三谷幸喜は自他ともに認める映画マニアであり、演劇と映画の違いについても他人からあーだこーだと云われるまでもなくよく分かっている。分かっていないわけではない。鑑賞者の好みはどうあれ、これまで幾作もコメディ映画を撮りヒットさせてきた。堂々たる実績であり、これは決して「横好きな下手」で撮れるようなものではない。
しかしである。笑いというものを作っていく際に、スクリーンに載せた際の観客の反応を予測できるだけの客観性を一旦見失ってしまうと、今作のようになってしまう。舞台ならこのシナリオ、演出通りで、ドッカンドッカン客席を沸かせていたことは間違いない。舞台なら。
カット割りとテンポ、これさえ改善されれば。でもそれだと古沢良太みたいになっちゃうけどね。徹頭徹尾、ツッコミまくる(挿入されるのが何のパロディなのかも逐一説明しまくる)キャラが一人必要だったし。
作ったのは喜劇だが、起こったことは悲劇だったという文字通り笑うに笑えないオチなのである。ただ、これよりも酷い映画は星の数だけある。
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