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2015年10月04日00:25

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偉大なる「中庸」・・・ロンドン交響楽団日本公演

期待が大きすぎた、とは思います。

京都 京都コンサートホール
ロンドン交響楽団2015日本ツアー
ベルナルド・ハイティンク指揮 ロンドン交響楽団
ピアノ独奏 マレイ・ペライア
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調K491
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調

関西では唯一の公演(フェスでは、なんと天下のロン響がファイナルファンタジーをやるんですよ。これはこれで、魅力的ではあるけれど。息子にこの話をしたら、「なんで言ってくれなかったの!!」と言っておりましたが)。

関東では、東京3公演を含む4公演もやることを思うと、なんとまあ関西のクラシックのマーケットの縮小したことか、と溜息が出そうになりますな。ただ、二年前にパリ管がやり、今年にコンセルトヘボウがやるように、京都と西宮で二回公演を打つ、というのは、今の関西では存外に良いアイデアかもしれない。聴衆の層もかぶらないし、コアなファンはプログラム次第ではどちらにも行くでしょうし。ロン響だったら、京都でブルックナーをやり、西宮でブラームスのプロを打てば、結構入ったんじゃないかなあ。

で、今日の客の入りは、まあまあでした。9割は行ってたかも。でも、満席にはならないんだねえ。

で、肝心の演奏は、と言いますと・・・・結論から言うと、素晴らしいロン響の響きに酔いはするけれど、さて、招聘元のカジモトが「渾身の」「奇跡の」と煽りまくったような演奏だったかというと、ちょっと違った気がしますねえ。確かに、立派極まりない演奏なんだけど、「渾身の熱演」というよりは「力の抜けた自然体の」演奏だし、ましてや「感動の涙にくれる」「奇跡に震える」という演奏ではない。

ロン響は、2年前に横浜でやはりハイティンクが振ったブルックナーの9番を聴いたのだが、こちらの方がはるかに「感動の」「震えるような」ブルックナーだったなあ。

今日の7番、予想を裏切ったかなり早いテンポ。全部でおそらく70分かかってなかったんじゃないかなあ。ある意味「御歳86歳」の指揮者のものとはとても思えない、「若い」「生命感に溢れた」ブルックナー。だから、ちょっとカジモトも煽りすぎなんですって。マーケティング上仕方が無いんでしょうけど。

特にそれが顕著なのは、二楽章のアダージョ。へ?って言うくらい速いテンポで振り始めて、結構そのまま最後まで押し切った感じ。でも、そうだからと言って決して食い足りないわけではなく、内容的には充分そのもの。クライマックスに向けての長い長い息遣い、そしてその先にある懐深い法悦の響きの時間・・・全く持って、素晴らしいです。

それから続く3楽章、4楽章のマッシブな躍動感だとか推進力だとかもとっても聴きものであって・・・だからやっぱり、とっても良い演奏だったんですって。

ただ、すれたぐすたふ君、これまで聴いてきたライブの7番と比較してしまうんですよ。そうなると、やはり僕の中では、ゲヴァントハウスの「鋼鉄の」ブル7、札幌で聴いたPMFの「天駆ける」ブル7、この二つの魅力の方がどうしても勝ってしまう。

タイトルにも書いたけど、これ、と一言でと言い切ってしまえない、良い意味での「中庸な」演奏。それが「偉大」と言っていいようなレベルにまで達したような・・・・言い過ぎることを許してもらえるなら、「指揮者が消えてしまったような」「ブル7がそのまま呼吸してロンドン交響楽団を鳴らしたような」、そんな息遣いと響きの魅力に満ちていたように思います。

兎にも角にも、ロン響の弦セクションの音の魅力!!!京都の古寺名刹の講堂の床の、その塗りこまれ磨きこまれた深い木目の色艶を思わせるが如くで・・・その弦が、単純な三和音ですら「純正」でなんとも美しい響きで鳴る。これが、ブルックナーの7度や9度の和音になると、まさに陶然としか言いようのない響きになるわけで・・・。これこそが本当の、という言葉が口を突きそうになりますね。

管セクションに関して言えば、今の京響なら下手したら負けていないかもしれないが、この弦にはどう逆立ちしても敵わないでしょう。パリ管の弦も、ここまでの音とは言えない気がする。いわんやベルリンフィルをや。パリ管のトータルとしてのパーフェクトさと、ロン響の響きの魅力と、どちらをとれ、といわれたら、これは困るだろうなあ。よくまあ、評論家の人はランキングで上下決められるよねえ。

この響きが、16型フル編成で最大に発揮されるのだが、編成が小さくなってもまったくその魅力が減じないのも凄い。まったく同じ響きで、単にボリュームが小さくなっただけ、になるんですよ。それで奏でられるモーツァルトのハ短調の協奏曲も、19世紀的浪漫の匂いを湛えた、とても気持ちの良いもの。

やはり、この音で奏でられるブルックナーは、音としては最高だ、と思います。

終演後の会場の熱狂もすさまじいもので・・・・ハイティンク翁も嬉しそうでしたね。流石に、最後の日本になるだろうし、良い思い出を作っていただきたいなあ、と思いました。
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