さて、今夜上映されるのは、常連ゲストの荒井晴彦さんが１８年ぶりにメガホンを取った２本目の監督作品 「この国の空」 です。
初監督作品の 「身も心も」 はここ湯布院でのロケにより撮影され、もちろん本映画祭でも上映されました。 それが、１９９７年のこと。
私の初参加が２０００年なので、３年遅かった････。
岡山のミニシアターでも 「身も心も」 はレイトショーで上映され、当時は今みたいに早朝からの仕事ではなく、どちらかといえば夜型だったため、確か倉敷の映画館で１本観た後、土曜の夜、２１時ぐらいからの本作の上映に迷うことなく足を運んだのでした。
ここは余程の話題作でなければ満席になることはないし、地方都市の岡山は夜が早く、２１時といえば大抵の人は自宅に帰っている時間。
上映開始時刻ぎりぎりに入場しても、余裕で座れるだろうと思っていたら――。
まさかの立ち見。
頑張って、観ましたとも。
湯布院に通うようになって３年目か４年目の頃、会場で良介さん（岡山県在住／現在マイミクさん）と知り合い、色々話す内、「身も心も」 の岡山での上映は、通常の公開ではなく、私の数年前から湯布院に毎年来られていて荒井さんと親しくなった良介さんが荒井さんから頼まれ、貸館方式で上映したのだという事が判明。
立ち見で鑑賞した事実は、ちょっとした自慢になり（笑）、荒井さんに初めて話し掛けた際にも自己紹介代わりにこのエピソードを披露し、怪しい者ではないと氏に受け入れてもらったのでした。
脇道に逸れてしまいました（汗）。
とにかく、ここ湯布院で初めて荒井さんの監督作品が観られるのです。
ベストポジションのいつもの席を確保しなければ。
その年の映画祭での一番の話題作であり集客の見込める作品が組み込まれるのが、土曜夜の上映枠。（私の勝手な認識ですが）
「滝を見にいく」 のシンポの後は外出もせず、ロビーで新聞など開きながら、行列の出来始めるタイミングを窺っていたら、だんだんホールへの出入り口付近に集まる人が増えてきて。
ちらちらと様子を見るのも煩わしいので、開場まで１５分ほどだし、所定の位置に並んでおくことにします。 ２〜３人、既に前にいますし。
ロビーに人が増えてくるのが目立ちだしたようなので、それから間なしに実行委員が並び方の説明をアナウンスして、正式に列が形になります。
全日券、前売券、当日券の別で３列に。
私の前にいた人は他の列に移ったため、最初に入場する全日券の列は、私が先頭になりました。 この位置は、確か初めて。
いつもの席で観たい、と願っていましたが、”よし、先頭に並んでやるぞ！”というほど気合いが入っていた訳ではありません。 たまたまです。
列は順調に伸びていきます。
定刻に開場。
一番乗りなので、もちろん希望通り、右サイドの通路脇、前から８番目の席につけました。
そこまでの気合いは入ってない、と書きましたが、席につくや否や、今映画祭で初めて目薬をさして、両目をパッチリさせたのでした（笑）。
■２９日(土)■ ≪特別上映 「この国の空」 18：15〜20：25頃 ≫
監督・脚本／荒井晴彦，編集／洲��千恵子，出演／二階堂ふみ，長谷川博己 他
【 ２０１５年作品。 「わたしが一番きれいだったとき」。 １９歳の里子は終戦間近の東京で愛も知らずに、空襲で死んでいくのだろうか ━━ いう不安を抱えながら暮らしていた。 隣に一人で住む妻子ある男との許されぬ恋を通して庶民の視点から戦争を問う、荒井晴彦渾身の１８年ぶりの監督第２作。 （リーフレットより） １３０分 】
空席はどんどん埋まっていき、最終的にはほぼ満席になったようです。
舞台挨拶には、荒井監督以下総勢６名が登壇されました。
２名は、ゲスト予定にお名前が載っていなかった方。
まず一番左の荒井さんがマイクを手にします。
「１８年前に監督として、ここに立ちました。 今回、やっと長谷川和彦になりました（笑）。―― ここの客ぐらいしか理解できないだろうと、湯布院用にとっておいた挨拶でして。 ようやく、日本（２本）映画監督になったということです」（笑）
一応説明しておきますと、長谷川和彦というのは、監督デビュー作の 「青春の殺人者」（1976年／水谷豊，原田美枝子主演） でいきなりキネマ旬報のベストワンに輝き、２作目の 「太陽を盗んだ男」（1979年／沢田研二主演） も同ベストテンの第２位という高評価を受け、映画ファンの多くから新作が最も待ち望まれる監督として期待されながら、３作目に取り組んだ連合赤軍の映画化が難航し、今に至るも２本しか撮っていない監督のことです。
日本映画界の大損失。 残念でなりません。 最近、同監督に映画を撮らせるプロジェクトが動き始めているという情報も。
舞台挨拶に戻ると、珍しく荒井さんが司会というか進行役を務めており、順番にゲストを紹介していきます。
荒井 「プロデューサーの森重です」
お馴染み、森重晃Ｐ。
森重 「どうも。 ４０周年、おめでとうございます。 雨の中をお越しいただき、ありがとうございます」
荒井 「カメラマンの川上皓市さん」
１８年前の 「身も心も」 でも撮影を担当された方。
川上 「前回から１８年ぶり。 また来られて、嬉しいです」
荒井 「ラッシュを観て、めげている俺を、メールで励ましてくれた編集の洲��千恵子」
良かった、予定通り来てくれたんだ。
洲�� 「自分の世代の人間には作りにくくなった戦争映画に参加できて、光栄です」
ここまでは、ゲスト予定だった方々。
荒井 「音楽を担当した下田逸郎」
場内が少なからずどよめきます。 客席の年齢層は高く、下田逸郎を知っている割合はかなり高かった筈。
私は、名前はもちろん知っていましたが、彼のことは恐らく映像でも写真でも見た記憶がないため、” おぉ、これが下田逸郎か！” と目を見開いたのでした。
下田 「１８年前の映画には、『セクシー』 という曲を使ってもらいました。 今回は音楽担当ということで、エロスと死を合言葉に、荒井さんと２人でやってきました。 まあ、お楽しみ下さい」
荒井 「スキャットをやってくれたマツフジさん（だったかな？）」
三十代ぐらいの女性です。
言葉はひと言も話さず、劇中そして予告編でも流れる美しいスキャットを聴かせて下さいます。
時間にすれば、１分ほどだったでしょうか。
お見事としか言いようがありません。
聞き惚れました。
荒井 「シンポで会いましょう」
皆さん、袖に下がられたり、階段を下りて私の横の通路を通りゲスト席に座られたり。
場内が暗くなります。
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