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2015年06月23日15:49

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JBがジョーを撃った日

 ジェイムス・ブラウンの映画、先週の水曜に見た。
 音楽に引っ張られての2時間10分、そんなに長くは感じなかった。
 JBとボビー・バードとの関係が軸になってて、それはまあ、そういうふうに作ったのね、というしかない。
 ただね、歌や音楽を含めて、外形はじつにうまく似せていたけど、でも結局、JBがどんな人だったのかは、そんなに伝わってこなかった気が。
 あれだけの大物だもの、嫌なところや難儀なところも超弩級だっただろうけど、と同時に、歌やダンス以外にも、人を引き付ける大きな人間的魅力があったはずだと思うんだよね。
 あるいは、ああいう境遇からのしあがってきた人間独特の、ものの見方とか体質や匂いみたいなものとか。 ないものねだりなんだろうけど、そういうのがもう少し垣間見えたら、嬉しかったんだけどね。 
 
 余談だけど、歌手のジル・スコットが、2度目の夫人のディー・ディー役で出ていて、さすがの貫禄。 太目の魅力全開で、ツーショットのシーンでは、主人公のJB役俳優より存在感があった、とまでいうと、さすがに贔屓の引き倒しかしら。
 
  ****
 さて、映画の始めのほうにいきなり、銃のぶっぱなしとカーチェイスが出てくる。
 あれを見て、さすがのJBも、落ち目になって血迷ったのね、と思った人がいたら、それは間違い。
 JBって、若いころにも、銃をぶっ放しているんだよね。

 その方面の人の間では有名だった、JBがジョー・テックスを撃とうと、ショットガンを乱射した事件の顛末を、よくまとめたサイトを見つけた。
 That time James Brown tried to murder Joe Tex with a shotgun:
 http://dangerousminds.net/comments/that_time_james_brown_tried_to_murder_joe_tex_with_a_shotgun
 興味深いので (いや、まったく洒落にならない話なんだけど)、ちょっと紹介してみたい。
 BGMは、ご陽気にこの曲で:
 Jr Walker & Allstars - Shotgun: https://www.youtube.com/watch?v=FI7CtxlisCk

 対立のそもそもは、2人が同じレーベル(King)と契約していた50年代に、JBが田舎のジュークジョイントで、ジョーにダンスバトルを挑んだことにさかのぼるという。
 ジョーは、そのあとデトロイトのAnnaに移り、「Baby, You're Right」という自作曲を録音した。
 その一年後に、JBはそれを歌詞を少し変えてカヴァーし、ヒットさせた。 そして、「おまえの曲をカヴァーして、ヒットさせたぜ。 曲のクレジットには、おれの名前だけでなく、おまえのも入れておいてやったからな」と、ジョーに連絡した。
 もちろん、ジョーは、大いにむかついたことだろう。
 
 でもやはり、対立の火に油を注いだのは、女性がらみの出来ごとだ。
 JBは、ジョーの妻だった女性歌手ビー・フォードを奪って、自分のレビューに入れ、あまつさえデュオで録音した。
 そのあと、ジョーに、ご丁寧にも、「あの女とおれとは終わった。 ほしかったら、返してやるぜ」という手紙を送った。
 それに答えたのが、ジョーのチェス録音、「You Keep Her」。

 Joe Tex - You Keep Her (Checker):
 https://www.youtube.com/watch?v=Tkc5v_Y7LhI

 歌の歌い出しは、こうだ。 「ジェイムス、手紙を受け取ったよ、今日届いた。 おまえは彼女を返すっていうけど、そんなふうにして返してほしくはないよ。」
 そのあと、彼女にいろんなことを教えてやって、磨きあげたのは自分だ。 でも、今では、彼女は、おまえのもの。 本人も、戻ってきたがってはいないよ、と歌詞は続く。
 こういう局面で、こういう歌をさっと書いて吹きこめる、ジョーのソングライターとしての能力は、並みのものではないよね。

 さて、いよいよ、ショットガン事件。 1963年に、ジョージア州メイコンのナイトクラブで、それは起こった。
 JBの前座になってショーの口開けをしたジョーは、ボロボロのケープ (マント) を体に巻いて登場し、JBの真似をしたあと、床を転げまわって、「だれか、助けてくれ。 おれを、このケープから引っ張り出してくれ!」と叫んだ。
 ジョーは、この件について後に、JBは、彼のダンスステップや、マイクスタンドを使ったギミックをパクった。 だから、ああやってコケにしてやったのさ、と語ったそうだ。

 面子を壊されたJBは、行動に出た。
 ショーが終わったあと、別のジュークジョイントで、アフターアワーズ、つまり深夜のパーティが開かれて、ジョニー・ジェンキンズのパイントッパーズが演奏していた (もちろん、そのメンバーには、若きオーティス・レディングもいた)。 
 そのジュークジョイントのパーティ客のなかに、ジョー・テックスの顔を見つけたJBは、車に戻ってショットガンを2挺持ってきて、店の中に乱射した。
 6、7人が撃たれて負傷し、JBはツアーバスへ逃げこんだ。 JBのツアーメンバーの1人が、怪我人を含むその場の者に、何枚かの100ドル札を手渡して、それで口止め&手打ちということになったらしい。

 ジョーといい、あるいは「王冠を渡せ」といわれたキング・ソロモンといい、JBと渡り合った他のソウルレジェンドには、ユーモアがある。 いっぽう、対するJBのほうにはそれがない。
 ほんとに恵まれない環境からのし上がってきた人に、それをいうのは酷かもしれないけど、でもやはりつい、お里が知れるよね、といいたくなってしまう。
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