OF SILS MARIA

 SILS MARIAは舞台となる場所の名前であるが、ジュリエット・ビノシュ演じるヒロインの名前もマリアである。

 おお、ビノシュって変換すると「美の主」になるよ。


 簡単に、サーッと感想を述べてしまうのは惜しい。

 決して難しい内容の作品ではないのだが、観終わって今も咀嚼している気がする。呑み込めないわけではない。反芻(はんすう)している感覚なのである。

 或るクライマックスがあった後、エピローグと位置付けられたパートでいくらでもドラマを作って盛り上げられるのにも関わらず、登場人物のゴシップもあり舞台本番もありという一番おいしい話なのに、オリヴィエ・アサイヤス(脚本、監督)はそこをいともあっさりと物語の幕を下ろしてしまう。それが妙に、妙に、あとを引くのだ。興奮でもないし、不満でもない。衝撃でもないし、謎でもない。何だか説明しきれないのだが、私の心のあとを引いている。このような経験は久しぶりのような気がする。

 女優が女優を演じる。作中の女優が或る役を演じる。その三つの人間が重なり合う。ましてやジュリエット・ビノシュに当て書きしたというか、彼女の意向を受けて書かれたシナリオなのだから。さりとて、作中の大女優はビノシュとイコールではない。

 大女優の個人秘書兼練習相手を演じるクリステン・スチュワートが素晴らしい。ビノシュ相手に一歩も引かず堂々と渡り合う。大女優と舞台共演することになる新進ゴシップ女優を演じるのはご存知クロエ・グレース・モレッツだが、彼女の見せ場はちと少ない。

 ヨリック・ル・ソー(フランシス・オゾン監督作品の多くを撮影)の撮ったスイス、SILS MARIAの美しい画を観るだけでも価値がある。今こんな画が撮れるカメラマンは日本にはいない。












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