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2015年08月18日21:47

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「台本をめぐるワークショップ 『ヒロシマの孫たち』」

8月15日(土)16日(日)の2日間、世田谷パブリックシアター主催の「台本をめぐるワークショップ 『ヒロシマの孫たち』」に参加してきた。元々のプロジェクトは、広島の小中学生が被爆者の体験談を聞き、それをミナモザの瀬戸山美咲さんがドキュメンタリー演劇的な手法で台本にまとめ、子どもたちを含む一般市民出演の演劇として、前の週に広島で上演したもの。実際に見た人が皆絶賛する、素晴らしい上演だったらしい。
なお、瀬戸山さんは基本的に台本のみで、現場の演出(進行)役は秋葉よりえさん、そして全体のプロデューサーはロンドン・バブル・シアターのマリーゴールド・ヒューズさん。マリーゴールドさんはイギリスで『ロンドン大空襲の孫たち』という作品を制作。その手法をヒロシマに応用して作られたのが本作と言うことだ。
広島ではインタビュー〜クリエイション〜上演までが一つのプロジェクトだったが、東京では、その台本を使って一般の参加者によるリーディングワークショップを開き、最後に発表会もやるという企画だった。…少なくとも私はそのつもりで参加した。

ところが! 行ってみたら全然「リーディング」じゃないっ!! 全編体を動かしまくりで、唯一台本を持っているという点を除けば、完全に普通の「芝居」だった。あれで「リーディング」と言うのは詐欺に近い(笑)。それを数日かけてやるならともかく、たったの2日、実質1日で作るという恐るべき無茶!!

土曜日は、ワークショップに付きもののゲームによるウォーミングアップをし、台本を一通り読んで一人ずつ感想を述べた後、1時間以上のランチタイム。後半は、役を割り振って再度の本読みをしつつ、動きを含む段取り稽古など。そこまではおおむね想像どおり。その時点では「今日はト書きの役がいなかったけど、誰が読むのだろう?」と思っていたほどだ。翌日、まさかト書きを全部実際の動きで表現することになろうとは! それ、リーディングじゃないよ、本当に(苦笑)。

当然、日曜はたいへんなことになる。あの状況では、最初のウォーミングアップなどいらなかったと思うのだが、それを1時間近くやったので、実質的には11時頃から発表会直前の14時半頃まで、わずか3時間半で全体の形を作ることになった。途中で「これ、本当に本番までに全部終わるのか?」と不安になったほどだ。昼食休憩は15分。前日に30分程度と聞いていたので、上のサブウェイに買いに行くつもりだったが、それだけ慌ただしい中、慌てて飲み込むのも嫌だったので、こんなこともあろうかと用意しておいたチョコバー1本で済ませた。よくしたもので、こういう状況になると体が臨戦態勢に入るようで、あまり腹は減らないものだ。

動きは必ずしも広島版のコピーではなく、ワークショップ形式で参加者が作っていく部分も多かった。そんな感じで「動きを作りながら全体を一度演じてみる」と言う感じなので、途中で試行錯誤を繰り返し、ひっきりなしに止まる。だからシーンごとの稽古は出来ても、シーンとシーンのつなぎがどんな感じになるのかよく分からない。しかも前日やったところは飛ばしたので、ますます全体のつながりが分からない。通し稽古とは言い難い「各シーンを少なくとも一度は稽古しました」と言うだけの状態ですぐ本番なのだから、無茶にもほどがある! こんな事になると分かっていたら、台本をもっと読み込んで、全体の構成を頭に入れてきたのに…

 
予定の15時から7分ほど押して本番開始。観客は25名くらいだっただろうか。地域の物語のワークショップで一緒だった友人たちの顔がチラホラと見える。 

上記のようにぶっつけ本番的な状況だったので、あちこちで様々なミスが頻発。特に自分の台詞を言い忘れる人が結構いて、台詞の間が空くことが多かった。

私自身に関して言うと、主な出番が前半に偏っている。本番になって、この怖ろしさがやっと分かった。最初の「子ども3」役は鬼ごっこをしているところから始まるのだが、当然のことながら、これを真剣にやると疲れる。ところが素人は手を抜く術を知らないから、つい真剣にやってしまう(笑)。しかも途中で、私の台詞を別の人が言ってしまい、本来彼女が話すべき次の台詞で穴が空く。機転を利かせ、役を交替するような形で、私が次の台詞を言ってしまえば良かったのだが。
しかも台詞劇の後に、また鬼ごっこ…え? そこって昨日の稽古では花いちもんめじゃなかったっけ? いつの間にか、後半も鬼ごっこに変わっていた模様。ますます軽いパニック状態で、演技をする余裕がなくなる。演技をする余裕がなくなるとはどういう事かと言うと、また鬼ごっこで真剣に走ってしまうという事(笑)。

ところが次の出番である視力検査のシーンは、このシーンの次だった!! こういうのが通しでやらないとわかりにくい部分で、次のシーンにどのような形で入っていくかの稽古など、全くしていない。そのため一旦席に戻ってしまい、すぐに「しまった!すぐ次のシーンなのか」と焦る。
しかも、ずっと鬼ごっこをしていたため台本に汗が落ちるような状態で、呼吸も乱れている。やばい、台詞が来るまでに呼吸を整えねば! 
結果、多少息は上がっていたが、台詞を聞きとりにくいことはなかったと思う。またこのシーンの内容からすれば、少し切羽詰まった感じでも問題無いだろう。マラソンで昔よりも心肺機能が鍛えられていて良かったと、心底思った。しかしあまりの出来事の連続に、ここでも抑制された演技をする余裕は一切無し。もはやリーディングもへったくれもなく、全身であきと君になっていた。あれは観客からはどう見えたのだろう?

そこでようやく出番終わり。席に戻って、しばらく自分の中で反省していたら…しまった!少し後にまだ子ども3の出番があったんだ! またもや前面に出るのが遅れる。馬鹿過ぎる。このシーンでは、台詞は一言だが、その後かなり長時間伏せていなくてはならない。先の展開を確認したいのだが、目と耳を押さえて伏せている人間が台本をめくったらおかしいので、不安を感じながらじっとしている。しかもこの後は会場が暗くなるから台本が読めない…幸い次の出番まで少し余裕があったから良かったが。

その後も、台詞を言い間違えることは無かったが、何だかんだで細かい段取りミスがあった。こうして書き出してみると、そもそも正しい段取りで動いていた部分の方が少ないのでは(苦笑) 仕事柄、台詞などを読むことにはそれなりの自信を持っているが、様々な段取りをこなしつつ身体表現もしながら台詞を言うのは、全く別の技術だ。舞台俳優のスキルの高さを思い知らされた。

 
すでに述べたように台詞の空きなどがかなりあったので、他の人もそれなりにミスをしていた。まともな通しもやっていないのだから当然だ。完成度と言うことで言えば、とても誉められたものではない。
しかし観客の反応はさほど悪くなかったように思う。どうせ皆参加者やスタッフの知り合いだから、直接厳しい言葉は言わないだろうが、その辺はさすがに空気で分かる。後半はしばらく出番がないところがあるので、少し距離を置いて観客のような立場で見ていたが、参加者は皆 出たとこ勝負ならではの勢いとエネルギーに溢れていた。観客から見て細かなミスがどの程度気になったかは分からないが、その力業で何となく納得させられてしまったのではなかろうか。また被爆者の証言というテキストの重みにも圧倒されていたことだろう。

上演時間は50〜55分くらいだったか? いろいろ問題はあったが、ともかく終演。本当に「芝居をやった」という感じ。え?リーディング?何それ?(笑)

 
その後は、スタッフ・参加者・観客が車座になって、本作の上演に至る経緯説明と、感想や質問などで約1時間。普通の演劇でもアフタートークや質問のコーナーはあるが、こんな風に全ての人が車座になって意見を述べ合うのは初めての経験だ。忌憚のない意見も出て、面白かった。

その後18時から22時頃まで「てけてけ」で打ち上げ。あまり話していない、名前も覚えられなかった参加者も多かったので、そこで話せばいいや…と思っていたのだが、なぜか大半が帰ってしまい、全部で20人近くいたのに肝心の参加者はたった6人。わずか2日間とは言え同じ釜の飯を食った者同士、打ち上げでゆっくり話したかったのだがなあ…

 
あれやこれや非常に貴重な体験だったが、たった2日間で内容をほとんど血肉化できないまま本番になってしまったのは、やはり残念だった。せめてもう1日あれば、自分としてももう少し納得できるものになったと思うのだが…

 
「上演」と「自分の体験」に関する話ばかりになってしまったが、作品の内容、ましてや原爆の悲劇に関する話など始めたら、いつ書き終わるか分からないので、とりあえず今回は、そちらには触れないことにする。
しかし、本作の広島版は確かに素晴らしかったに違いない。それだけはよく分かる。来年、広島版の巡回公演か、東京でもっと本格的な芝居として再演してもらえないものだろうか。

 
世田谷パブリックシアターは様々なワークショップをやっているが、「地域の物語」は長期間拘束されるので、なかなか気軽に参加できない。今回のようにもっと気軽な企画、計3日か4日で一つの作品をクリエイションするものがあったら、またぜひ参加したいので、よろしくお願いします!

 
しかし今回の教訓は「リーディングと銘打たれていても、普通に芝居をやらされることがあるので注意すべし!」に尽きるな(笑)。普段使わない部位の筋肉を使ったせいで、今日は体のあちこちが痛い…

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