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2015年05月16日11:18

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フルトヴェングラー 2つの第9

地元の書店で音楽雑誌のコーナーで「音楽現代」(芸術現代社)の
最新号があったので、
いまだに出ているのを不思議に思い、手に取ってみた。

特集「日本の現代音楽」(戦前まで)だったか、あまり覚えていないが、
他の記事も含めて、あまりのつまらなさ、薄っぺらさに
「クラシック音楽界って、終わったんだ」
との感を強くした。

今のクラシック音楽界って、じっさい、語るべきことが何もない。
ラトル語っても仕方がないし、タンドゥン語っても仕方がない。
もちろん、小川典子を語っても仕方がない。
語るべきものがないのだから、クラシック音楽雑誌など成り立たないはずだ。
おそらく惰性で作っているだけなのであろう。

で、語るべきものがあった頃の音楽の話し。



ベートーヴェン 第9 
フルトヴェングラー ベルリンフィル 1942年4月 (VENEZIA DISC)

1942年4月19日、ヒトラー生誕前夜祭の演奏なので「ヒトラーの第9」といわれる
ものである。

VENEZIAから出たCDを持っていたが、録音が悪いため,
「同年3月を凌ぐ名演」という意見と
「音が悪くてこんなもの聴けるか」と、
賛否両論あって、長いあいだ聴くのをためらっていた.

そのうちにVENEZIA盤は廃盤となり、そのVENEZIA盤を原盤とした
日本盤(キング)が出て、再び話題になっているようなので
意を決して、聴いてみた。

第1楽章がはじまって、あまりの音の悪さに驚いた。
持続ノイズに加えて、管楽器の音割れもある。

ところが、演奏がものすごい。

有名な同年3月のライヴより、テンションが高く
特にティンパニのフォルテシモは恐ろしいくらいだ。

そして、音の悪さを超えて、演奏にのめり込むことになる。
第1楽章再現部のティンパニなど、こんなすごいの聴いたことがない。

第2楽章の推進力、第3楽章の陶酔。
そして、史上最高とも言うべき圧倒的なフィナーレ。

巨匠の死後60年たった今頃になって、こんな衝撃を受けるとは思わなかった。
フルトヴェングラーは本当にすごい。。

ただ、気がかりなのは、新しく出た日本盤の音質が悪いという
記事がネットで散見されることだ。

VENEZIA盤よりさらに劣化している可能性があるので
現行盤を推薦するのは控えておくことにしたい。

もうひとつ、

ベートーヴェン 第9 
フルトヴェングラー ウィーンフィル 1952年 (独フルトヴェングラー協会盤)

ニコライ記念コンサートのライヴなので
「ニコライの第9」と呼ばれるライヴ音源である。

これまで、Tahra、ArchipelなどのCDで聴いてきたが
弦楽器の固く、鋭い音。
そして、合唱のひずみがひどく、聴くに耐えなかった。

で、いちばん音が良いとされる、協会盤を
知人の好意で、聴くことが出来た。

抜群のクリアーな音質である。
弦楽器の響きはは固いし、合唱の歪もあるのだが、
普通に聴けるのである。
今まで聴いてきたCDとは、比較にならないくらいだ。

戦後のライヴだけに、さすがに落ち着いた感じがある。

ウィーンフィルの響きは、ベルリンフィルより
軽いというのではないが、よくはずむ感じ。
第2楽章の軽快感は、フルヴェンノ第9としては異例かもしれない。

第3楽章のポルタメントをかけまくったヴァイオリンも美しい。

フィナーレはバイロイト盤より落ち着いた演奏だが
コーダだけは速いスピードとシンバルの連打がすごく
熱狂的に盛り上げてフィニッシュ。

これは、おそらく合唱のひずみさえなければ
もっと早く市場に出せたのだろう。

これまたマニアックな1枚だが、ファンはどうしても聴いておきたいところだ。


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