mixiユーザー(id:51652146)

2015年03月23日19:25

246 view

プーチンの戦争

今週のTIME誌「ロシア帝国の脅威」モスクワ特派員サイモン・シャスターのレポートに注目しました。長文なので要点のみご紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ロシアの民主主義擁護派リーダー暗殺事件で、モスクワの反体制派に不安が広がる。

一年前プーチンがクリミアを併合し、西側との対決姿勢を鮮明にして以降、ロシアの政界に対するプーチンの圧力は俄かに高まってきた。同時に反体制派に対する締め付けも激しい。プーチンの過激な言動が作りだす社会の空気は、反体制派が命の危険を感じるまでに広がっている。
反体制活動家に対する暴力が公然と横行するようになり、欧米に対するヘイト・スピーチは国営テレビでは日常化しており、プーチンは政権内の穏健派を閑職に追いやり始めた。
クレムリンに対する批判への圧力は、ソ連崩壊後で最高に高まっている。
2月27日の晩に起こったボリス・ネムツォフ暗殺はこの現実を明らかにした事件で、公然とプーチンに楯突く政治家たちに対する厳しい警告だった。彼らを追い詰めているのは、プーチンに対する高い支持率で、有権者の間に、プーチンを戦う愛国者としての評価が高まっていることだ。

「ロシアの反体制勢力の中には、外国の利益のための道具に利用されている者もいる」とういうのがプーチンのレトリック。ロシアに対する西側の不当な干渉が横行しているとの批判の空気を市民に流している。
国営テレビで連日流されるこの手の「強いロシアの復活」プロパガンダが、次第に市民の意識の中に浸透している。プーチンの支持率が80%超えという記録的な高さになっている一方、欧米に対する市民感情の悪化はこの25年間で最悪の広がりをみせている。
ロシアの独立系調査会社レヴァダ・センターの1月の調査では、アメリカに否定的な感情を持つ人が81%、ヨーロッパに対しては71%にのぼる。二年前の調査結果がどちらも25%だったことを思うと隔世の感がある。
このロシアの政治的ヒステリーの一番の原因は、もちろんウクライナとの軍事衝突だ。あのクリミアを無血で簡単に手に入れることが出来て、多くの市民もエリートも上機嫌。「近世の歴史上、ロシアは始めて脇役の傍観者をやめて主役に躍り出た」というロシア外務省高官の言葉が示す通りの気分なのだ。

しかし、クリミア併合の後、ウクライナ東部も手に入れようとしたプーチンの試みは高い代償を払うことになった、プーチン自身も否定しているロシアの軍事干渉だが、現実は、ロシア軍が実際の戦闘に参加しており、ロシアの若い兵士の遺骸が故郷に戻ってくるのを西側のジャーナリストの多くが目撃し報道している通りだ。

ネムツォフは、プーチンのこの欺瞞行為を暴露しようとしていた。
暗殺される前日、彼は興奮した様子で仲間のオルガ・ショリーナの事務所に来て、「プーチンの戦争」と題するレポートを公表するつもりだと語っている。彼の話では、ロシア国軍の或るグループが彼に接触して伝えてきたのは「彼らの師団の兵士17人がウクライナでの戦闘で戦死したが、国は遺族に対する補償金の支払いを拒否している。遺族は事実を語るのを恐れている」という内容で、ネムツォフがそれを記録したレポートを、暗殺事件の一週間後にTIMEが入手した。
プーチンはロシア兵の戦死の事実を認めれば、世論の反発が起こることを恐れたのだろう。クライナ東部での戦闘で6000人もの死者が出たことで、プーチンの「ウクライナ戦争介入」への支持は、前出のレヴァダ・センターの調査によれば、昨年春の74%から今年2月の44%へと大きく落ち込んでいる。

ネムツォフはこの事実を公表することの危険性は判っていいた。
昨年8月に複数のジャーナリストが何者かに襲われていたからだ。
そのジャーナリストたちは、ウクライナの戦闘で戦死したロシア軍兵士の遺体の埋葬の様子を撮影しようとしたからだ。

政治的暴力事件は、ネムツォフ暗殺以来急増している。
3月5日の朝、反戦活動家アレキシー・セムヨノフ36歳がモスクワの自宅近くで、二人の暴漢に背後からバットで殴られ重傷。犯人に心当たりはないが、彼がウクライナの国旗と同じ黄色と青のリボンを付けていたのが原因ではないかと語り「これが今この国の空気なのだ」と続け、この手の暴力沙汰には警察は全く手を出さないと嘆く。

ネムツォフ暗殺の数日後の3月1日、かれの死を悼むデモ行進を自由主義活動家のグループが企画し、抑圧されたロシアの政治イベントとしては異例の5万人近い参加者を集めた。行進にはネムツォフの肖像と共に「われわれは恐れない」というスローガンも掲げられた。だが、スローガンとは裏腹に、当局に指定された地点まで来ると、行進は静かに消えて行った。
この行進は、西側では大きく報じられたが、ロシアのメディアは殆ど報道していない。

一方、暗殺事件から一週間もたたないうちに、アメリカ大使館前で、プーチン支持派はネムツォフ非難の集会を開き、「奴はアメリカの手下。奴の仲間はみんなパージ!パージ!パージ!」と連呼。
通行人は一様に驚きの表情。ロシア人には「パージ」という言葉は今でも驚きと恐怖を与えるらしい。パージで数千万の同胞がシベリア送りになった記憶が甦るのだろう。たしかにパージの時代がまじかに迫っているのかもしれない。

5 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する