かつてヒーロー映画で人気俳優となったものの、今は年齢もあって下降気味の俳優が、ブロードウェイのミュージカルで名声を取り戻そうとするのだが、その中で繰り広げられる、他の役者との葛藤や、家族との不仲、マネージメントの難しさ、評論家の辛口批評に対する不満、などが交錯する。
主人公は、人気は落ち目なものの、役者という仕事に対する情熱はまだまだ衰えていないようだが、こうした人物像にスポットを当てるかと思えば、舞台で本物のセックスをやろうとする役者など舞台裏の様々な人間、マネージャーとの確執など、どうもストーリーに一貫性がない感じ。
それでも見るものを惹きつけるのは、やはり巧みなカメラワークによるもので、アカデミー作品賞といっても、評価すべきは撮影部門に限るような気もする。
一見長まわしのようで、実際はハンディカメラによる追跡撮影により、クロースアップをふんだんに使いながら動き回るショットの巧みなモンタージュがこの映画の一番の魅力と同時に、逆に、これがまたストーリーを混乱させているわけだが、意図的なものなのだろうか。
所詮、ブロードウェイとは、こんな雑多なものが入り混じった世界なのだ、というのが一番のテーマか?
無知がもたらす予期せぬ奇跡が、最後は名声の回復、というよりは話題性を集めることになったのだが、主人公が無知なら、もともと感情移入すべきではない存在ということになる。
結局、無知の夢物語でしかなかったのなら、単なるファンタジーの世界でしかない。
つまりは、ブラックコメディー、プラス、ファンタジー映画として観るべき、というわけか…
★65点
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